『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想346 ①6月の雪  ②スター  ③青い虚空  ④狐火の家

2024-12-22 20:50:33 | 小説

六月の雪の画像

①6月の雪                                面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:乃南アサ          生年:1960年           出身地:東京都

出版年:2018年          出版社:(株)文藝春秋

コメント:父の転勤の都合で祖母と二人で東京の家で暮らしていた未来は、認知症気味の祖母が入院したことで、祖母がよく話す生まれ故郷の台湾の台南に行って、祖母の通っていた学校や住んでいた家などを捜して写真に撮って祖母に見せようと思いたった。台湾では案内してくれる親切な台湾人に巡り合う。学校や昔日本人が住んでいた社宅も残っていて、現在そこに住んでいる人と交流したりする。6月の雪と呼ばれるものを捜す。台湾の美味しい食べ物もいろいろ紹介されているし、若干重いテーマ、認知症、家族の相続争いとか、台湾の戒厳令時代とかにさらっと触れているが、台湾旅行前に読むと楽しい本だ。

②スター                                面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:朝井リョウ         生年:1989年           出身地:岐阜県

出版年:2020年          出版社:朝日新聞出版

コメント:大学時代にピアフィルムフェスティバルでグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘は卒業後別々の道を歩む。尚吾は映像制作会社で尊敬していた名監督のチームに入り、紘はボクシングジムのユーチューブ映像を制作するようになる。町の名画座はどんどん廃業に追い込まれ、ユーチューブは無料で多数の視聴者を獲得していく。時代が変わっていく中での映像作家の葛藤が面白い。

③青い虚空                               面白い(5点満点):☆☆☆☆

著者:ジェフリー・ディーヴァー      生年:1950年         出身地:アメリカ、シカゴ

出版年:2001年  邦訳出版年:2002年        邦訳出版社:(株)文藝春秋

訳者:土屋晃

コメント:舞台はカリフォルニア州のシリコン・ヴァレー。ストーカー殺人事件を捜査する州警察はハッカーの犯行と断定し、服役中の天才ハッカー、ジレットを一時釈放させて「フェイト」を名乗る容疑者のハッカーを追跡させる。コンピューター犯罪の未来形が出てくる。メールに応答するだけでこちらの個人情報をすべて吸い取られたりする。現在ではこうしたことは未来形ではないのかもしれない。新しい犯罪の分野を切り開いてミステリーにする力量に感服する。

④狐火の家                              面白さ(5点満点):☆☆☆☆

h著者:貴志祐介               生年:1959年     出身地:大阪

出版年:2008年     出版社:(株)角川書店

コメント:4編の短編が収録。1)狐火の家 2)黒い騎馬 3)盤端の迷宮 4)犬のみぞ知る

1)長野県の旧家で中学3年生の娘が殺された事件。

2)ペットの中に猛毒のタランチェラも含まれている。その相続をめぐる争いに弁護士が巻き込まれれう。

3)鍵屋が警察に事件現場に呼ばれる。

4)劇団の主催者が自宅で撲殺された。

どれも意表を突くトリックばかりでびっくり。


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読書感想345  ①カリブの鎮魂歌  ②北京から来た男  ③無用の隠密

2024-11-08 20:20:57 | 小説

カリブの鎮魂歌 ハヤカワ・ミステリ文庫

①カリブの鎮魂歌                                                                             面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ブリジット・オベール

生年:1958年              出身国:フランス

出版年:1997年             邦訳出版年:1999年             邦訳出版社:(株)早川書房

訳者:藤本優子

コメント:カリブ海に浮かぶ島で私立探偵をしているバグの下に、シャルロットと名乗る美女が訪れ、実父を捜してくれと依頼する。ひと夏の白人の人妻の浮気の相手はジミーと名乗る黒人青年。シャルロットが生れる前に姿を消していた。白人の人妻は黒人の赤ん坊が生まれたことで、金持ちの夫から追い出され、シャルロットが5歳の時に自殺したと言う。シャルロットは修道院で育てられた。雲をつかむような話だが、シャルロットの母親の自殺のことから調べ始める。知らべ始めると自殺の発見者や検視医など関係者が次々と亡くなっていく。カリブ海の島々はオランダ領だったりフランス領だったりした過去から、いろんな言語が飛び交っている。人種もいろいろ。白人、黒人、カラード(白人と黒人の混血)。異国情緒あふれる、ミステリー。

②北京から来た男                    面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ヘニング・マンケル        

生年:1948年             出身国:スウェーデン

出版年:2008年           邦訳出版年:2014年            邦訳出版社:(株)東京創元社

訳者:柳沢由美子

コメント:スウェーデンの小さな寒村でほぼすべての村人が惨殺された。ほとんど老人ばかり。殺された村人は皆親族関係にあった。休暇中だった女性裁判官は亡き母親がその村で育ったことに気づき事件の真相を探ろうとする。100年以上前のアメリカ横断鉄道の工事現場で中国人労働者が酷使され、殺されたことの復讐劇が始まったのだ。舞台が過去のアメリカ、中国、現代の中国、スウェーデンと広げすぎたきらいがある。動機もかなり無理筋だ。

③無用の隠密                      面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:藤沢周平            出身国:日本

生年:1927年

出版年:2009年           出版社:(株)文藝春秋

コメント:藤沢周平が作家デビューする以前に書いた初期短編集15篇である。すべて時は江戸時代。いろいろな人の人生の哀感を描いている。その中の「木曽の旅人」が印象に残った。数か月で戻ると約束しながら江戸に出て戻ることができないまま20年以上たってしまった、やくざの親分。やっと故郷の木曽に戻ったが恋人は亡くなり。自分との間の娘が宿屋を営んでいる。身元を明かさずその宿屋に泊まり、あれやこれやの事件に巻き込まれていく。これは読後感が良かった。

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読書感想344  ①蝉しぐれ ②クリスマス・プレゼント ③ある男 

2024-10-19 13:33:54 | 小説

蟬しぐれの画像

①蝉しぐれ                                    面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:藤沢周平

生年:1927年               出身地:山形県鶴岡市

出版年 出版社:1988年  (株)文藝春秋

コメント:鶴岡市にあった酒井家の家中を彷彿とさせる海坂藩が舞台。下級藩士の息子で15歳になる文四郎は午前中は私塾で経書を学び、午後からは道場で剣道をしている。2人の親友と隣家の幼馴染のお福が藩の大事に巻き込まれながら成長していく物語である。田園風景の自然描写が日本の昔の風景をよみがえらせて懐かしい。

 

②クリスマス・プレゼント                            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ジェフリー・ディーヴァー

生年:1950年              出身地:あめりか、シカゴ

出版年:2003年    邦訳出版年 邦訳出版社:2005年  (株)文藝春秋

訳者:池田真紀子  土屋晃 藤田佳澄  森嶋まり

コメント:16の短編を集録した短編集である。リンカーン・ライムが登場する「クリスマス・プレゼント」をはじめ。意表をつくミステリーばかり。特に印象に残ったのは、一番初めの「ジョナサンがいない」と「サービス料として」。

 

③ある男                                 面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:平野啓一郎

生年:1975年              出身地:北九州市(愛知県生まれ)

出版年 出版社:2018年 (株)文藝春秋

コメント:里枝は離婚して九州の実家に戻ってきてから知り合った男と再婚した。ところが事故でその男が亡くなってしまい、生前全く交流のないかった男の実家に連絡すると、男が全く別人であるということが分かった。城戸という離婚時に世話になった弁護士に相談すると、城戸も興味をもって調べてくれることになった。なりすまし、戸籍の交換とか闇の世界が浮かび上がってくる。過去を期し去りたい衝動を持つ人は多いだろう。なりすましはアイデンティティーの喪失だし、在日韓国人・朝鮮人の通名の問題とも絡んできそうだ。


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読書感想341  ①教皇のスパイ  ②あの丘の向こうに  ③ノーサイド・ゲーム  ④民主

2024-06-16 00:01:09 | 小説

教皇のスパイの画像あの丘の向こうに/スーザン・エリザベス・フィリップス/宮崎槇【1000円以上送料無料】の画像ノーサイド・ゲームの画像民王 シベリアの陰謀

①教皇のスパイ                      面白さ:☆☆☆☆

 著者:ダニエル・シルヴァ    出身地:アメリカ合衆国    訳者:山本やよい

 出版年:2020年    邦訳出版年:2021年  出版社:(株)ハーパーコリンズ・ジャパン

 コメント:ローマ教皇パウロ七世が死去した。ローマ教皇の個人秘書のドナーティ大司教は殺されたのではないかと思い、休暇中でヴェネツィアにいたイスラエル諜報機関の長官であり、美術修復師のガブリエル・アロンに相談する。書斎で教皇が書いていた手紙がなくなり、紅茶カップも片づけられ、護衛にあたっていた スイス衛兵が消えている。キリスト教の根幹にかかわるイエスの死の責任がイスラエルの民にあるとする福音書の記述の謎、ナチスのホロコーストに加担したカトリック教会の問題などがあぶり出されてくる。教皇の死の真相をさぐりながら、教会が何百年も隠してきた謎が解き明かされていく。

 

②あの丘の向こうに                    面白さ:☆☆☆☆

 著者:スーザン・エリザベス・フィリップス    出身地:アメリカ合衆国   訳者:宮崎槙

 出版年:2011年      邦訳出版年:2012年   出版社:(株)二見書房

 コメント:裕福な家庭に育ったメグは大学4年の時に大学を中退し、環境保護に関心を持って世界各地を放浪していた。親友のルーシーがテキサスの田舎町のミスター・パーフェクトと呼ばれる町長テッドと結婚しようとしていた。テッドの態度からルーシーがこの結婚で苦しむのではないかと危惧したメグがテッドの真意を問い質した。するとルーシーは結婚式を取りやめて姿を消してしまう。破談の原因はメグにあると町中の人から責められたメグは、両親からいつまでも遊んでいないで自立せよと資金援助を断たれてしまう。ホテル代も払えず、掃除婦として働くことになる。会話が面白い。

 

③ノーサイド・ゲーム                  面白さ:☆☆☆☆

 著者:池井戸潤    生年:1963年      出身地:岐阜県

 出版年:2018年      出版社:ダイヤモンド社

 コメント:ドラマ化されているので、ドラマと比べながら読んだ。自動車会社の経営戦略室にいた君島は横浜工場の総務部長兼実業団ラグビー部GMに左遷された。お荷物ラグビー部を優勝させ年間16億の経費を黒字化することが君島の仕事になった。ドラマでは横浜ではなく、府中になっているし、君島の家庭が出てくるが、本書の中では家庭は一切出てこない。ドラマではのラグビーの試合や練習でルールがわかりやすく描かれていたが、小説では少し難しかった。ドラマでは福島の復興プロジェクトとしてラグビーの試合があり、ラグビーの真正面から勇気をもってぶつかっていくという精神を福島の復興に重ね合わせていた。ラグビーがわかって試合を見たくなった。

 

④民主 シベリアの陰謀                面白さ:☆☆☆

 著者:池井戸潤    生年:1963年     出身地:岐阜県

 出版年:2021年    出版社:KADOKAWA

 コメント:未知のウィルスに感染して精神が錯乱する人が多数出現した。首相の武藤泰山の不詳の息子の翔がそのウィルスの謎に挑むことになる。シベリアの永久凍土が溶け出してマンモスが現れウィルスも蘇る。いかにもありそうで怖い。


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読書感想340 森の少女ローエラ 下町ロケット 下町ロケット(ガウディ計画) 下町ロケット(ゴースト) 黎明に起つ

2024-05-19 16:12:00 | 小説

森の少女ローエラ (少年少女・新しい世界の文学 25) 下町ロケット下町ロケット ゴースト 下町ロケット ガウディ計画

①森の少女ローエラ                             面白さ:☆☆☆☆

 著者:マリア・グリーペ           生年:1923年    国籍:スウェーデン

 出版年:1963年    邦訳出版年・出版社:1973年 (株)学習研究社

 コメント:森の中に住む12歳のローエラはやっと歩けるようになったばかりの双子の弟と、船に乗って炊事婦として働いているお母さんの帰りを待っている。10月に帰ってくる約束が、お金持ちの一家とあと1年アメリカに行くという知らせが届く。冬の間、弟たちはお母さんの友達の家に、ローエラは弟たちが預けられた家の近くの養護施設に住んで町の学校に行くことになる。お父さんを知らないローエラは案山子をパパと名付けて大事にしている。森の中の生活が勤勉でしっかり者のローエラを作っている。町の暇な生活に退屈していまう。わずかなお父さんの情報からお父さんに会いたいと思うローエラがいとおしい。

②黎明に起つ                                面白さ:☆☆☆

 著者:伊東潤                生年:1960年     出身地:神奈川県横浜市

 出版年:2013年               出版社:NHK出版

 コメント:若き日の北条早雲の物語。北条早雲こと伊勢新九郎は室町幕府の政所執事を務める伊勢氏の分家である備中伊勢氏の出身で、備中伊勢氏も代々室町幕府の申次衆を務めていた。この物語では応仁の乱のさ中に兄と敵味方に分かれて刃をまじえることになり、実の兄を打ち取るという衝撃的な場面から始まる。そして最後の場面でも三浦半島を支配する三浦一族の長である道寸を一騎打ちで討ち果たす。どちらも実際にあったことではなく創作のような感じのする場面だ。北条早雲は時代を先取りし領国経営に長けた人物だが、自ら武器を取って戦うという印象は薄い。

③下町ロケット                               面白さ:☆☆☆☆

 著者:池井戸潤              生年:1963年     出身地:岐阜県

 出版年:2010年              出版社:(株)小学館

 コメント:テレビドラマ化もされた第145回直木賞受賞作。宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平は、研究開発した水素エンジンを搭載したロケット発射に失敗した。そして亡くなった父親の佃製作所を引き継ぐために、宇宙科学開発機構を辞め、エンジンや周辺機器で売り上げを伸ばす。大手の帝国重工がロケット開発を手掛け、キー部品になるバルブの特許を佃製作所が保有していることを知る。スケールの大きい話だし。日本の中小企業への応援歌でもある。

④下町ロケット(ガウディ計画)                      面白さ:☆☆☆☆

 著者:池井戸潤              生年:1963年    出身地:岐阜県

 出版年:2015年              出版社:(株)小学館

 コメント:前作同様、佃航平と佃製作所が医療の分野に進出する。心臓の人工弁ガウディの共同開発をしないかという話が舞い込む。北陸の医科大学の医師と地方の編み物企業の小会社が佃製作所の技術力をかったのである。資金力という壁にもまして、大手の医療メーカーや、承認を得るための心臓学会のボスという壁がある。必要とする患者を見れば、仕事の意義がはっきりわかればやる気はおきるものだ。

⑤下町ロケット(ゴースト)                        面白さ:☆☆☆

 著者:池井戸潤              生年:1963年    出身地:岐阜県

 出版年:2018年             出版社:(株)小学館

 コメント:「下町ロケット(ヤタガラス)」の姉妹編で前作にあたるのが本書である。ヤタガラスで佃製作所の敵となるギアゴーストとダイダロスが登場する。帝国重工でも財前部長の敵役の的場取締役で出てくる。佃航平が特許問題で苦境に陥っていたギアゴーストを助けたにもかかわらず、競争相手のダイダロスのエンジンを採用する。その動機が大企業の下請けいじめ。一気に読ませる展開はさすがだ。


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