読書感想325 限界点
著者 : ジェフリー・ディーヴァー
生年 : 1950年
出身地 : アメリカ、シカゴ
出版年 : 2010年
邦訳出版年 : 2015年
邦訳出版社 : (株)文藝春秋
訳者 : 土屋晃
★☆感想☆☆☆
本書の主人公は、連邦機関〈戦略警護部〉の警護官コルティ。犯人を追い詰めて逮捕するのではなく、犯人が殺そうとする対象者を守るのが任務だ。コルティの師匠にあたる警護官を拷問して情報を引き出した凄腕の〈調べ屋〉ヘンリー・ラヴィングがターゲットに選んだのはワシントンDCの刑事のライアン・ケスナ―。ラヴィングの犯行動機はわからないまま、ケスナ―一家を保護しなければならない。ワシントンDCの拘置所での保護にコルティは反対する。その理由は次のとおり。
「たしかに拘置すれば、調べ屋はまず外から侵入することはできない。それに、間違いなくスタッフも精査されている。ほかの調べ屋だったら、私も賛成しますよ。でも、今度の相手はヘンリー・ラヴィングだ。やつのやり口はわかっています。こちらでケスラー一家を囲い込んだら、おそらくやつは看守のひとりの弱みを見つけだす。看守のほとんどは若い男性です。私がラヴィングなら、目をつけるのは身重の妻がいる人間―それもできれば初産で、その彼女を訪ねる。看守はラヴィングの要求に一も二もなく従うでしょう。しかも、いったん所内にはいった家族には逃げる手段がない。ケスラー一家はおいつめられる。」それでケスラー一家を連邦機関〈戦略警護部〉の隠れ家に保護するため、ケスラー家に急行するがそこにラヴィングが襲撃をかけてくる。ケスラー一家はライアンと妻のジョアン、娘のアマンダ、ジョアンの妹のマーリー。コルティが活用したのがサインカッティング、発見した物理的痕跡をもとに人を追跡する技術だ。それで、ラヴィングの固有の逃走経路を割り出していく。ボードゲームは日本ではなじみがないが、アメリカでは人気のゲームのようだ。その大ファンのコルティはボードゲームにも言及しながらラヴィングの先を読もうとする頭脳戦を展開する。
リンカーン・ライムはニューヨーク、キャサリン・ダンスはカリフォルニア、コルティはワシントンDCとその周辺と、それぞれ地域も離れ、捜査方法も異なっているので雰囲気がずいぶん違う。しかし一週間で事件を解決するスタイルは共通している。