ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・6~『晩菊』

2020年02月20日 | 日本映画
『晩菊』(成瀬巳喜男監督、1954年)を観た。

芸者上りの倉橋きんは、口の不自由な女中静子と二人暮し。
今は色恋より金が第一で、金を貸したり土地の売買をしていた。
昔の芸者仲間たまえ、とみ、のぶの三人も近所で貧しい生活をしているが、
きんはたまえやのぶにも金を貸してやかましく利子をとりたてた。

若い頃、きんと無理心中までしようとした関が会いたがっていることを、飲み屋をやっているのぶから聞いても、きんは何の感情も表わさない。
しかし、以前燃えるような恋をした田部から会いたいと手紙を受けると、彼女は美しく化粧して男を待った。
だが田部が訪ねてきた理由は借金のためで、それがわかったきんは、たちまち冷い態度になり、今まで持っていた彼の写真も焼きすてた・・・
(Movie Walkerより一部修正抜粋)

きんだって、若い頃は色恋に夢中になり、関に無理心中までさせられるし、
田部にはとことん惚れて、彼が兵隊に取られた時には、広島まで追いかけていった。
だが今は、ややこしい男女関係に巻き込まれた過去はさっぱり忘れ、一人で自立している。
そこでは、唯一頼れるのはお金だけであり、それが生活に基盤となっている。

たまえは、連れ込みホテルらしい旅館の女中。
雑役婦のとみは、競輪、パチンコに凝っていて、お金は使うためにあると考えている。
夫と飲み屋をやっているのぶは、たまえと同じように生活がにっちもさっちもいかないから、きんにお金の面で頼っている。

とみは、娘の幸子と共にたまえの家に同居していて、
昔芸者時代にはきんより自分の方が人気があったのにと、お金一辺倒のきんが何かにつけ面白くない。
と言うとみだって、娘にお金を無心したりする。

と、このようにお金だけの話のやり取りで、ほぼ物語が進んでいく。
この魅力のなさそうな内容を、グイグイ引きつけて飽かせないのは、さすが役者のうまさ。
高利貸しの女を、杉村春子が演じる。
パチンコ好きのとみは、望月優子。
飲み屋が沢村貞子で、旅館の女中が細川ちか子。

杉村春子なんかは、あれ程に人に冷淡なのに、昔の恋人、上原謙が訪ねてくるとなると、それはもうオンナになってしまって、そのギャップのうまさが凄い。
と言っても、目的が借金となると一辺に昔の恋の熱が冷めてしまい、さすが金で人生を制してきた人物像が際立っている。

こんな嫌みみたいなきんにやられっぱなしかと言うとそうでもなく、
たまえととみは、最後に自立して行ったが“自分たちには子供がいるもん”とあけらかんとして嫌みがない。
 
前回観た『稲妻』同様、林芙美子の作品絡みで陰気臭そうな物語なのを、不思議なことに、とっても愛着ある作品に仕上がっていて言うこと無し。
コメント
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