憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

宿業・・・8   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:00:27 | 宿業   白蛇抄第7話

定太がお甲の元に来るようになったのは
お陸に愛想を着かされたからだったが、
お陸が定太に愛想尽かしを食らわせたのは、
お陸の中に周汰が入り込んだせいであるのを
お甲はしっていた。
「くそお・・・周汰のやろう」
思わず定太が呟きお甲に挑んでくると
狂ったようにお陸の名を呼んだ。
そして、頂点に達する前になると
「くそお。なんでおまえはお甲なんだよ」
うっかり女をはらませてはいけない夜這いの定法どおりに
脈を打ち出した物を、お甲の中から引き抜いた。
多分。男を知りぬいたお陸は
自分の身体の摂理を知っていて孕まないときに、
男たちの刹那を粘液質に包まれた生暖かい肉の中に
吐き出す事を許してやっていたのだろう。
そんな女に定太は見事に溺れ切っていた。
吐き出しきれないときこそ定太はお陸の名を呼んだ。
だが、お甲の中で果ててしまったとき、
男根が果てる最後まで
肉でくるんでくれた女の名を呼んで見せた。
―だから、もう、それだけでいい―と、お甲は思った。
他の男の精を飲み込むことはなかったのだから
間違いなく定太の子でしかないのだが。

だが、どちらにしろ、
どうやら周汰はお陸に
のめりこんではいなかったようである。
それがお甲をほっとさせた。
―あたしはいいんだ。
勝手に定太に岡惚れしちまった馬鹿な女だからいいんだ―
でも、お陸のせいであんたまで不幸になるんだったら。
きっと、私はお陸のくびをしめにいっちまっただろう。
思わぬ罪をお甲にまで負わせずにすんでくれた周汰に
お甲は、小さく願をかけた。
―頼むよ。周汰さん―

「さあ、いっぱい摘むよ」
目の前に広がった蕨の群生にお甲は朋世に声をかけた。



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