『ゲームの規則』(ジャン・ルノワール監督、1939年)を観る。
大西洋単独横断飛行を23時間でし、パリ郊外の空港に降りたったアンドレ・ジュリューは、熱狂する群衆や親友のオクターブに迎えられる。
アンドレにとってこの飛行は、侯爵ロベール・ラ・シュネイの妻クリスティーヌのためだったのに、彼女が出迎えに来ていないので落胆する。
片や、クリスティーヌはパリの邸で、小間使いのリゼットに着替えを手伝わせながら、ラジオの実況放送を聞いていた。
アンドレとクリスティーヌの仲は、夫のロベールも含め社交界で周知の事実だった。
またロベールの方も、知り合いの貴族夫人ジュヌビエーブと秘かな関係が続いていた。
クリスティーヌの幼なじみのオクターブは、ロベールの領地コリニエールで催される集いに、アンドレも招待客のひとりとする約束を取りつける・・・
ここに描かれているのは、ざっくばらんに言うと、何やかやと言っても、登場人物たちのとどのつまりは恋愛駆け引き。
アンドレはクリスティーヌに夢中。
でもクリスティーヌは、アンドレ程のぼせているとは思えないし、夫ロベールとのバランスも保っている。
そのロベールはクリスティーヌのために、ジュヌビエーブとの間を清算しようとするが、それはジュヌビエーブが許さない。
恋愛のルール。
それは、相手の家庭を壊さないこと。
単純に言えば、退屈しのぎの不倫遊びといったところか。
と言うのは、小間使いのリゼットだって、あまり夫シュマシェールを好いていなくって、クリスティーヌの世話を口実に夫から離れていようとする。
そこへ、使用人に雇われたマルソーが現れてリゼットと意気投合するから、話がややこしくなる。
その後での、名士たちが大勢集るパーティでの、シュマシェールとマルソーの追っかけのドタバタ。
一方、ロベールとアンドレの、クリスティーヌに絡んだ争い。
でもこの映画が楽しいのは、ロベールとアンドレも相手のことを納得するし、
騒動を起こしクビになったシュマシェールとマルソーも、これからどうするかと相手の気を遣う。
そればかりか、クリスティーヌとジュヌビエーブだって、まさしく友達同士。
そんな雰囲気がとても心地よい。
このように、敵対する者たちの様子が和やかなのに、それでもラストに悲劇が起きる。
と言っても悲劇なのに、悲惨な雰囲気ではない不思議なイメージが与えられる。
この作品は、幻の名画として日本では1982年にやっと公開された。
当時、観に行こうかと随分迷いながらも、古い作品は面白くないだろうとスルーしてしまったまま時が過ぎ、やっと観たことになる。
ウサギ、キジの狩りのシーンといい、
重要な位置を占めるオクターブが、ジャン・ルノワール自身によって演じられていることが非常に興味深く、また感銘を覚える作品であった。
オクターブ役のジャン・ルノワール
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