ずいぶん前のことです。まだ暑い9月初めの頃のことです。自宅の最寄り駅へいくには大きな国道の歩道をしばらく歩きます。その国道の向かいには私立女子中高等学校があるためそちら側の歩道の道路側には草花などが植えられきれいに整備されています。ところが駅のある側は駐車場や高級バイク店などがあって、人通りはあるのですが歩道の道路側の植え込みはゴミだらけなのです。
いつも通るたびに気になっていまして、夏前にはボランティアで掃除でもしようかなぁ、などと考えていました。しかし哀しいかな私はちっとも身体が動かないままでした。結局暑い夏が過ぎゴミはぼうぼうとした夏草に隠され、その上にまた新たなゴミが捨てられていました。
そんなある夕暮れ、私が駅に向かっていると浮浪者風のおじさんがなにやら植え込みでやっていました。見ていますとどうやら植え込みの夏草を引き抜き、ついでにゴミもかき集め一カ所に集めていらっしゃるのでした。その方は植え込みと歩道のあいだに座り込みどんどん作業をされていました。おやまあ、と思いながらその場を通り過ぎ、電車に揺られながらひょっとしてあの方は神人か?と思っていました。次の日もその方は作業をされ、昨日引き抜いた草やゴミはところどころ歩道に山を作っていました。これはこれはと思いましたがなんとなく声もかけづらく、明日には冷たいお茶でも差し入れようかと考えて通り過ぎました。
その次の日に通りかかりますとゴミはごみ袋に入れられていまして、植え込みはすっかりさっぱりとしていました。そしてそのおじさんはもういませんでした。その後、その植え込みしばらくきれいな状態が続きました。ほんとうに有り難いできごとでした。あのおじさんは一体どういう方だったのか。今もそこを通るたびにあのおじさんのことを思います。
最近また植え込みにゴミが目立つようになってきました。今度こそは私がお掃除をしたいものだとこっそり思っています。