『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想347  ①馬を盗みに  ②外人部隊の女  ③日本国紀

2025-01-03 21:50:43 | 小説その他

馬を盗みにの画像

①馬を盗みに                            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ペール・ペッテルソン               

生年:1952年         出身地:ノルウェー、オスロ

出版年:2003年        

受賞:ノルウェー批評家協会賞、書店が選ぶ今年の1冊賞 英インディペンデント紙の外国小説賞 国際IMPACダブリン文学賞

邦訳出版年:2010年   邦訳出版社:(株)白水社

訳者:西田英恵

コメント:引退してオスロからノルウェーの東の森のなかの小さい家に引っ越してきた男トロンドは、近くに住む男が子供時代に会ったことのある男だと気づく。そして1948年に15歳の時のことを回想する。父親と一緒にスウェーデンとの国境に近い村の別荘に滞在していた時のことだ、近くのヨンという少年が遊び友達で、近くの牧場でこっそり馬に乗りに行こうと誘う。馬に乗ることを馬を盗みに行くと言うのだ。舟で川を行き来してヨンの家や牧場、店に行ったりする。木を伐採して川に流して製材所に送ったり森の生活を満喫する。しかし、ヨンの悲劇から、戦時中の父親の秘密を知るようになる。

一緒に暮らす犬リーラのしつけが行き届いていて驚くばかりだ。ご主人の食事が終わるまでおとなしく待つとか、ご主人の食べ物のおすそ分けが大好きで、犬の餌には不満たらたらで食べるとか、命令に絶対服従でご主人が命令を忘れると困惑したりする。とても面白い。

自然と生きるノルウェーの森の生活が魅力的だ。

 

②外人部隊の女                            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:スーザン・トラヴァース

生年:1909年              出身地:イギリス、ロンドン

出版年:2000年    邦訳出版年:2003年   邦訳出版社:(株)新潮社

訳者:高橋佳奈子

コメント:これは著者の外人部隊での体験を綴ったもの。著者はイギリス人だが10代の頃に両親とともに南フランスに移住しアマチュアのテニス選手として上流階級の中で生活していた。語学に堪能で英語、フランス語はもとよりドイツ語もわかる。第二次世界大戦が始まるとフランス赤十字に参加し、それからフランス外人部隊に身を投じ、激戦のアフリカ戦線、ヨーロッパで戦い、戦後はインドシナのベトナムでベトミンとの戦いに看護婦として参加した。特にアフリカ戦線では将軍の運転手として、ロンメル将軍率いるドイツ軍との戦いの最前線にいた。そしてその絶体絶命の包囲網を突破することに成功し、その功績でレジョン・ドヌール勲章など数々の勲章を授与されている。自由フランス軍でもイギリス軍でも女を兵士として入隊させることは禁じられていた。彼女は男装したり、能力を認めさせて参加していた。彼女は将軍の愛人になっていた。妻帯者だったので別れざるを得なくなったが、真剣だった。日本の軍隊では考えられないような関係を軍隊の中に持ち込んでいるのが驚きだった。

 

③日本国紀                            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:百田尚樹                          出身地:大阪市

出版年:2018年             出版社:(株)幻冬舎

コメント:本書は著者の視点からの日本通史である。いくつも興味深い指摘はあるが、たくさんありすぎるので、3点だけ取り上げてみたい。

一つ目は邪馬台国と大和朝廷の関係である。著者は大和朝廷は邪馬台国を引き継いだ国ではないと想定している。その根拠は古事記と日本書紀の中に邪馬台国への言及がないからだとしている。魏に朝貢していた邪馬台国の業績をなぜ古事記や日本書紀が載せないのか。つまり大和朝廷の国ではないからだと言っている。これは納得できる論述だ。

二つ目は「ケインズを200年以上先取りした荻原重秀」。元禄期の好景気をもたらしたのは勘定奉行の荻原重秀の貨幣改鋳による金融緩和政策である。荻原重秀は「貨幣は国家が造るところ、瓦礫を以てこれに代えるといえども、まさに行うべし」、つまり「政府に信用があるかぎりその政府が発行する通貨は保証される、したがって通貨が金や銀である必要はない(瓦礫でも代用できる)」という現代に通じる「国定信用貨幣論」を打ち立てたのである。綱吉の死後六代将軍・家宣のブレーンになった新井白石が荻原重秀を嫌い貨幣を金銀本位に戻した。その後八代将軍吉宗は「享保の改革」で幕府の財政立て直しのため緊縮政策を取り自分も含めて庶民に贅沢を禁じた。しかしデフレが進み、景気が一向に回復しない状況に金の含有量を大幅に減らした貨幣を発行した。これによって江戸の町の景気は回復した。「享保の改革」は「元文の改鋳」によってはじめて成功した。荻原重秀は歴史の授業では悪徳な役人と習ってきたが実は有能な役人だった。研究が進むと人物の評価も劇的に変わるのが興味深い。

三つ目は第二次世界大戦を巡るアメリカとの外交である。第二次世界大戦を始めた日本の政府や軍部の無能無策ぶりはさんざん取り上げられてきたが、アメリカの思惑についてはあまりとりあげられていないのではないだろうか。本書の中で著者は次のように述べている。

「アメリカがいつから日本を仮想敵国としたのかは、判然としないが、大正10~11年(1921~1922)のワシントン会議の席で、強引に日英同盟を破棄させた頃には、いずれ日本と戦うことを想定していたと考えられる。それを見抜けず、日英同盟を破棄して、お飾りだけの平和を謳った「四カ国条約」を締結してよしとした日本政府の行動は、国際感覚が欠如しているとしかいいようがない。

 それから約20年後の昭和14年(1939)には、アメリカははっきりと日米開戦を考えていたと言える。ただルーズベルト大統領は、第二次世界大戦が始まっていた昭和15年(1940)の大統領選(慣例を破っての3期目の選挙)で、「自分が選ばれれば、外国との戦争はしない」という公約を掲げて当選していただけに、自分から戦争を始めるわけにはいかなかった。彼は「日本から戦争を仕掛けさせる方法」を探っていたはずで、日本への石油の全面禁輸はそのための策であったろう。」

いろいろ示唆に富んだ内容だった。

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読書感想343  ①イングリッシュマン ②日の名残り ③日ソ戦争 ④日本列島はすごい

2024-09-02 23:03:59 | 小説その他

日ソ戦争 帝国日本最後の戦いの画像日本列島はすごい-水・森林・黄金を生んだ大地 (中公新書 2800)の画像イングリッシュマン 復讐のロシア  日の名残りの画像

 

①イングリッシュマン                        面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:デイヴィッド・ギルマン     出身国:イギリス       生年:不詳     

出版年:2020年    邦訳出版年:2023年   邦訳出版社:(株)早川書房    訳者:黒木章人

コメント:元フランス外国人部隊の隊員でイングリッシュマンと呼ばれる男の活躍するアクション小説。ロンドン金融街の銀行役員が誘拐され、M16の高官が引退してフランスの片田舎にもとフランス外国人部隊の隊員たちと暮らしているイングリッシュマンを呼び出し捜査を依頼する。舞台はアフリカからフランス、そしてイギリス、最後にロシアで決着がつけられる。これを読んで思うことは、日本では書けない小説だということだ。現実に情報機関があって国際政治の中で暗闘を続けているアメリカとかイギリス、そして敵役のロシアでなければ、リアリティーが出てこない。現代を舞台にしているからだ。

②日の名残り                            面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:カズオ・イシグロ        出身国:日本  国籍:イギリス    生年:1954年

出版年:1989年   邦訳出版年:2001年   邦訳出版社:(株)早川書房    訳者:土屋正雄

受賞歴:ブッカー賞受賞

コメント:長年貴族の邸宅で働いてきた執事の回想録。仕えてきたダーリントン卿が亡くなり、邸宅はアメリカ人の手に渡る。新しい主人の勧めで旅行することになる。目的は昔一緒に働いてきた女中頭に会うこと。この執事の主人にたいする盲従ぶりがすさまじい。読んでいて主人公に対する共感は勿論興味もわかなかった。なぜこの本が評価されるのかわからなかった。

③日ソ戦争ー帝国日本最後の戦い                   面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:麻田雅文       出身地:東京都      生年:1980年

出版年:2024年       出版社:中央公論新社 中公新書

コメント:日ソ戦とは、1945年8月8日にソ連軍が満州や朝鮮半島、南樺太、千島列島に攻め込んできて8月15日になっても一方的に戦争を継続し9月上旬まで続いた戦争である。両軍の参加兵力は200万人を超えたという。

1943年8月の米軍統合参謀本部の報告書ではソ連の対日戦参戦について次のように記している。「ロシアはいずれ対日戦に介入する可能性が高いが、ドイツの脅威が取り除かれるまではそうしない。その後は、己の利益を考えて決断し、わずかな犠牲で日本が負けると思ったときにだけ介入する」そのとおりになったのである。

連合国側のヤルタ会談を踏まえたヤルタ秘密協定ではローズベルト、チャーチル、スターリンが1945年2月8日にソ連の対日戦への参加の見返りとして、南樺太、千島列島のソ連への帰属、満州については旅順のソ連の租借、鉄道・港湾の利権については蒋介石の同意と個別協定の締結が決まった。しかしドイツが降伏した後の1945年7月26日でのポツダム宣言は米・英・中の三国宣言で日本軍の無条件降伏を求めている。ソ連とは一切協議されていない。ソ連は正式の参戦要請を求めたがトルーマン大統領に断られている。日本や東アジアの戦後処理にソ連が関与するのを望んでいないと判断したスターリンは自力でヤルタで約束された利権を手に入れるべく、ヤルタ秘密協定でのドイツ降伏後2,3か月以内の参戦の期限を守って1945年8月8日に対日戦に参戦した。

一方日本側はソ連の参戦についてどう考えていたのか。ソ連は参戦しないと考え、連合国側との仲介の労を取ってもらおうと考えていたのである。スターリンの粛清のこともシベリア鉄道を使っての極東方面への兵士、武器の大量の移動の報告が入っていても、大本営が無視したのである。希望的観測にすがりついていたのである。またドイツの降伏、太平洋各地での敗戦の報が入っていたにもかかわらず、国体の護持を条件に無条件降伏を拒んでいた。将棋でも囲碁でも完全に手詰まりになり、負ける状況がわかれば数手前で負けを認める。戦争のプロがシュミレーションで負けがわかっている戦争を始め、終わらせないという心理的な問題は何なのだろう。軍に勝手なまねをさせないために文民統制が必要だと言われる。しかし、この敗戦のごたごたを見ると、自分の命を懸けて戦争を始めた人々ではないうえに、敗北の責任も自分の命で取ろうとしているとは見えない。軍に所属していても大本営とか、天皇周辺とか文官ではないか。自己保身で国体の護持とか言っているようにみえる。実際に戦う人は戦争には慎重だと思う。文民統制というのも危うい。

④日本列島はすごいー水・森林・黄金を生んだ大地            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:伊東孝    出身地:宮城県        生年:1964年

出版年:2024年       出版社:中央公論新社   中公新書

コメント:日本列島の成り立ちから、豊かな資源ー水、塩、森林、黄金ーについて語っている。2万年前の最後の氷河期には海水面は現在より125m下がった。大陸と北海道、樺太、本州、四国、九州は一続きとなった。しかしその後海水面は上昇し、7000年前には現在と同じ高さになった。そして日本の東側の日本海溝は太平洋プレートが沈み込む場所で地震の巣である。300万年前にフィリピン海プレートの移動方向が変化し、太平洋プレートの沈み込む場所が西へと移動し、東北日本は東西に圧縮され、東から沈み込んだプレートの上面が深さ100キロに達した。沈み込んだプレートから放出された水に起因してマントルの一部が溶けてマグマが生じる。このマグマが地表に達したものが火山である。日本海溝から見て最初の活火山の列が火山フロント(前線)となる。プレートから放出された水がマントルの岩を溶けさせマグマを作り火山を作り温泉を生み出す。日本列島は上からも下からも水に恵まれている。

奈良時代に発見された砂金は、遣唐使が持参する朝貢品のおもなものとなり、漢籍・仏教経典・仏像・美術工芸品・薬物などの購入費に充てられた。日本は黄金の国というイメージを植え付けることになったという。金はまだ大陸と陸続きの時代に陸地に近かった海溝に沈み込んだプレートが高温で溶解したためだとか。

地震にかんしては幕末に日本に来た外国人が地震に驚いた様子が伝わっている。そして明治13年(1880年)の地震を経験したお雇い外国人の科学者や技術者によって1か月後に日本地震学会が設立された。

面白そうな所だけ簡単に紹介したが、鉄のこと、塩のこと、ゆたかな土壌のことなど面白い話が満載。当たり前に思っていたことを科学的に説明される爽快感があった。


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読書感想342 ①秘密の花園 ②暗殺者の正義 ③テムズとともに ④お金で読む日本史

2024-07-20 22:07:45 | 小説その他

秘密の花園の画像暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)の画像天皇陛下の英国留学記「テムズとともに」復刊…新たに後書き寄せ ...の画像祥伝社 お金 で読む日本史の画像

 

①秘密の花園                                  面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:朝井まかて  生年:1959年  出身地:大阪府

 出版年:2024年  出版社:(株)日経BP 日本経済新聞出版

 コメント:「南総里見八犬伝」の著者、曲亭馬琴のことを描いた小説。武士の家に生まれたが、父親が亡くなり、仕えた幼君にも愛想をつかし、主家を飛び出してしまう。当代の人気戯作者京伝に弟子入りし、戯作者の道に入る。出版元の蔦屋重三郎にも奉公する。しかし売れない。それで町人の下駄屋の婿に入り、生活の糧を売る。下駄屋から寺子屋に商売替えしながら戯作を書き続ける。蔦屋は京伝と馬琴に現金で原稿料を払ってくれる。そうこうするうちに実家の滝沢家の兄がなくなり、滝沢家の跡目を馬琴の息子が継ぐことになる。「南総里見八犬伝」は大河小説として人気を博する。

江戸時代の下級武士や町人の暮らしぶりが生き生きと描かれていた。馬琴とか蔦屋とか葛飾北斎とか新しいことを始める人々が出てくる。時代の躍動感が新陳代謝を促している。

 

②暗殺者の正義                                 面白さ(5点満点):☆☆☆☆ 

 著者:マーク・グリーニー    現住地:テネシー州メンフィス

 出版年:2010年  邦訳出版年:2013年  邦訳出版社:(株)早川書房 

 訳者:伏見威わん

 コメント:「グレイマン・シリーズ」の第2作にあたる。主人公のジェントリーは元CIAの特殊活動部特殊作戦グループのメンバーだったが、今はCIAから暗殺命令が出ている暗殺者。彼はロシア・マフィアからスーダンの大統領暗殺を依頼される。同時に元のCIA上官からスーダンの大統領を拉致せよという命令が下される。成功すればCIAは今後ジェントリーの命を狙わないと約束する。状況は二転三転する。

ジェントリーがどちらかの側に立つのではなく。自分の考えを貫くところが面白い。

 

③テムズとともに 英国の2年間                              面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:徳仁親王       生年:1960年     出身地:東京都

 出版年:1993年  復刻出版年:2023年   復刻出版社:(株)紀伊國

 コメント:今上陛下が英国のオックスフォード大学での留学生活を記したものである。印象に残ったのは素直に率直に書かれていて、普通の若者の見聞記という感じが伝わってきたことだ。今まで皇室の方々の人となりはほとんど知られていないし、知る術もなかった。新しい時代になっているという感じだ。友達も多く、先生方にも恵まれた留学生活だが、研究テーマの詳細を記している。まじめな研究者として留学の目的を疎かにしていないのにも感心した。

 

④「お金」で読む日本史                               面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:本郷和人   生年:1960年  出身地:東京都

 出版年:2022年  出版社:祥伝社

 コメント:歴史上の人物の収入がどれくらいなのか、ある事件や出来事にかかった経費はどれくらいなのか。そういう興味を引き出してくれる本である。日本では708年の和同開珎をはじめ幾種類か貨幣を発行するが行政組織が未成熟でうまくいかず10世紀半ばに朝廷は発行を停止する。宋銭が多量に入ってきて鎌倉時代に貨幣経済が根づいたそうだ。貨幣がないので物々交換が主流だったそうで、貨幣のように使用していたものは、価値の下りにくいもの、米、絹、粗い絹など。源義朝は平治の乱で朝廷より従四位の位階を授けられると、規定通りだと今の貨幣価値に換算すると年収7142万5000円だとか。源頼朝は正二位の位階を授けられたので、規定通りならば、その収入は11億388万円だとか。享保の改革を進め幕府の財政を立て直した8代将軍徳川吉宗の朝食は、焼きおにぎりと焼きみそで200円以下で、1日2食で夕食も一汁三菜で質素倹約を率先垂範していたとか。

武田信玄、上杉謙信、織田信長の経済力の比較、明治維新のスポンサーとかいろいろ興味深い。


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読書感想339  アフガンの男 カウントダウン 下町ロケット(ヤタガラス) 夏子の冒険 スサノヲの正体

2024-04-27 18:43:41 | 小説その他

アフガンの男 上下町ロケット ヤタガラス夏子の冒険の画像

4月に読んだ本の短いコメント。

1)アフガンの男                           面白さ:☆☆☆☆

  著者:フレデリック・フォーサイス     出身地:イギリス     出生年:1938年   

  出版年:2006年   邦訳出版社:(株)角川書店  邦訳出版年:2008年

  コメント:

「ジャッカルの日」の著者が描いたスパイ小説。テロを未然に防ぐべくアルカイダに潜入するマイク・マーティン大佐は、   イラクで生まれイラクで育ち、アラビア語が自由に話せた。アフガニスタンやアイルランドなどでも特殊活動の経験が豊富だった。アメリカのCIAとイギリスの情報部は、アメリカに拘束されているアフガニスタン人の捕虜に成りすましてマイクをアフガニスタンに送り込もうとする。マイクとそのアフガニスタン人の捕虜は十数年前にアフガニスタンで行動を共にし、マイクがアフガニスタン人の命を救った因縁があった。

最新式の武器や偵察機が出てきて、名前を覚えるのも大変だし、その性能にも度肝を抜かれた。登場人物も多く、それぞれの視点で状況が説明されるので複線的で奥行きの深い物語になっている。

2)カウントダウン                         面白さ:☆☆☆

  著者:佐々木譲               出身地:北海道     出生年:1950年

  出版年:2010年               出版社:毎日新聞社

  コメント:

夕張市が財政破綻し、その隣の市も夕張市同様財政破綻していた。若い市議が財政破綻を隠し続けた市長の再選を阻むべく立候補をする。

財政破綻するとどうなるかということがよくわかる小説だ。

3)下町ロケット(ヤタガラス)                 面白さ:☆☆☆☆

  著者:池井戸潤              出身地:岐阜県      出生年:1963年

  出版年:2018年               出版社:(株)小学館

  コメント:

「下町ロケット」の続編。今回は無人農業ロボットの開発を中小企業の佃製作所と大企業の帝国重工が開発するプロジェクト。

 競争相手は同じ中小企業の連合体。佃製作所のエンジンとトランスミッションを帝国重工側の権力者が内製化をしようとして佃製作所外しを企む。競争相手も佃製作所を裏切ったベンチャー企業。身近な農業用ロボットなので面白く読めた。

4)夏子の冒険                         面白さ:☆☆☆

  著者:三島由紀夫                 出身地:東京      出生死亡年:1925年~1970年

  出版年:昭和35年(1960年)            出版社:(株)KADOKAWA

  コメント:

東京の上流階級のお嬢さんが結婚相手がどれもこれもつまらないから、函館の修道院に入ると言って母親、祖母、伯母と一緒にきたへ向かう。連絡船の中で話した青年は熊を撃ちに北海道に渡ると聞いて、興味をもちついていく。

言葉遣いが古い上流階級で感情移入しにくいうえに、夏子もただわがままなだけで魅力を感じないのでいまいちだった。

5)スサノヲの正体                       面白さ:☆☆☆☆

  著者:関裕二                   出身地:千葉県     出生年:1959年

  出版年:2023年                  出版社:新潮新書

  コメント:

アマテラスの弟のスサノヲは高天原で暴れて、厄介者になった。地上界で疫病をまき散らし人々を皆殺しにすることもあった。「神」は人智をこえた大自然そのもので「災いと幸」の両方をもたらすものと古代人には信じられていたそうだ、「神」に善悪の基準を当てはめることができないのに「日本書紀」によってアマテラスは善、スサノヲは悪と貶められたそうだ。著者はスサノヲとは何者かと「日本書紀」の定説を再検討している。

1。スサノヲを祭る神社は少ないが、武蔵の国の氷川神社がそれにあたる。氷川神社を祭る武蔵国造は出雲国造家の流れを汲んでいる。出雲大社は大国主神を祭っているが、初めに祭ったのは熊野大社のスサノヲだった。

2・天皇家とスサノヲの不思議な関係として、明治天皇が東京に遷御されると、スサノヲの祭られている氷川神社を最初の行幸地として行かれ、伊勢神宮は翌年のことになっている。伊勢神宮が7世紀後半に整えられてから明治維新まで、持統天皇を除き歴代天皇は一人も伊勢に参拝されていない。一方、スサノヲと縁の深い熊野は皇族、貴族、院がこぞって向かっている。アマテラスではなく、スサノヲの地である。

3.いろいろ推測や古代の解釈があるが、結論から言えば、古いヤマトの太陽神は、アマテラスではなくスサノヲだったのではないか。

伊勢外宮の豊受大神は内宮のアマテラスが独り身で寂しいというから連れてこられた女神だし、伊勢斎宮の斎王はアマテラスの妻になるから生涯独身だった。伊勢のアマテラスは男神であろう。スサノヲが生んだ男の子をアマテラスが自分の物(勾玉)からできたのだからと、自分の生んだ女神と交換する。それが天皇家の祖になっている。スサノヲが蘇我氏系の神であることから封印抹殺されたと著者は推論している。

興味深い本だが、推測に推測を重ねているだけなので残念だ。それだけ古代史の研究は難しいのだろう。


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