「鱧と水仙」第57号・藪の会
同人22名の同人誌。
文章と短歌のバランスが良く実力者揃いの印象。
特集2「短歌の条件」は同人それぞれが1頁執筆する。
読んでいて「おもしろい短歌雑誌」はそうそうあるものではない。
季評「生きてこの世の木下(こした)にあそぶ」は
山中もとひによる山埜井喜美枝に関する文章。
文中、山中が師である山埜井さんの十冊の歌集を筆写したということを知った。
筆写することの意味よりもその行為は真似できない。だからすごいことだ。
私はかつて筆写ではなくパソコン入力を試みた歌人があったが
三冊目の歌集で中断したまんまである。
一昨年亡くなった山埜井さんにはお目にかかったことはなかった。
が、率いておられた「飈(ひょう)」は毎号拝読していた。
この一文は作品を追いながら山埜井さんの人となりが伝わってくる良い文章だった。
歌集に収録されていない作品が文末に抽かれていた。
石の橋木の橋光る鉄の橋わけても恋ほし不渡橋(ワタラズノハシ) 山埜井喜美枝
これいいうただなぁ。出会ってよかった作品である。