ポケットの中で映画を温めて

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『戦雲(いくさふむ)』を観て

2024年05月13日 | 日本映画

『戦雲(いくさふむ)』(三上智恵監督、2024年)を観てきた。

与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島 ──
この美しい島々で、日米両政府の主導のもと急速な軍事要塞化が進行している。
自衛隊ミサイル部隊の配備、弾薬庫の大増設、基地の地下化、そして全島民避難計画・・・

2022年には、「台湾有事」を想定した大規模な日米共同軍事演習「キーン・ソード23」と安保三文書の内容から、
九州から南西諸島を主戦場とし、現地の人々の犠牲を事実上覚悟した防衛計画が露わになった。
しかし、その真の恐ろしさを読み解き、報じるメディアはほとんどない。
全国の空港・港湾の軍事拠点化・兵站基地化が進められていることをどれほどの日本人が知っているか。
本当の「国防」とは何か。
圧殺されるのは沖縄の声だけではない。
(「戦雲」チラシより)

この作品は、三上智恵監督が2015年から8年かけて沖縄・南西諸島を取材したドキュメンタリーである。

与那国島では、町に何も知らされないままミサイル基地建設が決まり、戦車やPAC3積載車が公道を走る。
石垣島では、若者主導の住民投票運動は市政に潰され、ミサイル基地が島の真ん中にできた。
宮古島では、集落の程近くにミサイル基地、射撃訓練場を備えた弾薬庫も完成した。
沖縄本島では、島々に配備されたミサイル基地統括本部がまもなく完成、民間の港が次々と軍事訓練に使われている。
(これも、チラシより)

日本の最西端に位置する島々、先島諸島。
そこでは、粛々と確実に基地整備がされて来ている。
当初、島に自衛隊が来ることによる経済効果も期待した人もいたが、結果、効果なんてなかった。
素朴な風景の美しい島の穏やかな生活が変化してくる。
反対運動を持続させる島の人々。
矢面に立たせられるのは自衛隊員であり、悲しいかな、彼らは何の権限も持っていない。

「台湾有事」の場合時の南西諸島を主戦場とする防衛計画。
いざと言う時、狙われるのは基地のある島々である。
島民を守るためと言いながら、戦争気配になった場合のために全島民の島外退出計画をしている。
現実的には、国は島民および、ひいては国民を守る気はサラサラないとしか思えない。
威嚇のために着々と進めている戦争設備。
今の世界を見てもわかるように、そのようなことをして仮想敵を刺激して何をしようと考えているのか。

悲しいかな、このような作品を観なければ情報に接することができない日本とは何か、と考えさせられる。


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