鳳凰三山を縦走したのはもう9年も前のことになる。
今年先立ってしまった妻とその友達と私の3人だった。
前の晩に夜叉神峠下の駐車場で車中泊し、縦走して広河原に下り、バスで夜叉神に戻る計画だ。
5時前には起きだし、支度をして5時半には峠へと登り始めた。
妻のペースにあわせるために先頭を歩いてもらう。
天気はよくなくて、途中から雨が落ち始めた。
雨に降られながら夜叉神峠に到着し、仕方がないので小屋に入って朝食をかねた休憩をとった。
休憩中に雨は上がったが、あたりには靄がただよい、木の枝先から雨のしずくがぽたぽたと落ちていた。
そんな中、小屋を出発し杖立峠へむかう。
雨上がりだし、体からも水蒸気が立ち上るのでカメラのレンズが曇ってしまう。
しばらくすると稜線越しに朝日が差し込みだした。天気は回復の方向らしい。
杖立峠への道はずっと樹林の中だ。少し高度があがったからかカンバ類が増えてきた。
大崖頭山への登りが一段落して傾斜がゆるんでくるともうすぐ杖立峠だ。
木々が少しまばらになって見通しもよくなった。
でもあいかわらず雲がまとわりついている。
峠付近から雲間に北岳の一部がのぞいていた。
この日はずっとこんな具合で、南アルプスの主稜線は拝めなかった。
オヤマノリンドウ。ほかにもオトギリソウやホタルブクロを見かけた。
辻山の山頂近くの苺平へむかっての長い登りを進む。
長いけれど道はゆるやかなので息をあげないようにゆっくりと進んだ。
10:55苺平到着。ようやく長い登りが終わり、南御室小屋ももう近い。
雨上がりのせいか倒木や苔のあいだからキノコが顔をだしている。
11:38 辻山と薬師岳のあいだの鞍部にある南御室小屋前に到着した。
ここで昼食休憩にした。
小屋の周辺は切り開かれて日当たりがいい。そこはお花畑になっていた。
小屋についたころから雲が切れ、頭上には青空が広がりだした。
濡れてしまっていた雨衣を干して乾かしながら、ほとんど1時間近く休憩していた。
南御室小屋を出発すると道はしばらく急な登りとなった。
まだ樹林帯の中ながら花崗岩らしい岩が姿をあらわした。
小屋を出発して1時間20分ほどで花崗岩とそれが風化した白砂におおわれた砂払に到着した。
ここからが鳳凰三山らしい景観が続く縦走の核心部だ。
今朝がたまでの雨せいだろうか、砂は少し湿り気を帯びていて海岸の砂を歩いているようだ。
花崗岩の岩陰に南アルプスの名花、タカネビランジを見つけた。
この花を生で見たのはこの時が初めてだったと思う。白っぽい岩と砂の中、薄ピンクの花びらが可憐だ。
砂払の岩の間を抜けていくと薬師岳の岩峰が見えてきた。左奥は三山の最高峰観音岳のようだ。
見下ろした樹林の中に薬師岳小屋の屋根がみえる。今夜はこの小屋にお世話になる。
そういえば、小屋に予約を入れるため電話したら、北アルプスの薬師岳の小屋につながってしまった。
最初気が付かず話をしていたが、登山口を聞かれて間違いが発覚した。
あちらは薬師岳山荘だ。
北岳の方向は相変わらず雲の中だ。白根三山の雄大な眺めを見たかった。
14:25 無事に薬師岳小屋に到着。
木造平屋建てのこじんまりした小屋だ。
夕食までのあいだ小屋の前のベンチでビールを飲んだり、樹林を抜けて展望のいいところを散策したりした。
岩場に咲いていたトウヤクリンドウ。
5時からお待ちかねの夕食。ご飯にみそ汁。メインはおでんだった。
それほど大きな小屋ではないし食事も昔ながらの山小屋メニューだ。
この日は、雲が多くて展望が得られなかった。
明日こそはと、南アルプス主稜線の展望を期待しながら寝床にはいった。