『放浪記』(成瀬巳喜男監督、1962年)を観た。
昭和の初期。
林ふみ子は行商をしながら、母と駄菓子屋の二階で暮らしていた。
彼女が八歳の時から育てられた父は、九州から東京まで金を無心にくるような男だった。
隣室に住む律気な印刷工安岡は不幸なふみ子に同情するが、彼女は彼の好意を斥けた。
自分を捨てた初恋の男香取のことが忘れられないのだ。
母を九州の父のもとへ発たせたふみ子は、カフェ「キリン」の女給になった。
彼女の書いた詩を読んで、詩人兼劇作家の伊達は、同人雑誌の仲間に入るようすすめた。
まもなく、ふみ子は本郷の伊達の下宿に移ったが、彼の収入だけでは生活できず牛めし屋の女中になった。
ところが、客扱いのことからクビになったふみ子は、下宿で日夏京子が伊達にあてた手紙を発見した。
新劇の女優で詩人の京子は、やがて伊達の下宿へ押しかけてきた。
憤然と飛び出したふみ子は、新宿のカフェ「金の星」で働くことにした。
その間にふみ子が新聞に発表した詩を高く評価したのは、「太平洋詩人」の福地、白坂、上野山らである。
彼らは京子をつれてきて、ふみ子に女同士での出版をすすめ、今は伊達と別れた二人の女は、ふしぎなめぐり合わせの中で手を握り合った。
こんなことからふみ子は福地と結婚したものの、貧乏と縁がきれない・・・
(映画.comより)
多くを語る必要はない林芙美子の自伝的小説「放浪記」の映画化。
それも何度か映画化されたうちの一作品ということだが、私にとってこれが初である。
貧乏で、生活の糧のために意に沿わぬ仕事もして、どうにか食べなければならない。
書くことが好きで、内に希望をたぎらせていても、夫となる福地も作家を目指して無収入。
だから、ギリギリのところで他人に金の無心をするしか方法がない。
林ふみ子を演じる、高峰秀子。
眉は下がりめ、近眼の目つき、歩く姿は傾いていて猫背で首が前に出ている。
上目遣いは、どう見てもコンプレックスを漂わせ、着物の着付けまで自堕落ふう。
今まで知っている高峰秀子とは格段と違い、正直言って、不細工。
イメージしている林芙美子とは違うけれど、それでも、そうだろうと納得できてしまう本人像。
物語は、最後に林ふみ子が「放浪記」を出版し、人気作家になったところまで。
流行作家になれば、いろいろな慈善事業からの寄付依頼もくる。
それに対し彼女からすれば、人に甘えていないでギリギリまで努力をしてみなさいよ、というメッセージか。
彼女自身のこれまでの人生がそうだったから。
男に弱くて、尽くして裏切られ、思ってもちっとも自立できない、それでも芯がピシャリと通っている、そんなひとりの女性の姿を垣間見るような優れた作品だった。
昭和の初期。
林ふみ子は行商をしながら、母と駄菓子屋の二階で暮らしていた。
彼女が八歳の時から育てられた父は、九州から東京まで金を無心にくるような男だった。
隣室に住む律気な印刷工安岡は不幸なふみ子に同情するが、彼女は彼の好意を斥けた。
自分を捨てた初恋の男香取のことが忘れられないのだ。
母を九州の父のもとへ発たせたふみ子は、カフェ「キリン」の女給になった。
彼女の書いた詩を読んで、詩人兼劇作家の伊達は、同人雑誌の仲間に入るようすすめた。
まもなく、ふみ子は本郷の伊達の下宿に移ったが、彼の収入だけでは生活できず牛めし屋の女中になった。
ところが、客扱いのことからクビになったふみ子は、下宿で日夏京子が伊達にあてた手紙を発見した。
新劇の女優で詩人の京子は、やがて伊達の下宿へ押しかけてきた。
憤然と飛び出したふみ子は、新宿のカフェ「金の星」で働くことにした。
その間にふみ子が新聞に発表した詩を高く評価したのは、「太平洋詩人」の福地、白坂、上野山らである。
彼らは京子をつれてきて、ふみ子に女同士での出版をすすめ、今は伊達と別れた二人の女は、ふしぎなめぐり合わせの中で手を握り合った。
こんなことからふみ子は福地と結婚したものの、貧乏と縁がきれない・・・
(映画.comより)
多くを語る必要はない林芙美子の自伝的小説「放浪記」の映画化。
それも何度か映画化されたうちの一作品ということだが、私にとってこれが初である。
貧乏で、生活の糧のために意に沿わぬ仕事もして、どうにか食べなければならない。
書くことが好きで、内に希望をたぎらせていても、夫となる福地も作家を目指して無収入。
だから、ギリギリのところで他人に金の無心をするしか方法がない。
林ふみ子を演じる、高峰秀子。
眉は下がりめ、近眼の目つき、歩く姿は傾いていて猫背で首が前に出ている。
上目遣いは、どう見てもコンプレックスを漂わせ、着物の着付けまで自堕落ふう。
今まで知っている高峰秀子とは格段と違い、正直言って、不細工。
イメージしている林芙美子とは違うけれど、それでも、そうだろうと納得できてしまう本人像。
物語は、最後に林ふみ子が「放浪記」を出版し、人気作家になったところまで。
流行作家になれば、いろいろな慈善事業からの寄付依頼もくる。
それに対し彼女からすれば、人に甘えていないでギリギリまで努力をしてみなさいよ、というメッセージか。
彼女自身のこれまでの人生がそうだったから。
男に弱くて、尽くして裏切られ、思ってもちっとも自立できない、それでも芯がピシャリと通っている、そんなひとりの女性の姿を垣間見るような優れた作品だった。