去年、公開時に行こうとしながら、上映時間が196分なのでやめてしまった『雪の轍』(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、2014年)をレンタルDVDで観た。
舞台は南中央トルコのカッパドキア。
そこにひっそりと佇む一件のホテル。
経営者のアイドゥンは若い妻のニハル、そして出戻りの妹ネジラと共にこのホテルで暮らしている。
元舞台俳優の彼は、父の遺産によってホテルの他にも店舗や家を持ち、その膨大な資産の管理や雑事は使用人に任せている。
ある日、アイドゥンが乗る車に道端から石が投げられる。
犯人の少年イリヤスは、アイドゥンに家賃が払えず家具を差押えられているイスマイルの息子だった。
川に逃げてずぶ濡れになったイリヤスを家に届け、運転していた使用人がその顛末を話すと、イスマイルは不遜な態度で恨み言をぶつけてきた。
丁度その時帰宅した、イスラム教導師でイスマイルの弟ハムディが謝りながら取りなし、事なきを得た。
アイドゥンは些細なそのことを追及はしなかったが・・・・
これが導入部のあらすじである。
アイドゥンは、人に寛大で鷹揚そうな感じが滲んでいる。
アイドゥンと妹ネジラ。アイドゥンと妻ニハルの関係も傍目で見れば、何の変哲もなく穏やかにみえる。
しかし、話が進行するとそうばかりではない。
日常会話の些細な事から、ふいに、アイドゥンと妹の生活態度、物の見方の違いが露わになる。
アイドゥンと妻との間でも、同じようなことが起きる。
他人からすれば、突如意見の相違が出たようにみえても、これは長年の鬱積からくるもの。
こうして、アイドゥンという人物の性格が少しずつ露わになる。
本人は、他人に善意で接しているつもりでも、芯のところでは人を信用できない性格。
これを、自然なカメラワークの室内劇として、じっくりとあぶり出す。
あたかも、観ているこちらもその場に居合わせているようで、自分の言い分を妻ニハルがアイドゥンにし、責める時、
私まで、心の奥底にしまって人目に晒したくないことを剥き出しにされていくみたいで、
あぶら汗が滲み出てくるような気にさせられる。
ふっと思ったのは、まるでイングマール・ベルイマン監督の心理劇を観ているような雰囲気であると言うこと。
特に『ある結婚の風景』(1973年)とか。
だから、どれだけ長時間の作品だとしても、その映画空間にのめり込んで飽きがこない。
そう言えば、ベルイマンの『ファニーとアレクサンデル』(1982年)だって、311分もかかる作品だったけれど、当時、劇場に浸りきれたことが幸せだった。
おまけに、この映画は風景が晴らしい。雪の冬景色なんかは目が離せず飽きが来ない。
観終わった時、まるで一冊の文学書を読んだような充実した思いが残った。
『スリー・モンキーズ』(2008年)、『昔々、アナトリアで』(2011年)とこの作品を観て、ジェイランという監督がますます好きになってしまった。
特にこの『雪の轍』は、私にとって最良の重要な作品のひとつとなった。
舞台は南中央トルコのカッパドキア。
そこにひっそりと佇む一件のホテル。
経営者のアイドゥンは若い妻のニハル、そして出戻りの妹ネジラと共にこのホテルで暮らしている。
元舞台俳優の彼は、父の遺産によってホテルの他にも店舗や家を持ち、その膨大な資産の管理や雑事は使用人に任せている。
ある日、アイドゥンが乗る車に道端から石が投げられる。
犯人の少年イリヤスは、アイドゥンに家賃が払えず家具を差押えられているイスマイルの息子だった。
川に逃げてずぶ濡れになったイリヤスを家に届け、運転していた使用人がその顛末を話すと、イスマイルは不遜な態度で恨み言をぶつけてきた。
丁度その時帰宅した、イスラム教導師でイスマイルの弟ハムディが謝りながら取りなし、事なきを得た。
アイドゥンは些細なそのことを追及はしなかったが・・・・
これが導入部のあらすじである。
アイドゥンは、人に寛大で鷹揚そうな感じが滲んでいる。
アイドゥンと妹ネジラ。アイドゥンと妻ニハルの関係も傍目で見れば、何の変哲もなく穏やかにみえる。
しかし、話が進行するとそうばかりではない。
日常会話の些細な事から、ふいに、アイドゥンと妹の生活態度、物の見方の違いが露わになる。
アイドゥンと妻との間でも、同じようなことが起きる。
他人からすれば、突如意見の相違が出たようにみえても、これは長年の鬱積からくるもの。
こうして、アイドゥンという人物の性格が少しずつ露わになる。
本人は、他人に善意で接しているつもりでも、芯のところでは人を信用できない性格。
これを、自然なカメラワークの室内劇として、じっくりとあぶり出す。
あたかも、観ているこちらもその場に居合わせているようで、自分の言い分を妻ニハルがアイドゥンにし、責める時、
私まで、心の奥底にしまって人目に晒したくないことを剥き出しにされていくみたいで、
あぶら汗が滲み出てくるような気にさせられる。
ふっと思ったのは、まるでイングマール・ベルイマン監督の心理劇を観ているような雰囲気であると言うこと。
特に『ある結婚の風景』(1973年)とか。
だから、どれだけ長時間の作品だとしても、その映画空間にのめり込んで飽きがこない。
そう言えば、ベルイマンの『ファニーとアレクサンデル』(1982年)だって、311分もかかる作品だったけれど、当時、劇場に浸りきれたことが幸せだった。
おまけに、この映画は風景が晴らしい。雪の冬景色なんかは目が離せず飽きが来ない。
観終わった時、まるで一冊の文学書を読んだような充実した思いが残った。
『スリー・モンキーズ』(2008年)、『昔々、アナトリアで』(2011年)とこの作品を観て、ジェイランという監督がますます好きになってしまった。
特にこの『雪の轍』は、私にとって最良の重要な作品のひとつとなった。