「帆」37号 2024.6
2024/6/23 不定期刊 300円
発行人 佐藤よしみ
「五月野」より紹介します。
陽だまりのような記憶の片隅に牙むくけものの眼が光りおり
洪水ののち廃村となりし地にオオゴマダラか空低く舞う
宵まつり浴衣のさばきぎこちなき少女湯あみの石鹼匂う
串刺しの鮎じわじわと炙られてわが身に及ぶ刑のごとしも
朝焼けの空の奇しさ伝わらぬままの思いがふいに膨らむ
滑り込みセーフのような生き方をかさねて今日の朝日を浴びぬ
私好みのうたが揃う。
エッセイは連載「琉歌(うた)の見える場所(26)」。
つらつらと読む。
伊野波の祭祀である秘儀ムックジャーを見たいと念願しながらも
果たせていないとの一文があった。念願は果たすべきである。
と、思う私も果たせないことばかり。
佐藤よしみの魂の籠る個人誌「帆」である。