①カリブの鎮魂歌 面白さ(5点満点):☆☆☆☆
著者:ブリジット・オベール
生年:1958年 出身国:フランス
出版年:1997年 邦訳出版年:1999年 邦訳出版社:(株)早川書房
訳者:藤本優子
コメント:カリブ海に浮かぶ島で私立探偵をしているバグの下に、シャルロットと名乗る美女が訪れ、実父を捜してくれと依頼する。ひと夏の白人の人妻の浮気の相手はジミーと名乗る黒人青年。シャルロットが生れる前に姿を消していた。白人の人妻は黒人の赤ん坊が生まれたことで、金持ちの夫から追い出され、シャルロットが5歳の時に自殺したと言う。シャルロットは修道院で育てられた。雲をつかむような話だが、シャルロットの母親の自殺のことから調べ始める。知らべ始めると自殺の発見者や検視医など関係者が次々と亡くなっていく。カリブ海の島々はオランダ領だったりフランス領だったりした過去から、いろんな言語が飛び交っている。人種もいろいろ。白人、黒人、カラード(白人と黒人の混血)。異国情緒あふれる、ミステリー。
②北京から来た男 面白さ(5点満点):☆☆☆☆
著者:ヘニング・マンケル
生年:1948年 出身国:スウェーデン
出版年:2008年 邦訳出版年:2014年 邦訳出版社:(株)東京創元社
訳者:柳沢由美子
コメント:スウェーデンの小さな寒村でほぼすべての村人が惨殺された。ほとんど老人ばかり。殺された村人は皆親族関係にあった。休暇中だった女性裁判官は亡き母親がその村で育ったことに気づき事件の真相を探ろうとする。100年以上前のアメリカ横断鉄道の工事現場で中国人労働者が酷使され、殺されたことの復讐劇が始まったのだ。舞台が過去のアメリカ、中国、現代の中国、スウェーデンと広げすぎたきらいがある。動機もかなり無理筋だ。
③無用の隠密 面白さ(5点満点):☆☆☆☆
著者:藤沢周平 出身国:日本
生年:1927年
出版年:2009年 出版社:(株)文藝春秋
コメント:藤沢周平が作家デビューする以前に書いた初期短編集15篇である。すべて時は江戸時代。いろいろな人の人生の哀感を描いている。その中の「木曽の旅人」が印象に残った。数か月で戻ると約束しながら江戸に出て戻ることができないまま20年以上たってしまった、やくざの親分。やっと故郷の木曽に戻ったが恋人は亡くなり。自分との間の娘が宿屋を営んでいる。身元を明かさずその宿屋に泊まり、あれやこれやの事件に巻き込まれていく。これは読後感が良かった。