花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

線│白崎秀雄「北大路魯山人」

2021-02-18 | アート・文化


 彼は素人臭くおづおづと引くやうなことがなかったのはもちろん、職人のやうに一分の乱れもなく精確に引かうとは、決してしなかった。一瞬息をつめ、力をこめてためらはず、一気に切つた。ときに歪んだりすることは、もとより意に介しない。
 そこに、とらはれぬ活きた線が生まれた。自然なリズムがあつた。時として稚拙とさへ見まがふやうなところがありながら、あやまたず雅致を生み、芸術たることを示してゐた。
 想へば、それは彼の書における線の引き方に、源を発し、基盤をもつてゐた。彼の篆刻・扁額に通じ、絵に通じ、料理における包丁の入れ方にも通じてゐた、といへよう。


(白崎秀雄著:「新版 北大路魯山人 下」, p200, 新潮社, 1985)