
朝を照る妙高山を見にきたる下り妙高サービスエリア ゆきを
ひとに会うために富山へ向かった。
心配性の私は中途半端に眠り、寝坊するのを恐れる。
仕事を仕舞って、旅の準備を済ませると
まもなく出発し、ナビの言いなりに走るのであった。
約束の日時はとうに忘れてしまったが
仮眠をとろうと停車したのが妙高サービスエリア。
運転席のシートを倒し、寝に着く。
したたか眠り、ずいぶん眠ってしまったな・・と
クルマを降りると眼前を立派な山が朝日に照らされている。
あたかも絵画のごとくと陳腐な比喩が浮かぶほどの美しさ。
「世にも美しい」とはあれから何度か思うことが
あったが、その日が初めてだった。
しばらく見惚れていると「あれが妙高だよ」と
知らない人の会話が聞こえた。ああ、妙高山か。
決して忘れることのない名をその時に知った。
歯磨きを済ませクルマのエンジンをかけると
流れてきたのは「Wednesday Morning 3 A.M.」。
Simon & Garfunkelのベストアルバムを聴きながら
走ってきたのだ。ゴールデンウィーク中であったのは
確かだが、あの日が水曜日の朝だったのかは憶えていない。
ひとに会うという妙な胸の高鳴りと。
「水曜の朝、午前3時」の旋律と。
実に爽やかな五月の朝であったことは忘れることはない。
会いたいひとに会う旅だったはずだが、いまはあの
妙高山を見るための旅であったと思えてならない。
いつかまた同じ景色を見に行こうと思う。