ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

高校生のころ・9〜『エデンの東』

2016年02月18日 | 1950年代映画(外国)
我が家の小遣いは、小学校の時に毎日10円ずつ。それ以降、小遣いは貰わなかったし、それが当然だった。
高校生になって映画を観に行くようになると、まず映画代を捻出しなければならない。それをどうしたらいいものか。

当時、昼食代に確か毎日50円貰っていた。
大抵はパンとコーヒー牛乳で賄っていたから、パンを1個だけにしてお釣りを浮かす。
ある時、昼食をやめてマルマル浮かしてみたけど、あれは長続きしなかった。
食べ盛りに一人、図書室でその時間を潰す。
お腹は減ってくるし、みんなが楽しく食べていると思うとなんとも侘しかった。

そのようにして、ある程度お金が貯まると、いよいよ映画に行ける。
ロードショーは高いから、当然、入場料の安い名画座に行く。
それに、名画座の方がいい作品を2本立てでやるから、一石二鳥である。

その当時、名古屋・松坂屋本店の西隣りに名画上映館があり、そこによく通った。
入場券を買うと、半券と一緒にそこの劇場が作ったプログラムをくれる。
そのプログラムに「声の広場」という投稿欄があって1、2名が掲載されている。
葉書で投稿して、うまく載れば招待券が2枚貰える。
2回分タダになるので、こんなうまい手はない。
だから私もこの手を利用して、何回か無料で映画を観ることができた。

その時のプログラムが取ってあるので、恥ずかしいけど、その中のひとつを書き写すとこんな内容。

“「エデンの東」を確か昨年だったか貴館で見て、一瞬ひねくれた感じの、それでいて父のために一生懸命な、
あのジェームス・ディーンの役にすごく共感を覚えた事を記憶している。
その映画が先日、また貴館で上映されると知った時はすごく嬉しかった。
まだ話の筋もほとんど忘れていないので、ひょっとしてつまらないものになるんじゃないかと気おくれもしたが、
いざ見てみると、そんな感情を持ったのが間違いだった。
もう最初から完全にディーンのペースに巻き込まれた感じで、一つ一つの演技が身にしみ、前よりもいっそう感動した。
ぼくにとってこの映画は、将来いつまでも心に残るものとなるだろう。”

この『エデンの東』(エリア・カザン監督、1955年)は、その後、上映館が変わるたびに、追っかけのように何度も観てまわった。
思い出してみると、短期間のうちに9回観たと記憶している。本当に、心に沁みる良い映画だった。

その頃から、『エデンの東』や「太宰治」は、いっぱし分別がついてからではダメ、感性が豊かな若いころに観たり、読んだりしなければダメ、
そうでないと感動の仕方が全然違う、と変な持論を有したまま今に至っている。



コメント (5)
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