5年前の記録だが、夏を迎えるこの時期、手を加えて再投稿する。
立山の雄大な景色が好きだ。それなのに相性が悪いのか雨にたたられる。
以前に兄夫婦と私たち夫婦で夏に訪れ一の越までハイキングしたのだが、ふだんなら梅雨が明けている時期なのに雨だった。
今回は、夜行バスを利用し、前回と同じ雷鳥沢ヒュッテに泊まって、雄山、大汝山、富士の折立をめぐり、翌日は奥大日岳を往復する計画をたてた。それなのに、1日目は雨。それもかなり強く降る雨だったのだ。
夜行登山バスは、夜間閉鎖の立山道路が開くのを待って登り始めた。雄大な弥陀ヶ原をみながら徐々に高度をあげていく。
室堂には7時20分に到着した。しかし、天気はよくない。雨は落ちていないものの山は姿をみせてくれない。でも雨さえ落ちていなければ、そんな山も悪くはない。ガスに煙る残雪の山裾の広がりを見渡しながら、歩き始めの支度をした。
ときどき雲が流れてくるのだろう、ガスが濃くなって視界が狭くなる。
でもこんな日には雷鳥が現れる。そんなことを期待しながら、一の越へとむかって歩き始めた。
遠くはガスの中に溶け込んでしまっている。
8月中旬なのでチングルマは花びらを落として穂だけになっている。
チングルマとウサギギクの群落。
石を敷き詰めた道を少しづつ登っていく。スイスの山を歩いているような気分になる。
チングルマの穂に水滴がついている。
登山道が残雪を横切るところでは、雪からたちあがったもやが低く流れて幻想的だ。
自分もその中に溶け込んでしまいたいと思った。
一の越に到着したが、晴れる気配もなく、雲が厚くなったのかやや薄暗さを感じてしまう。
これから雄山に向かって急な登りになるが、雨が落ちてこないことを願った。
道は急だが、たくさんの人が登るだけにしっかりしている。
ガスで遠くは少しも見えないので足元だけを見ながら一歩づつ進んでいく。岩の割れ目にはたくさんの花が咲いている。
久しぶりにトウヤクリンドウを目にした。
なんとか雨にふられずに9時30分に雄山の山頂に到着した。
ガスが濃いのでピークにある社殿がぼんやりと浮かび上がって見えていた。
ところがその時急に雨が降り始めた。休んでいた人々もあわてて社務所の建物の軒下に移動した。
雨は長くは続かずに上がってくれ、人々も軒下から出て、雄山神社のある3003mのピークへ、あるいは下山の支度をと動き始めた。
私は、これから最高峰の大汝山に向かうので、雄山神社のピーク3003mにはよらないで先へと歩き始めた。
雄山から大汝山への途中でまた雨が降りはじめた。
あめは降ったり止んだりを繰り返しながらも少しづつ強くなってきたようだ。
10時16分、なんとか最高峰大汝山に到着。
雨が落ちていなかったので記念写真を撮ることができた。
次のピーク、富士の折立へと向う。途中にトウヤクリンドウの大群落があった。
こんなにたくさんのトウヤクリンドウを一時にみるのは初めてだった。
しかし、その後は雨足が強くなってしまい。ご覧のような状態でカメラをしまわざるをえなくなった。
真砂岳の白い砂を踏みながら、次の別山への登りではこれまでの疲れも出たのか足が重たくなってしまった。
別山頂上でも剣岳を眺めながらゆっくりと休憩するところなのだが、頂上を踏むとそうそうに剣御前小屋へとくだった。
そして雷鳥沢を下っているとき目の前にライチョウが現れたのだ。雨が降っているのに、カメラ、カメラとあわてて取り出したものの、これまで雨の中で乱暴に使ってきたバチがあたってシャッターが切れなくなってしまっていた。とうとう壊してしまったのだ。
それでもなんとか携帯でととりだして準備しているうちにライチョウは姿を消してしまっていた。
今夜の宿、雷鳥ざわヒュッテにはいって着替えをすませ、温泉に入ってから、お待ちかねの生ビールをいただく。
着替える時に気がついたのだが、私の古い登山靴はもう限界だった。雨の水が中にはいって靴下がしぼるとしたたるほど濡れてしまっていた。
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翌日はまだ雲がかかっていたが、天気はまずまずのようなので、計画通り奥大日岳に向かうことにした。カメラを壊してしまったので、ここからの記録は携帯で撮ったものだ。
写真は、雷鳥沢ヒュッテのベランダから、すぐ下にあるヒュッテ立山連峰を撮ったもの。同じ経営なので、次回機会があったらあちらにも泊まってみたい。
途中からこれから向かう億大日岳のほうを見る。ヒュッテの左奥の鞍部が室堂乗越だ。奥大日岳はその後ろで雲に隠れている。
雷鳥沢のテント場の先で称名川をわたって、対岸の斜面を左手にななめに登って新室堂乗越をめざす。
新室堂乗越への道。振り返ると室堂平のむこうに立山の堂々とした姿が見えるが、残念ながら今日も頂上稜線は雲の中だ。
このあたりは以前に来た時にはコバイケイソウがたくさん見られたが、今年は当たり年ではないようで、ほとんど姿が見られない。
歩きやすい木道の道が続く。
稜線にでると前方にこれから登る奥大日岳の大きな姿が目に入ってきた。こちらも頂上だけは雲に隠されている。
これからしばらくは楽しい稜線歩きだ。
一面にチングルマの花穂が広がっている。花の頃に来れたら見事だろうが、日当たりのいい尾根の雪が消えたとしても斜面はまだ相当の残雪があるはずだ。
見下ろす深い谷は称名川だ。日本一の落差を誇る称名滝のはるか上流にあたるのだが、それでもかなり深い谷を刻んでいる。
谷の向こう側は天狗平とその下に弥陀ヶ原だ。台地の中にうねうねと立山道路が白く光っている。
富山平野が見えてきた。向こうには奥大日岳より100mほど低い大日岳が見える。
もちろん平野の方からはまず大日岳が見え、その奥にあるから奥大日岳というのだろうが、立山道路ができて室堂が観光地になった今では奥大日岳の方が手軽にアプローチできる。
大日岳に行くには、奥大日岳までの時間に加えて往復5時間20分余計に歩かなければならない。
下から登るのなら称名の滝の下から1500mの急登をのぼって、6時間以上かかる。日帰りはきびしいので大日平山荘か山頂近くの大日小屋に泊まる必要があるだろう。
歩きやすい道が続く。花を愛でながらのんびりと歩く。
ふと振り返るとそれまで雲に隠れていた剱岳が姿を現しはじめた。周りの人もいっせいにカメラを向けた。
山頂まではもう少し。最後に急登が待っている。
まだ朝の7時55分だけど無事奥大日岳に到着。
タテヤマリンドウの群落。
剱岳もほとんど姿を現しているのだが、頂上のあたりに薄く雲がたなびいていい写真にならない。
チングルマの群落と剣岳の雄姿。
室堂へ引き返す途中できれいな姿を写真に収めることができた。雲が消えたのはこの時だけだった。もうちょっと前景のいいところで晴れてほしかった。
少したつと今度は谷から雲が湧き上がってきてまた姿を隠してしまった。
室堂平にもどるとこんどは立山が姿を現しはじめたが、結局雄山が見えただけだった。
来る時は夜行の登山バスを利用したが、帰りは路線バスで富山に出て、富山から新幹線で帰る。
立山では雨に降られ、大事なカメラをこわしてしまったが、二日目はまずまずの天気に恵まれ、楽しい山歩きをすることができた。
機会があったら秋の紅葉のころにまた来てみたいと思った。