ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・11~『流れる』

2020年03月05日 | 日本映画
『流れる』(成瀬巳喜男監督、1956年)を観た。

東京の花街にある芸者置屋の「つたの家」。
そこへ、職安の紹介で新しい女中がやってくる。
女中の名は梨花だが、女将のつた奴がお春にしようと決める。
この置屋には、若いなみ江となな子、それに年がいった染香の芸者がいるが、なみ江は、つた奴の娘勝代と喧嘩し出ていく。

前には7人いた芸者もなな子と染香だけとなり、今では「つたの家」も落ちぶれてしまっている。
つた奴は父親違いの姉おとよに借金し、その返済を催促されている。
そんな家に、つた奴の妹米子も夫から別れ、子供を連れて転がり込んでいる・・・

原作は幸田文。
それを成瀬はいつものパターンで、借金でにっちもさっちもいかない状態の中での人間模様を見せる。
つた奴が山田五十鈴で、その娘が高峯秀子。
お座敷の余り掛からない染香は杉村春子。
つた奴の父違いの姉おとよは賀原夏子。
肝心の、新しい女中が田中絹代。
その他に、つた奴の父違いの妹、中北千枝子とか、その夫の加東大介。
まだまだいて、若い芸者のなな子は岡田茉莉子。
最大の大物が戦前の大スター栗島すみ子と、目を見張る女優軍。

これらの役者をみごとな演出によって、個性を浮き彫りにして立ち回らせる。
だから主役は誰かとなるが、それぞれの人物を個々の中心に置いて見ると、
幾通りかのパノラマ的なドラマが見えてきて興味が尽きない。

時代の流れとともに、いずれは衰退していく運命の芸者置屋。
それを豪華メンバーを使って描き切る成瀬の演出の冴え。
これこそが傑作、と言える見本を目の当たりにした。

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