矢嶋武弘・Takehiroの部屋

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放送事故を起こし「始末書」を書かされた!

2024年12月17日 04時37分22秒 | フジテレビ関係

<2008年8月に書いた以下の記事を復刻します。>

誰だって「始末書」なんか書きたくない。事故を起こした場合、その当事者が事故の経緯を上司に報告する文書だからだ。しかし、私にはその嫌な経験が1回だけある。実に不名誉なことだ。
私の場合は、いつものようにテレビ放送に関するものだが、もう20年近く前になるだろうか、昼ニュースのデスクを担当していた時に不祥事が起きた。ニュースというものはしばしば“追い込み”で入ってくるのだが、放送時間の5分ほど前に原稿を仕上げておけば全く問題はない。後はアナウンサーに原稿を渡して放送するだけなのだ。
ある日のこと、ニュースが追い込みになった。現場からの原稿が2~3本だったか遅れて入ってきた。しかし、そんなことはよくあることで、手際良く原稿をチェックして放送時間(オンエアタイム)までにアナウンサーに手渡すところが、職人芸と言うか、ニュース担当デスクの“醍醐味”なのである。
ところが、その日は魔が差したのか、メドとなる原稿「5分前」の意識が漠然としていたらしい。5分を割っても2~3分あれば、放送時間にギリギリ間に合う。私は複数の原稿をチェックしている間に、まだ2~3分はあると誤認していたのだ。
その時、誰かが「おい! もう放送時間だぞ!!」と叫んだ。その直後、男のアナウンサーが席を立つと一目散にスタジオへと走っていった。送り出し担当のディレクターも必死にその後を追う。
しかし、その数秒後だろうか無情にも昼ニュースが始まった。誰もいないスタジオがテレビ画面に映っている。空白の中に沈黙が続く・・・すると、息せき切ったアナウンサーが飛び込んできた。放送開始時間から30秒近く経っていただろうか、彼はトップニュースから原稿を読むのだが、息が切れて思うように“ろれつ”が回らない。
そのうち、ようやく正常にアナウンスできるようになったが、それまでの1秒1秒は、私にとって“精神的拷問”以外の何ものでもなかった。「やっちゃったか・・・」という思いだ。30秒も空白をつくるというのは、相当な放送事故である。私はガックリと意気消沈した。
昼ニュースが終わると、私はアナウンサーを始め関係者に謝った。しかし、放送が終了して間もなく、ニュース・ネットを組んでいる地方局から次々と苦情と抗議が寄せられた。これは担当の地方デスクが謝り続けたが、そのデスクの指示で事故のてん末を書いた「説明書」を各局に送る羽目となった。

翌日になると、何人もの報道局員から「どうして、あんな事故になったの?」などと聞かれたが、そのうち、N報道局長が私の所にやって来た。ふだんは厳しいN局長だが、その時はなぜか穏やかに、にこやかに語りかけてきた。「矢嶋君、昨日の放送事故について始末書を書いてほしいのだ」と言う。
始末書・・・今まで一度も書いたことがないのに、とうとう書かなくてはならないのか。もとより、事故は私の責任なのですぐに書くことにした。そして、始末書を報道局長に提出すると、かえってスッキリした気分になった。
思い返すと、あの放送事故の時は魔が差していたのか、少し油断していたのは間違いない。ふだん、放送時間が迫ってくると、だいたい誰かが気が付いて「あと4分だよ」などと声を掛け合うのだが、あの時は追い込みの原稿で忙殺されていたのか、誰も気が付かなかったようだ。その点は運も悪かったが、いずれにしろ放送事故の責任はニュース担当デスクの私にある。
あの「始末書」の件があったからか、勿論それだけの理由ではないが、私は報道局に“未練”が無くなったようだ。翌年の人事異動で、私は自分から願い出て、28年もいた報道局を後にして他の部署に移ることになった。(2008年8月29日)


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2 コメント

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Unknown (おキヨ)
2019-10-30 12:29:43
う~ん・・・テレビ放送という仕事は秒読みだと何かで知りましたが、実際その職業に携わった方でないと本当の厳しさは計り知れませんね。
この花形職業に適した能力を持っていないとまず無理でしょう。
例えご自分から願い出て他の部署に異動されたとしても
28年間厳しい部署を勤め上げた上ですから、矢嶋さんはこの御職業に適していたと思われます。
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秒読み (矢嶋武弘)
2019-10-31 08:56:57
本当に秒読みの職場でしたね。
本来、自分はこうした職場に向いていなかったと思います。もともとドラマなど制作の現場を希望していましたが、会社の人事で報道に回されました。
向いていないわりには28年間、われながら頑張ったと言えるのでしょうか・・・

なお、本日、沖縄の首里城が燃えたことにショックを受けています。
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