知足

自然と共に素敵に生きたい

G8に向けて(1)

2008年05月25日 | 環境イベント

 G8サミットを目前にし、G8環境大臣会合に向けたFoE主催の国際市民フォーラム「バイオ燃料・森林減少防止は気候変動対策となるか?~先進国の役割と責任」に参加してきました。

 2日間に渡って、非常に難しく、複雑な問題に対して白熱した議論が交わされました。私自信、知らないことも多数あり、とても勉強になったと同時に問題の深刻さ、複雑さから「これは生半可な問題ではないなぁ、だからこそ緊急にどうにかしないとまずい!」と強く思いました。

 自分の頭を整理する意味でも、話しあわれた内容を列挙しておきたいと思います。

 なおこのフォーラムを受けて、主催団体からG8環境大臣に向けて大会宣言が出ています。詳細は、下記を参照ください。
FoE HomePage:http://www.foejapan.org/news/doc/080416.html

●1日目『バイオ燃料は気候変動対策か?』

  • バイオ燃料が、ブームとなっている。
  • EUは、2020年輸送用燃料の最低10%をバイオ燃料で賄うことを目標に掲げ、アメリカは2022年までに20%以上、日本も2010年までに0.7%賄うとしている。
  • インドネシア、マレーシア、ブラジルなどの生産国も増産に乗り出している。

その一方でこうした過熱気味のバイオ燃料に対して、持続可能性への懸念が指摘されている

  • エネルギー収支上無意味
  • 土地利用の競合
  • 生物多様性の消失
  • 社会的影響

そういった批判をうけて見直しを行う動きもある。

  • ドイツは、バイオ燃料使用車増加計画、エタノール比率の引き上げ中止
  • イギリスは、2010年以降のバイオ燃料政策決定にバイオ燃料による間接影響などの見直し

懸念される熱帯雨林の減少の例として、インドネシアにおけるパーム油農園を紹介された。

  • 現存する熱帯雨林の10%がインドネシアに存在し、
  • 生物多様性からも熱帯雨林はとても貴重である。

にも関わらず、熱帯雨林が広がるインドネシアにおいて、

  • バイオ燃料政策(インドネシア政府)として大規模農地化、森林の農園への転換、非生産的森林の植樹を進めている。

その結果、

  • 森林伐採
  • 伐採林と劣化林の農園への転換
  • 森林火災、土地火災
  • 泥炭地の排水汚染
  • 農薬問題
  • 先住民との対立

が発生している。

特に泥炭地の農園化、泥炭地の破壊はいろいろな問題を引き起こしている。

  • 泥炭地は、食物遺骸が有機質土を形成したもので地球全体で泥炭地は二酸化炭素換算で 2,000Gトン のCO2を固定していて、
  • 地球全体で、泥炭地からの年間排出量は 3Gトン以上で、地球全体の化石燃料からの排出の11%にも相当する。
  • バイオ燃料として泥炭地で生産されたパーム油の燃料は、化石燃料使用から排出される二酸化炭素の3~10倍を排出し、温暖化を緩和するどころか、温暖化の促進に寄与していることになり、
  • 新規パーム油農園の50%以上が泥炭地に計画されている現状を考えると
  • 森林減少や火災の要因にもなる泥炭地におけるパーム油農園等の開発は、即停止するべきである。

こういったバイオ燃料の需要を考える際には、地球上の限られた土地への需要ということも考える必要がある。

土地への需要に対する問題点としては、

  • 需要逼迫する食料生産
  • 紙の需要と植林の拡大
  • 油糧、燃料作物の拡大

などがあり、

  • 生態的な土地利用の制約
  • エコロジカルフットプリント
  • 生物多様性への影響
  • 蓄積炭素への影響
  • 水資源への影響
  • 社会的土地利用の制約(地域社会、原住民への影響、安全保障問題など)

を充分に考慮する必要があり、問題は複雑で多岐に渡っている。

つまり、

  • 生態的にも社会的にも土地利用への圧力を緩和する努力が急務である。
  • 不公正な土地利用、食料配分は社会に深刻な問題を引き起こす可能性がある。
  • 限られた土地の利用は、食料生産、安全な水資源の確保を最優先とする必要がある。
  • バイオ燃料による僅かな温室効果ガス削減に投資するより、気候変動により悪化する食糧、水の安全保障リスクの増大に備えるべきである。

こういった内容について、プレゼンと質疑応答、パネルディスカッションが行われました。
そして、最後にG8環境大臣会合への提言(大会宣言)を行いました。

二日目は、『森林減少による炭素排出と気候変動』について、初日に引き続き喧々諤々し、議論を深めました。

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G8に向けて(2)

2008年05月25日 | 環境イベント

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●2日目『森林減少による炭素排出と気候変動

 簡単に概要を列挙しておきます。

  • 残された原生林は、8千年前の2割しかなく、世界全体で2000年~2005年の1年間に730万ヘクタールが純減少し、その多くが熱帯雨林諸国によるものである。
  • このような森林減少に対して、地球サミット以降、15年もの議論がなされたが有効な効果策がなかった。

その劣化の要因を列挙すると、

  • 商業伐採
  • 森林開発
  • インフラ開発
  • 違法伐採
  • 土地の転換(農業開発など)
  • 焼畑スタイルの変化
  • 地域コミュニケーションにとっての森林価値の低下
  • 地元経済の変貌
  • 人口増加
  • 外部資本の流入
  • 森林ガバナンスの低下
  • 貧困

などなど、様々な問題が絡み合っています。

その中でも特に問題なのは、

  • 違法でも安い木材を求める国際市場
  • 木材・紙資源・熱帯産品への需要の急増
  • 破壊的開発への資金供給

などがある。

一方で熱帯雨林に暮らす住民にとって森林は、

  • 生活、経済の基盤であり、森林を利用しながら保全してきたが、
  • 植林事業、開発などによる土地の「囲い込み」が起き、
  • 地域コミュニティと森林の関係の変化により、森林の位置づけが低下し、また
  • 貨幣経済化によって現金収入の必要性が増大したことから違法伐採が助長されている。
  • こういった森林減少、劣化の複雑な要因の理解が必要であり、
  • 木材、紙、パーム油などの需要急増などを制御することが急務である。

一方で地球温暖化対策としてREDD「途上国の森林減少、劣化に由来する温室効果ガス排出の削減」がCOP13から検討が始まった。

REDDは、

  • 土地利用変化のため、森林から多くのCO2が放出されていて、森林減少、劣化を防ぐことでCO2排出を減らすことができる。
  • 森林減少、劣化を止めるコストは、他の様々なメカニズムでCO2排出を抑えるコストより少なくてすむ。

と期待される一方で実施にあたって注意する必要があるのは、

  • REDDの目的を気候変動のみにするのではなく、コ・ベネフィットも十分考慮する。
  • REDDの資金が村落共同体に対して支払われる体制の確立。環境サービスへの支払い。地域住民の権利を奪わない第三者機関による監査制度の設置
  • 政府単独の実施ではなく、援助機関・NGO・民間企業・地域住民など様々なアクターを包含した議論を行う。
  • REDDプロジェクトとして、村落共同体や地域住民による森林管理にCO2削減の要素を取り入れたプロジェクトを実施する。

といったことが重要である。

「森林を守る」といっても誰のために守るのか、何を守るのかによって結果は全く変わってくる。従って、

  • CO2排出削減のための違法伐採に対してのみを考えるのではなく、地元住民の権利や住民が求めていることも十分に考慮するべきで、
  • 貪欲な先進国の市場経済主義の考えだけでなく、生物、人々の暮らし、文化や宗教、など世界の多様性を認め、共存していく方法を考えていくことが重要である。
  • エコロジカルフットプリントを考え、需要をどうコントロールするか
  • 政治の腐敗を是正し、先住民の権利を保証し、原生林が持っている多様な価値を正しく評価することが求められている。
  • 今後の世界的な方策に対しては、議論の場をOpenにして、過去何故うまくいかなかったかを十分に検証した上で進めていくことが大事である。

 講演を聴いていて、地元住民、原住民の自給的生活スタイルを市場経済主義で推し進めることがあってはならないと感じました。

 二日目の議題に対してもG8環境大臣会合宛に大会宣言が行われました。詳細は、FoEのHomePageを参照ください。

 二日間に渡る白熱した議論は、かなり頭をフル回転させられ、頭の中を整理するのも大変だったのですが、最後のパネルディスカッションの前にFoEの中澤さんが6人のプレゼンのまとめを行っていただいたお陰で大分整理できました。

 恵まれた国に住む私たちの生活は、必ずどこかで世界で起きている問題と繋がっているということをしっかりと認識し、熱帯雨林など世界の森の破壊に繋がる開発に対して是正を促し、自然も人々の暮らしも政治も経済も全てにおいて持続的な共存共栄できる世界の実現を目指して皆で頑張っていきましょう。


天職

2008年05月23日 | その他

6月中旬に社内異動で「環境推進部」に異動が決まりました。

仕事の傍らで環境のことをずーっとやってきた訳ですが、自分が本当にやりたいことを仕事としてもやった方が良いだろうと、いろいろ悩んだ末に決めました。

企業にとっても環境問題は重要なミッションになってくる(既になっている)ので、どれだけ貢献できるか分からないけど、精一杯頑張ろうと思ってます。

年初に今年は何かいろいろ「動く年」になるかなぁーっと思ったことが、現実になってきました。。。。

 


里山

2008年05月12日 | 私たちにできること

FoEの里山再生ボランティアに参加してきました。

 
 

 今回の活動は、里山の中にある作業小屋のメンテ。
 草刈、間伐、きのこ作り、栗の収穫、竹炭作り、竹の子掘り、、、、年間通していろいろな活動をするための道具置き場にしている管理小屋があるのですが、この小屋は2002年秋にボランティアの手によって作った手作りの小屋といことを聞いてびっくりしました。

 朝まで降っていた雨も10時の集合時間には上がり、20人ぐらいのボランティアさんと手分けして小屋の外壁に「柿渋」と「墨汁(炭)」を塗りました。
 ペンキではなくて「柿渋」を塗ったのですが、柿渋は柿を発行熟成させた天然の塗料。木材の防腐材としては、石油系のペンキで問題になるホルムアルデヒドも発生しないだけでなく、製造、運搬、消費のどの工程においてもCO2排出の少ないまさにエコロジカルな塗料なんですね。

 それと写真の下の黒く輝いている箇所は、墨汁(炭)を塗っています。これも天然。
さらに雨どいも古くなってきたので新しいのに取り替えたのですが、素材は竹で里山の中で調達して作りました。

 昔ながらの知恵がいっぱいですね。

 里山ボランティアは、こういった暮らしの知恵を沢山学べ、若い方から年配の方まで幅広い人といろんな話ができるのが、すごくいいなぁっと思います。

 


「利他の会」との出会い

2008年05月08日 | 利他の会

 それはひょいなことがきっかけでした。

 「姫路に住む叔母に連絡するように!」
という母からの突然のメイルが飛び込んできたのは、ちょうど1ヶ月前の高野山の宿坊でのこと。
久しぶりの休みを取って高野山から熊野三山、熊の古道を旅していたのですが、「きっとあなたの助けが必要だから、協力してあげて!」という切実な母からのメイルを読んで、旅の最後は姫路に向かうことにしました。

 叔母さんが2年前に仏陀生誕の地 インドを旅した際、仏陀が悟りを開き仏教を起こした地でありながら、貧しい子供たちが校舎もない学校で地べたに座って勉強している様子をみて強い衝撃を受けたそうです。
 そして「ここに校舎を造ってあげたい!」っと心から思ったそうです。

 帰国後、NPO法人「インドマイトリの会」という団体が校舎を建てる活動を行っていることを知り、この団体を通して資金援助を行い、この3月に校舎が完成して開校式に行かれたそうです。
 写真はその時の様子です。子供たちの笑顔と澄んだ目から感謝の気持ちがすごく伝わってきますね。

 叔母さんは、2年前に訪れた学校に校舎が出来たことで援助は終わりだと思って開校式に参加されたそうです。ところが再度現地を訪れたところ、校舎は出来たものの今にも壊れそうな机や椅子を使い、文房具もろくに揃っていない現状では、まだまだ充分な教育は受けられないと感じたそうです。そして校長先生から引き続き援助をお願いされ、「これは終わりではなく、始まりなんだ」と思ったそうです。

 叔母さんは、実はもう20年以上前からご近所の主婦と一緒にチャリティバザーや演奏会などを企画してその収益で恵まれない子供たちを支援したり、阪神淡路大震災の時には炊き出しに駆けつけたりする活動をしてきました。そのボランティアグループの名前が「利他の会」です。

 インドの学校建設もこの「利他の会」によるものだったのですが、今後インドの子供たちへの支援を継続していくにあたって「利他の会」をNPO法人化した方が国際援助をするには良いのでは!?と考えていて、そのことを聞いた母が「あんた、協力してあげて!」っとなったのです。

 私もちょうど2年前にインドを旅した際に、路上で物乞いをする子供たちや学校も行かずに働いている子供たちを見て、心に強い衝撃を受けました。カースト制という独特の宗教観のもとで横行する差別、その煽りをうける罪なき子供たちの姿、それは残酷とも思える悲惨な現状だと思いました。

 「子供たちに最低限でよいので教育を受ける機会を与えてあげたい!」という叔母さんの想いに私の心は高鳴り、是非協力したいと思いました。

 GWを利用してNPO法人化に向けての初打合せを行ってきました。「利他の会」のメンバーの顔ぶれはすごく多彩で、意識が高く、すばらしい方々ばかりでした。

 母からの突然のメイルから始まった「利他の会」との出会いは、何か運命的なものを感じてしまいました。これから先、どんな支援ができるか考えるとすごく楽しみです。

 今後、私のBLOGでも「利他の会」のことを随時Upしていきたいと思っています。

利他の会のホームページは↓こちら



価格高騰

2008年05月06日 | 環境問題

 ガソリン価格の高騰、食料品価格の高騰が連日のようにニュースを賑わしています。

 ガソリン価格の高騰のニュースを聞いていると「生活が苦しくなるので困る」といったマイナスな意見がある一方で、「ガソリンが高いので、運転を控えるようにしています」とか「なるべくガソリンを使わないようにエコドライブを心がけるようになりました」といった声もあるようです。
 確かに家計に響く問題ではありますが、見方を変えるとガソリンの消費を抑えることでCO2の削減に繋がるので温暖化問題に対しては、むしろ都合がよいことだとも言えます。
(ただし本来は、ガソリンなど環境に負荷をかける消費に対しては、環境税などを導入して消費者に一定の責任を持ってもらい、消費を抑制するような政策を行うべきだとは思いますが、、、。)

 また、小麦、とうもろこし、大豆などの価格高騰にしても値段が上がっているのは、輸入に頼っている穀物や食料品であり、日本の食料自給率の低さを露呈していると言えます。
 小麦が高くなったことで、主食のお米が見直され需要が伸びているという報道がありました。また大豆についても国産品との値さが減り需要が伸びているそうです。
 また、牛肉1kgを作るのに約7倍の穀物が必要であると言われますが、牛に与える穀物の高騰をうけて贅沢品である牛肉の消費を控えたり、家畜の餌に米粉を使ったりする工夫も始まっているようです。
 低下し続ける食料自給率を少しでも向上させるという見方をすれば、小麦や大豆やトウモロコシの価格高騰もチャンスと捉えることもできます。

 また、中国における材木の需要が急激に伸びていることで、輸入木材の値段が上がり、結果的に国産材の価格競争力が増し、国産材の需要が伸びてきているという話も耳にしました。

 資源や食料を輸入に頼り切っている日本にとって、ガソリンや穀物価格の高騰は大きな痛手ですが、逆に政策転換するチャンスと捉えるべきなのではないでしょうか。

 一方、世界に目を向けると穀物の高騰は途上国にとっては大問題になります。穀物の高騰の背景には、バイオ燃料ブームがあり、主に先進国が使うバイオ燃料を生産するために熱帯諸国の農園開発が進み、アマゾンの森林減少が過去最大になっているという報告もあります。CO2を減らす目的のバイオ燃料が、逆にCO2の吸収源である森林を減少させ、貧しい人々の食料生産を逼迫させているのです。

 わずか一握りの先進国の豊かな暮らしを支えるために招いた化石燃料過剰消費による温暖化の影響は、弱い立場にある途上国の人々の生活を直撃しています。

 価格が高騰して困ると嘆いてばかりいるのではなく、もっと世界に目を向け、高騰の原因は何なのか、私たちはどうするべきなのかを考え、市民一人ひとりが自分たちの生活のあり方を見つめなおすことが大事だと思います。


内モンゴル砂漠緑化

2008年05月02日 | 木を植える

 FoE Japan主催の『内モンゴル砂漠緑化ツアー』に行ってきました。

 中国に緑化活動に行くのはこれで2回目になります。前回は、重慶市(中国内陸部 長江沿い)で緑化活動を行ったのですが、重慶では過度な農地化により丸裸になった山に果樹などの植林を行いました。ですので、砂漠での植林は今回が初めての経験でした。

 今年の3月頭に北海道のキロロスキー場にバックカントリースキーに行った際、オフピステを滑るのに雪崩の危険がないかどうかを雪の層をみて判断するのですが、真っ白の雪の断面に黄色い断層があるのを発見し、中国内陸部で発生した黄砂がなんと北海道まで飛来してきていることに強い衝撃を受けました。
 以前から砂漠緑化活動には興味があったのですが、この雪の中の黄色い断層を見て、「これは何とかしないとまずい」という想いが強くなり、今回参加することにしました。

 FoEが活動している地域は、中華人民共和国で砂漠化が進む地域 内モンゴル自治区のウルスンやカンチカといった町周辺の村(ダチンノール村、ウリゴンボトグ村など)です。

 砂漠化の現状については、FoEのHome Page(http://www.foejapan.org/desert/index.html)が詳しいですので参照ください。

 4/27(日) GWで混雑する成田を飛び立ち 中国 瀋陽空港へ。オリンピックの直前で建設ラッシュに沸く瀋陽から観光バスでウルスンへ向かいました。

 初日は、移動のみで明日からの植林に期待を膨らませつつ、砂漠化が進むウルスンにある宿舎に泊りました。ウルスンは自給自足的な生活が残っていて、トイレは青空トイレ、馬が鋤を引いて畑を耕しているようなどこか牧歌的な雰囲気がある素敵な町でした。
 電灯が殆どないので夜は満点の星空を堪能しました。日本とは少し星座の位置が異なりますが、北斗七星やおとめ座など本当に綺麗な星空でした。

 4/28(月) 昨晩の就寝が早かったせいか5時過ぎに目が覚め、外に出るともう既に地元の方は農作業や食事の準備などを始めていました。砂漠地帯は昼夜の温度差が大きいのでこの時期でも朝の気温は10℃ぐらいまで下がり寒かったのですが、日課になっているヨガを内モンゴルのおいしい空気をいっぱい吸いながら1時間ぐらいやると身体もポカポカしてきて、気分もすっきりして「よーし、緑化するぞ~!」っと気合が入ってきました。

 緑化する砂漠化地帯へはジープで移動したのですが、砂地の悪路を走破する「パリダカールラリー」さながら上下左右前後、ありとあらゆる方向に身体が、そして頭が振られ、腰でバランスを取りながら進むこと1時間ぐらいでようやく初日の活動地に到着しました。

 初日の活動地 ダチンノール村http://www.foejapan.org/desert/datin/index.html)は、第1期緑化地域(2001年~)で7年前は草木が殆ど生えていない砂漠地だった所ですが、7年間の植樹の甲斐あって、ポプラの木が防風の効果を発揮し、砂の固定化も進み、草も大分生えてきていました。
 7年前に植林を始める前の写真と現在の写真をFoEのHome Pageで見ることができますが、活動の成果が目で見える形で現れていることにすごく感動しました。

 初日は地元の子供たち(モンゴル人)と共同作業ということで、日本人一人に子供が1人~2人ついて作業をしました。内モンゴルは、中国領ですがモンゴル人が一番多く住む地域だそうです。

 既に植えられていたポプラの間に松、サジー、ニレの苗木を植えていきました。子供たちとは、大きなジェスチャーでなんとか会話?しつつ行ったのですが、子供たちの純粋な目と進んで仕事をやる姿に心が顕れる想いがしました。

 午後は、植林したところより更に奥まで散策しに行ったのですが、まだ緑化を行っていない地域に出ると「これぞ砂漠!」という景色が一面に広がっていました。左上の写真の手前の緑は、植林されたポプラの木ですが、このポプラの木を挟んで片側が広大な砂漠で、反対側は少しづつ草木が生えていて、とても対照的でした。緑化活動がいかに有意義なものかを物語っていました。

 下の写真は、ポプラの木を植えたことで落ち葉が溜まり、腐葉土ができていました。ここが上の写真のような砂漠だったというのですから驚きです。

 内モンゴルで砂漠化が進んでいる地域は、もともとは草原だったそうです。遊牧民族だったモンゴル人が定住化させられ農業や牧畜に従事するようになり、開墾による木の伐採と過放牧により やぎ や 羊 が根こそぎ草を食べつくしたことによって砂漠化していったそうです。
 ですので、もともとは草原や森であった場所なので地下水も豊富にあり、一旦砂の移動を止めることができれば自然に草が生えてくるようです。

 3日目(4/29)に大青溝自然保護区という原生林が残る貴重な公園に行ったのですが、周辺地域が砂漠化する中でそこは、上の写真のようにニレの木やモンゴリナラなどの高木、アンズ、クワ、サンザシなどの中低木が生い茂る森(冷温帯落葉広葉樹林)でした。こんなにも豊かな森が砂漠化するなんて、、、、信じられないですが、人間が自然に与える影響の大きさに息が詰まるような想いがしました。

 4日目(4/30)は、典型的な農牧民が暮らすウリゴンボトグ村での植樹だったのですが、お昼は村長さんの家でご馳走になり、農民の暮らしを拝見でき、とてもいい体験でした。田畑を耕し、牛、羊、鶏、豚といった動物たちと共に暮らす生活をしています。
 しかし砂嵐の季節では、強風で舞い上げられた砂で目を開けることもできなくなり、農作業も困難になります。

 ゴーグル、マスク、帽子、耳かき、目薬、、、ツアーのしおりに持参するように書かれていた砂嵐対策グッズですが、ほんとに必要なのかなぁ、、っと少し疑っていたのですが、この日の砂嵐の凄さは半端ではなかったです。ゴーグルにマスク姿でようやく目を開けて息を吸うことが出来ましたが、叩きつけるような風で立っているのもやっとという状態でした。

 そんな強風吹き荒れる砂地獄の中での植樹は、過酷としか言いようがないものでした。こんなに過酷な状況の中で生活している地元住民の苦労を想うと何とかしてあげたいという気持ちでいっぱいになりました。
 地元の方々は、遠方から来た私達日本人を歓迎してくれ、屈託のない笑顔で接してこられたのがすごく印象的でした。地元の人たちと労苦を共にすると言葉は通じなくてもお互いハートが熱くなるような気がしました。

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内モンゴル砂漠緑化

2008年05月02日 | 木を植える

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私が感じた問題点 1
 植林活動は、FoEなどのNGOの活動の甲斐あって地元住民の理解も深まってきて、着実に進んできているようです。ただ、地元住民は砂漠化を食い止めることと同時に生計を立てるために"お金"になる木(経済林)を植えたいという考えが大勢を占めているようです。そのため成長の早いポプラの木を単一に植えることが多く、至るところにポプラの林が目に付きました。

 植林する木については、「外来種でないこと」が大事ですし、また生物多様性を考慮して「混合林にすること」がとても重要です。
 特に単一の木を植えることは、病害虫の被害を受けた際に一度に全てが枯れてしまう可能性があります。また植物だけでなく動物、昆虫、シダ類、菌類など多様性に富んだ森を育むことの重要性を考えるとポプラのみを植えるのではなく、針葉樹、広葉樹、果樹、低木、高木などを混ぜて植えることが重要だと思います。

 こういった生物多様性の重要性や外来種の危険性などの知識については、なかなか現地の人に理解してもらえないとFoEスタッフの成田さんや和田さんが苦慮されていました。

改善案
 日本人が持っている技術や知識、経験をいかに活かしていくかが課題だと思います。現地の人の意見を聞いて活動方針を決めていくことは非常に重要ではありますが、生物多様性、外来種といった問題に対しては着実に対策を行うことが必要だと思います。なかば強引にでも正しいことを行うことは、20年、50年、100年先を考える上で重要だと思います。

 また、住民の理解を得るために、例えば生物多様性や外来種といったことをモンゴル語の教科書にして地元住民に配布して教育することも一つの手だと思いました。

 あるいは、現地の人を日本に招いて『日本の里山』を紹介するのも良い方法だと思います。里山は、人の暮らしと自然とが一体となって支えあいながら成り立っています。楢やクヌギ、栗などの広葉樹は、腐葉土を作り、田畑を肥やし、間伐材はマキにしたり椎茸の種木にしたり、また竹の子を取ったりと、人と自然が持続的に共存し、多様性を育んでいる里山は、砂漠の緑化をする上でとても参考になる方法だと思います。

私が感じた問題点 2
 残留農薬問題で注目を集めている中国産の農産物ですが、内モンゴルなど砂漠化が進む地域では水不足は死活問題だということを改めて実感しました。

 中国における水不足は深刻で年間30万ヘクタール以上の草地が砂漠にのみこまれているといいます。水不足を深刻化させている原因は、木の伐採や過放牧による草地の減少によるもの以外に、猛烈な勢いで進む工業化が最大の要因だと指摘されています。河川の水や地下水を大量に汲み上げ、工業排水で河川を汚染している現状を「このままでは未来の世代に破壊的なツケが及ぶ」と世界銀行が警告しているそうです。(ナショナル ジオグラフィックより)

 一方食料自給率が低下の一途を辿っている日本は、農産物を輸入することで間接的に世界中から水を大量に輸入しています。また多くの日本の企業は中国に生産拠点を置き、バブルとも思える中国の工業化を後押ししています。

 「湯水のごとく」という表現があるように日本人にとって水不足は無縁とも思えるような話ですが、食料を海外に依存するということは、間接的に世界の水不足を煽っているということを私達消費者はきちんと認識し、自分自身の問題として捉えることが必要だと思います。
 『出来るだけ国産のもの選び、地産地消を心がけることがとても大事だ』と改めて思いました。

 

総括
 わずか5日間の短い活動ではありましたが、『砂漠化する』ということがどういうことなのかを身をもって体験でき、そこに暮らす人々と触れ合えたことは、恐らく一生忘れない思い出になったと思います。

 砂漠化が急速に進んでいるという問題は、マスコミでも大きく取り上げられることもありますが、その砂漠化も適正なやり方で防ぐことができること、また砂漠化してしまった所でも再生が可能であることをもっとマスコミなどで取り上げてもらい、募金という形でもいいので援助が拡大して欲しいと切に思いました。

 今回植えた木がどうなるのか、2年後、3年後、10年後、、、と継続して緑化活動に参加していきたいと思いました。

 私達の生活は、地球上で起きている様々な問題とどこかで必ず繋がっている、関係しているということ。なかなか実感できないかも知れませんが、世界に目を向け、想像する力を養い、様々な問題を決して他人事にしないことが、日本人である前に地球人である私達に、21世紀という時代を生きる上で問われていると感じました。