無知の知

ほたるぶくろの日記

化粧品による白班について

2013-07-14 10:02:58 | 生命科学

 先日某化粧品会社の製品が自主回収になりました。この原因となっている物質はロドデノール。製品のHPでは「メグスリノキなど様々な植物にも含まれる天然由来の成分」と紹介されています。チロシナーゼに結合してメラニン色素の生成を抑制する物質です。この作用機序からは肌が斑に白くなるという結果は想像できなかったかもしれません。私も意外に思います。

 使用を中止することによって肌は元に戻る場合が約1/3症例だそうですが、その他の症例についても長期的には戻る可能性があると思われます。チロシナーゼを産生しメラニン色素を生成しているメラノサイトがまだ皮膚に存在しているからです。

 白班になる、のは皮膚のある部分のメラノサイトが全くあるいは非常に少量のメラニン色素しか産生しなくなっている、ためであると考えられます。疑問は2点。

1)なぜ「ある部分」なのか。

2)なぜ生成されなくなるのか。

2)に関してはロドデノールが細胞内で分解されず蓄積されている可能性を示しています。このことは1)の原因についてもつながっていきます。メラノサイトの幹細胞にロドデノールが蓄積されたとすれば、その幹細胞から分裂増殖、分化したメラノサイトは初めからメラニン色素を生成できなくなっています。そのようなメラノサイトは幹細胞周辺にひろがるでしょう。白班として観察されることになります。

 なぜ症状のでた人とでなかった人がいるのか。それは分解の速度が個人によって異なるからでしょう。酵素活性や酵素の量などには個人差があります。つまり現在白班がでている方も時間の経過とともに回復すると思われます。あまりあれこれ治療するよりも時間の経過を待つのが最善と思います。