風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

残されて、夏の

2010年04月28日 | 詩集「ディープブルー」
Himawari


日焼けするほどの
夏の記憶ものこせずに
白いからだは
季節を素通りするようで
恥ずかしい


夏は虫をたくさん殺したので
血は水のように薄くなってしまった
土からうまれ土にかえる
虫がさかんに嘆いている
ツク ヅク オシイ
ツク ヅク イッショウ


虫の顔も人の顔も似ている
生きることと死ぬことの
境いめの宙を舞っていた
無数の翅のきらめきが夢のようで
目覚めても目覚めても
なお目覚めようとする


翅をとじた虫は
ことしも夏を越えられない


ツク ヅク オシイ
ツク ヅク イッショウ
空まで届きそうな静寂のなかを
翅のない私は
虫たちの翅を踏みながら歩くのです


(2004)


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