憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

風薫る丘の麓で・・終

2022-12-19 10:41:09 | 風薫る丘の麓で

私は圭一の申し出をありがたくきいた。

冴子に電話をいれ圭一の申し出を告げると、
冴子が電話口で絶句していた。

「冴子?・・」
冴子の声が震えて聞こえた。
「話しちゃったの?なにもかも?」
「まさか・・」
「圭一は冴子のことを覚えてた。冴子と僕が離婚したんだとおもっていたよ」
「・・・・・」
「だから・・・冴子は妹だって、はっきり伝えた」
しばらく、沈黙が続いた。
「じゃあ、あの子はあなたがお父さんじゃないって・・」
「うん」
冴子の声が嗚咽に変わった。
「ごめんなさい・・」
「大丈夫だよ。今までずっと暮らしてきたんだ。そんなことで、圭一の気持ちはゆらがなかったよ。今まで、お父さんでやってこれたのも、冴子のおかげだよ」
「それで・・いいの?」
「いずれ、戸籍をみたら判ることだし・・父親の判らない私生児・・
この事実のほうがまだうけいれられる」
「うん・・」
「いつか、話せるときがくるかもしれないしね・・」
「そうね・・」

「じゃ、後、一年少し、もうすこし、圭一をあずからせてもらうよ」
「はい」
電話をきると、車のエンジンをかけた。

冴子と私が越してはいけない堰をこえたあの日から、18年。
それを過ちではないと圭一だけが証かしてくれていた。

                   終



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