著者 : ジェフリー・ディーヴァー
生年 : 1950年
出身地 : 米国 シカゴ
出版年 : 2007年
邦訳出版年 : 2008年
邦訳出版社 : (株)文藝春秋社
訳者 : 池田真紀子
☆☆感想☆☆☆
「マンソンの息子」という異名は、ダニエル・ペルがシャロン・テート殺害を自身のカルト的集団に指示したチャールズ・マンソンとの類似性によるものだ。ペルは8年前カリフォルニア州のIT富豪のクロイトン一家惨殺事件の主犯として逮捕され、脱獄不可能と言われるキャピトーラ刑務所に終身刑で収監されていた。しかし、未解決の殺人事件との関連が疑われ、郡裁判所内の取調室で、尋問とキネシクスーボディランゲージ分析ーの専門家であるカリフォルニア州捜査局(CBI)の捜査官キャサリン・ダンスから尋問されることになる。尋問の後でキャピトーラ刑務所に戻されようとしたときに郡裁判所の駐車場で火災が発生し、ペルはそれに乗じて脱獄、逃走してしまう。ペル捜索の指揮を執ることになるダンスは、ペルをよく知る元のファミリーの3人の女レベッカ、サマンサ、リンダを訪ね、クロイトン家の唯一の生き残りの末娘17歳になったテレサ・クロイトンを探す。ペルの事件を調べている犯罪実録作家モートン・ネーグルにも接触する。脱獄の共犯者がわからない。ダンスはキネシクスーボディランゲージ分析を通じて嘘を見抜いていく。その対象は捜査対象だけでなく、同僚や家族にも及ぶ。カルト犯罪のエキスパートのFBI捜査官ウィンストン・ケロッグが捜査に参加する。ペルを有罪にした検察官のジェームス・レノルズは引退した身だったが、ペル捜査に協力。ダンスの友人であるマイケル・オニール保安官代理、ダンスの部下のTJ・スキャンロン、レイ・カラネオ。ペルに殺されたファン・ミラー。
カルト集団の支配者とそれに従属するファミリーの関係が、家族愛を知らない人が集まった疑似ファミリー。支配者はそれを操ることに喜びを感じ、支配を脅かす者をつぶそうとする。カルトの支配者の心理がわからないと、ペルの目的も潜伏先もわからない。
いくつものどんでん返しがある。
キネシクスについてつぎのように説明している。
「人が経験するストレスには種類があるが、キネシクスの専門家は容疑者が感じているのがそのうちのどれであるかを瞬時に分類する。一部は主として真実の一部を隠しているときに現れるものだ。ダンスはそれを『嘘つきストレス』と呼ぶ。一方で、もっとありふれたストレスもある。嘘とは無関係に、単に不安を感じているときに現れるストレスで、誰でも日常的に経験する。・・・その二つのまったく別種のストレスは、やはりまったく別種のボディランゲージとなって現れる。」
訳者のあとがきによれば、キャサリン・ダンスはリンカーン・ライム・シリーズの第7作「ウォッチメイカ―」で初めて登場し、犯罪の『人間的側面』にはまるで興味を持たないライムをも唸らせたキネシクスのスペシャリストだそうだ。本作が新シリーズの幕開け。
ただただ面白い作品。