ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ジュリアン・デュヴィヴィエ・12~『モンパルナスの夜』

2019年03月14日 | 戦前・戦中映画(外国)
『モンパルナスの夜』(ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、1933年)を観た。

パリの酒場。
女に目がないのに飲み代のツケも払えないフェリエールは、馴染み客に「叔母のヘンダーソンが死ねば10万フラン払う」と軽口をたたく。
すると、落ちていた紙切れに「夫人の始末を請け負う。住所と鍵と屋敷の見取り図を局留めで送れ」とメモ書きがされていた。

ヴェルサイユ。
資産家でアメリカ人の老婦ヘンダーソンの屋敷。
見取り図を頼りに屋敷に忍び込んだウルタンが、暗闇の中、2階のヘンダーソンの寝室へ進んで行くと、そこには夫人の死体があった。
ウルタンが動揺していると、隣りのドアから男が現れる。
男は、殺人の証拠は消すから心配ないとウルタンに約束をする。

ウルタンは、身をかくすためにパリ郊外の田舎の実家へ逃げる。

メグレ警視は、この事件の担当をジャンヴィエとメナールの二人の刑事に託す。
刑事たちは、ヘンダーソン夫人の寝室からウルタンの指紋と足跡を割り出す。
逃げていたウルタンが捕まる。

ウルタンを取り調べている中で、メグレ警視は裏に真犯人がいると確信し・・・

ウルタンを盗みに誘ったラデックが、死んでいる夫人の部屋へ現れる。
その時点で、ラデックが殺人犯だと明確にわかってしまっている。
だから、犯罪物の推理映画として観ると、何とも物足りない。
メグレ警視も、どうしてウルタンが犯人でないと確証を持っているのか説明されない。

だからこの作品はつまらないじゃないかと言うと、中々そうでもない。
医学生だったが重病で挫折した28歳のチェコ人ラデック。
伯母が死んだら自分に莫大な遺産が転がり込むフェリエール。
それに寄り添うように、独特な雰囲気の愛人エドナ。

犯人のラデックの顔のアップの表情。
その表現の映像の仕方に釘付けされる。
それはエドナやウルタンにも言えることであって、それらの魅力が相まって一気に観せてしまう。

ジョルジュ・シムノンのメグレものを、ジャン・ルノワールが『十字路の夜』(1932年)を作り、続いてデュヴィヴィエがこの作品を作る。
それぞれ監督の特徴があって、案外この時代の特色が反映されているのではないかと憶測する。

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