「なにが、わかったの?」
私の顔がこわばっていくのが、自分でもわかる。
私の表情が固まっていくのを覗き込んで、スタッフは
おそろおそる、不安気にたずねた。
「どうしたの?なにか、恐ろしいことがわかったってこと?
だったら、なおさら、解説してくれなきゃ
私にはわからないわ。ただの数字の羅列にしかみえないのよ。
あなたが解読できるようになった「鍵」をおしえてくれなきゃ・・・」
私の喉がこくりと生唾を飲み込んで、
恐ろしい事実を伝えまいとする。
スタッフには判ろう筈もないことだけど、
「数字の羅列」にしか見えないものを、私は間違いなく言語として読んでいて
それは、つまり、その書かれていたことそのままの状況を呈しているだけに過ぎなくて
私は自分が言語として直によめるという事実を説明する、その裏にある真実を
自分でも認めることができなかった。
であるのに、私は「裏の事実」を説明しなければならない状況に自らをおいこみ・・・。
追い込みながら、私の口から事実を説明する恐怖にもとらわれていた。
「どうしたの?顔色まっさおよ。
そんな恐ろしい事実がかかれてあるのなら、
しっかり説明してくれなきゃ・・。
それに、こんなことは、貴方一人だけの問題じゃないのよ。
地球人類の存亡に関る場合だって考えなきゃいけない状態で
貴方個人の恐怖心を克服できないようじゃ・・」
まくし立て始めたラボ人員としての心構えなんか、私だってよくわかっている。
「判ってる・・ちゃんと、説明する。説明するけど・・どう説明すればよいか、
すこし、組み立てる時間がほしい・・んだけど・・だめかな?」
大きなため息と不安そうな表情と私への心配と
いろんな感情が入り混じったスタッフの顔と声が、ひどく、私とかけはなれたものに感じられた。
しばしの猶予を取り付けると私はもう一度、解析された・・・
いや、正確には私だけが読めるようになった文字の列を読みかえした。
書かれていることをそのまま、伝えることが、
なぜ、私への恐怖になるか・・・。
とても、簡単に告げられそうもないのは、
私が、私の現実から逃避したがっているせいもあるし、
ひょっとして、私が白日夢をみているのかもしれないし、
もっと、いえば、私の思考回路がくるったせいかもしれない・・。
もう一度読み直す。
『私は貴女にむけて、メッセージを送っています』
この「私」は彼女に他ならず
貴女はこの私のことに相違ない。
『貴女が私のメッセージを読み取ることができるようになったとき
私は貴方たちの前から消滅してしまったように、思うでしょう』
今、確かに私は彼女のメッセージを読んでいる。
そして、彼女は消滅している・・・筈なのだが、
彼女のメッセージをたどると、消滅したように見えるだけで、
彼女はどこかに存在しているということになる。
やはり、テレポートなのかとはじめに読んだ時はそう思った。
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