ほんのり暖かく、弾力があって、いい香りのする「土」
我家では、お野菜の皮やへた、魚の骨などの残飯は生ゴミ処理機で土に返しています。夏場なら1週間もすれば沢山の微生物君たちの活躍ですっかり跡形もなくなり、「土」に返ります。
窒素やリンなど栄養満点のこの「土」は、そのままだと粘土のようにどっしりとしていて通気性が悪いので普通は細かい砂利や軽石などを混ぜてから植物を植えます。ところが、1ヶ月ぐらい前に植木鉢に随分長い間放置していた「土」に花を植えようと触ったところ、黒くてとても軽い米粒くらいの大きさの「土」に変化していてすごく驚きました。
子供の頃、カブトムシやクワガタの幼虫を飼っていたあの「土」とそっくりなとても「美味しそうな土」。もしやと思って、スコップで少し掘り返してみたところ、やっぱりいました「カブトムシの幼虫」たち。どこからか飛んできたカブトムシ君が卵を産んだのでしょう。カブトムシの幼虫が、土を呑み込み、消化し、丸っこい糞として排出し、植物にとって最高の「土」を作ったのですね。
ダーウィンによると肥沃な土壌は、ミミズによって作られるというのを中学の理科の授業で習って、感動したのを思い出しました。ミミズの身体は、一本の腸のようなもので、「土」を大量に呑み込み、有機物を吸収した後、粘液とともに大量に糞塊として排出する。ミミズの糞塊は、植物にとっては肥沃な土壌となる。カブトムシの幼虫も同じような役割を果たしているのですね。
そういえば、カブトムシの幼虫は白くて弾力のあるお餅みたいで、とてもかわいらしいですが、あの幼虫がカブトムシになるのって、すごく不思議ですよね。
ちょうどこの時期、幼虫は土の中に丸い団子を作って、その中で蛹になります。こどもの頃、このスコッチエッグのような丸い塊を間違って割ってしまったことがありました。すると、仲からどろどろとしたちょっと気持ちの悪い液体が出てきて、ぎょっとしました。
その正体は、幼虫から蛹に変わる途中のカブトムシだったのです。幼虫は、小さな脳と心臓、腸の一部といったごく僅かな部位を除いて、分子レベルにまで解体され、どろどろになる。このどろどろした分子が再び新たな結合を始め、組織化され、蛹になり、やがてあの硬い兜をまとったカブトムシに変身する。
もとを辿れば食べ残した残飯を微生物や細菌が分解して「土」にして、それを幼虫が食べ、大きくなった幼虫は一旦どろどろに解けた後、カブトムシに変身する。そしてやがてはカブトムシも死んでまた土に返る。
なんと不思議で神秘的な生き物の営みには、ほんと驚かされます。
結局、カブトムシ君が住み着いた植木鉢はそのままにしてあるので、そろそろ幼虫から見事に変身を遂げたカブトムシ君が飛び立っていくことでしょう。とても楽しみです。