ウイルス検出には大きくわけて2種類の検出法があります。
1)「ウイルスに特異的なタンパク質や糖鎖など(その他ウイルスに特異的であれば何でもよい)」を認識する『抗体』を用いるもの。
インフルエンザなど10分程度で判定が出る検査などに使われています。
【条件】検出するべき「ウイルスに特異的なタンパク質や糖鎖など」に対して
十分に特異的(他の何物にも結合しない)で
効率よく結合する感度の良い
『抗体』があること。
(新しいウイルスに対しては?)
このような特異性が高く、感度の良い『抗体』の作成には時間がかかります。一年はかかります。短縮するための努力は何十年もなされていますが未解決。
したがって、『使えません。』
2)「ウイルスに特異的な遺伝子配列」を検出するもの。
今話題のPCR法を用います。その他最近ぼちぼち話題になっているLAMP法も入ります。
【条件1】検出するべき「ウイルスに特異的な遺伝子配列」を増幅できる
十分に特異的(他のどんな遺伝子配列にも結合しない)で
効率よく結合する感度の良い
『プライマーセット』があること。
(新しいウイルスに対しては?)
このような特異性が高く、感度の良い『プライマーセット』の作成はある程度短時間で可能。
『使えます』
そのような経緯で、今回は2)の方法をもちいて検査をしているのですが、
もう一つ重要な【条件】があります。
【条件2】『検査に熟練の手技を持った検査技師』と、
他の遺伝子が混じって来ないための『特別な実験室と装置』があること。
そのため、他の一般的なウイルス検査では1)が用いられています。2)は時間も費用も人も必要なためです。
この【条件2】はPCR法でもLAMP法でも変わりません。
ここが最大のボトルネックと言ってよいでしょう。
特異性が高い ということは 偽陰性につながります。
感度が良い ということは 偽陽性につながります。
何度も書きますが、今回のSARS-CoV-2はRNAポジティブ鎖のウイルスですので、
1)適切な手法で採取された「検体」(できれば喉の非常に奥の方の拭い液か喀痰)
2)適切な方法(マイナス80度が望ましい)で保管、実験室まで移送され
3)熟練の技師により「RNA抽出」
4)逆転写反応 (RT-PCRのRT部分)
5)PCR、またはLAMP
6)判定
1)はどうしようもないです。ウイルスが十分に存在すると考えられる検体が必要です。コロナウイルスに対するレセプターをもつ細胞は肺の奥の方の細胞と、喉の奥のどこか(現在不明)にしか存在しないようです。
2)は特殊な試薬が開発されていますので、マイナス80度でなくても安全に検体の管理ができるようになりつつあるようです。
3)噂ではRNA抽出をしなくても、検体そのものでなんとかなる、との試薬もあるようですが、診断のためには危険すぎると思います。やはりRNA抽出はするべきでしょう。
4)-6)ですが、当初はまず逆転写酵素を用いてRNAからDNAを生成し、2段階PCRをやって、さらにその生成物のシークエンス(塩基配列解読)までやって、陽性を決定した、とのこと。(驚きの手間です)
2段階PCRとは
一度増幅したDNA鎖の全てがウイルス特異的ではないかもしれない場合、
(今回は初めての検出であり、診断用検査なので慎重を期すべき)
初めのプライマーセットと同じか、増幅した断片の少し内側に設定した別のプライマー(こちらが望ましい)
を用いて二度目の増幅を行うことです。
これでも増幅してきたDNA断片が本当にウイルスのものかどうかをさらに
遺伝子配列を読んで、確かめた。ということです。ご苦労様です。
ただ、これですとあまりにも時間と手間がかかりすぎ、臨床検査の現場では使えない、ということで、感染研は「TaqManプローブを用いたリアルタイム、1ステップRT-PCR」も提案しています。
RNAの逆転写酵素反応(Reverse Transcriptase reaction:RT)からリアルタイムで検出するPCRを続けてできるように逆転写酵素、PCR用のTaqポリメラーゼが既に混合されているミクスチャーがあります。
これにさらにTaqManプローブを加えることで「TaqManプローブを用いたリアルタイム、1ステップRT-PCR」が可能ですが、これを行うためには専用の機器が必要。まず普通の臨床検査会社にはないと思います。あったとしても研究用。臨床検査用ではないはず。
TaqManプローブはリアルタイムで目的のDNA断片が生成されていることを検出するための特殊な化学的修飾がなされたプライマー。これがあって、初めてリアルタイム検出が可能です。もちろん高いです。
さらに、この反応は検出量のコントロール用反応も毎回必要。そのコストが馬鹿になりません。
また、先日紹介した記事にもありますが、
(ここから引用)
研究用試薬の導入がここまで遅れた理由について、複数の専門家は、「自家調整の遺伝子検査は臨床向けに開発されているので問題ないが、研究用試薬は研究向けなので、厚労省は使わせたくなかったというのが本音だろう」と口をそろえる。
(ここまで)
(自家調整:感染研が独自に調整したという意味)
という役所の意向があったかもしれません。それが本当だとしたら、ここはもう厚労省の猛省を促したいですね。
CDCや中国、韓国は早いうちに「リアルタイム、1ステップRT-PCR」で検査を行う体制を整えたようです。中国、韓国で検査件数が非常に多いのはこのため。
日本もこれからはこの方向性になると思います。
1)「ウイルスに特異的なタンパク質や糖鎖など(その他ウイルスに特異的であれば何でもよい)」を認識する『抗体』を用いるもの。
インフルエンザなど10分程度で判定が出る検査などに使われています。
【条件】検出するべき「ウイルスに特異的なタンパク質や糖鎖など」に対して
十分に特異的(他の何物にも結合しない)で
効率よく結合する感度の良い
『抗体』があること。
(新しいウイルスに対しては?)
このような特異性が高く、感度の良い『抗体』の作成には時間がかかります。一年はかかります。短縮するための努力は何十年もなされていますが未解決。
したがって、『使えません。』
2)「ウイルスに特異的な遺伝子配列」を検出するもの。
今話題のPCR法を用います。その他最近ぼちぼち話題になっているLAMP法も入ります。
【条件1】検出するべき「ウイルスに特異的な遺伝子配列」を増幅できる
十分に特異的(他のどんな遺伝子配列にも結合しない)で
効率よく結合する感度の良い
『プライマーセット』があること。
(新しいウイルスに対しては?)
このような特異性が高く、感度の良い『プライマーセット』の作成はある程度短時間で可能。
『使えます』
そのような経緯で、今回は2)の方法をもちいて検査をしているのですが、
もう一つ重要な【条件】があります。
【条件2】『検査に熟練の手技を持った検査技師』と、
他の遺伝子が混じって来ないための『特別な実験室と装置』があること。
そのため、他の一般的なウイルス検査では1)が用いられています。2)は時間も費用も人も必要なためです。
この【条件2】はPCR法でもLAMP法でも変わりません。
ここが最大のボトルネックと言ってよいでしょう。
特異性が高い ということは 偽陰性につながります。
感度が良い ということは 偽陽性につながります。
何度も書きますが、今回のSARS-CoV-2はRNAポジティブ鎖のウイルスですので、
1)適切な手法で採取された「検体」(できれば喉の非常に奥の方の拭い液か喀痰)
2)適切な方法(マイナス80度が望ましい)で保管、実験室まで移送され
3)熟練の技師により「RNA抽出」
4)逆転写反応 (RT-PCRのRT部分)
5)PCR、またはLAMP
6)判定
1)はどうしようもないです。ウイルスが十分に存在すると考えられる検体が必要です。コロナウイルスに対するレセプターをもつ細胞は肺の奥の方の細胞と、喉の奥のどこか(現在不明)にしか存在しないようです。
2)は特殊な試薬が開発されていますので、マイナス80度でなくても安全に検体の管理ができるようになりつつあるようです。
3)噂ではRNA抽出をしなくても、検体そのものでなんとかなる、との試薬もあるようですが、診断のためには危険すぎると思います。やはりRNA抽出はするべきでしょう。
4)-6)ですが、当初はまず逆転写酵素を用いてRNAからDNAを生成し、2段階PCRをやって、さらにその生成物のシークエンス(塩基配列解読)までやって、陽性を決定した、とのこと。(驚きの手間です)
2段階PCRとは
一度増幅したDNA鎖の全てがウイルス特異的ではないかもしれない場合、
(今回は初めての検出であり、診断用検査なので慎重を期すべき)
初めのプライマーセットと同じか、増幅した断片の少し内側に設定した別のプライマー(こちらが望ましい)
を用いて二度目の増幅を行うことです。
これでも増幅してきたDNA断片が本当にウイルスのものかどうかをさらに
遺伝子配列を読んで、確かめた。ということです。ご苦労様です。
ただ、これですとあまりにも時間と手間がかかりすぎ、臨床検査の現場では使えない、ということで、感染研は「TaqManプローブを用いたリアルタイム、1ステップRT-PCR」も提案しています。
RNAの逆転写酵素反応(Reverse Transcriptase reaction:RT)からリアルタイムで検出するPCRを続けてできるように逆転写酵素、PCR用のTaqポリメラーゼが既に混合されているミクスチャーがあります。
これにさらにTaqManプローブを加えることで「TaqManプローブを用いたリアルタイム、1ステップRT-PCR」が可能ですが、これを行うためには専用の機器が必要。まず普通の臨床検査会社にはないと思います。あったとしても研究用。臨床検査用ではないはず。
TaqManプローブはリアルタイムで目的のDNA断片が生成されていることを検出するための特殊な化学的修飾がなされたプライマー。これがあって、初めてリアルタイム検出が可能です。もちろん高いです。
さらに、この反応は検出量のコントロール用反応も毎回必要。そのコストが馬鹿になりません。
また、先日紹介した記事にもありますが、
(ここから引用)
研究用試薬の導入がここまで遅れた理由について、複数の専門家は、「自家調整の遺伝子検査は臨床向けに開発されているので問題ないが、研究用試薬は研究向けなので、厚労省は使わせたくなかったというのが本音だろう」と口をそろえる。
(ここまで)
(自家調整:感染研が独自に調整したという意味)
という役所の意向があったかもしれません。それが本当だとしたら、ここはもう厚労省の猛省を促したいですね。
CDCや中国、韓国は早いうちに「リアルタイム、1ステップRT-PCR」で検査を行う体制を整えたようです。中国、韓国で検査件数が非常に多いのはこのため。
日本もこれからはこの方向性になると思います。
LAMP法もよいのですが、世界標準の検査法を用いないと、他国との発症率や感染率など比較ができません。
「PCR法でもLAMP法でも結果は同等である」ことの証明をしつこく行い、利点を世界へ向けて強烈に売り込む必要があるでしょう。
今朝の朝のワイドショーでは感染者数が過去最多!
などと煽っておりますが、幸いにして死亡者はほとんど増えていません。このまま、皆様静かに過ごして頂ければ、収束に向かうのでは、と期待しています。