読書感想160 荒野のホームズ
著者 スティーヴ・ホッケンスミス(1968年~)
出身地 アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイヴィル
出版年 2006年
邦訳出版 2008年 (株)早川書房
★感想★
ホームズに心酔し探偵になろうとする無学文盲の兄グスタフ(渾名オールド・レッド)とワトソン役の文字の読める弟オットー(渾名ビッグ・レッド)の2人のカーボーイ兄弟が活躍するシリーズの長編デビュー作。時は19世紀、場所はアメリカ西部、モンタナ。二人のカーボーイ兄弟は牛追いで稼いだお金を預けていた銀行が倒産し、まだ2月で牛追いの仕事もなく困っていた。そこで近くの〈バー・VR〉牧場に雇われて行くことにしたが、〈バー・VR〉牧場は怪しいことだらけ。牧場はイギリスの公爵の持ち物で、パーキンズという支配人が差配している。美貌のパーキンズはいつも書斎で仕事をしている。実際に牧場の仕事をしている親方は牛泥棒として前任の支配人に告訴された経歴のあるマクファースン。牛が暴走した跡に死体が残されていた。グスタフの探偵魂に火がつく。そうこうするうちに、イギリスから公爵一行がやってくる。バルモラル公爵と娘のレディ・クララ、メイドのエミリー。同行者の伯爵家の子息ブラックウェルと成金アメリカ人のエドワーズ。さらに人肉を食べるというお尋ね者のハングリー・ボブが近在に出没するという噂が流れている。また第2の死体が出現する。
何か調査をするたびに、ホームズならこうするあうするというグスタフの台詞がくどい。ホームズから学んだものが緻密な観察力を武器にすることで、グスタフもそのやり方を踏襲したわけだし、カーボーイとしての豊富な経験からそれができているからだ。ホームズを権威として崇めているようで、アメリカの自由な風土で育ったカーボーイはもっと権威から自由であってほしいと思った。