「川田順覚書 その国府津時代―歌集『東帰』を中心にしてー」 野地安伯
佐佐木信綱研究会において発表された内容を抜刷された資料を野地安伯氏に
お送りいただいた。
「白路」主宰の野地安伯氏は吉井勇と川田順の研究者でもある。
個人誌「晴詠」15号に載せた私のうた
川田順は昭和まもなき立山に大きイヌワシ見しと詠いき 石川幸雄
を読んで「妙にうれしくなった」と野地氏は一筆書いてくださった。
立山に棲むとは聞きし大鷲の目交にして飛び立つを見き 川田順『鷲』
案内者の佐伯八郎言へらくはかかる大鷲を初めてぞ見し
見上ぐらく山原のそらを飛ぶ鷲の大き翼の白斑かがよふ
山空をひとすじに行く大鷲の翼の張りの澄みも澄みたる
『鷲』は私の好きな歌集で、今年の5月、立山に行ったとき、上記の作品群が浮かんだ。
詠われている<大鷲>は冬になると知床を中心にロシア辺りから渡ってくる
「オオワシ」ではなく、留鳥としてわが国にわずかに生息する「二ホンイヌワシ」のことである。
野地氏はたしか、三首目の<見上ぐらく山原のそらを飛ぶ鷲の大き翼の白斑かがよふ>の
川田順の色紙をお持ちだとも聞いたことがある。「大き翼の白斑かがよふ」から
これはイヌワシの若い個体であることがわかる。
いずれにしても私のような無名者の個人誌のうたを目に留めて頂いただけで有難い。
野地氏は「川田順覚書 その国府津時代―歌集『東帰』を中心にしてー」のなかで
本稿は『鷲』と並んで高く評価される『東帰』の中の、国府津時代に焦点を定めた。
と、書かれている。