( 島根の地酒飲み比べ 「隠岐誉/出雲富士/開春」佐香や)
■2015/12/11(金) 曇
「李白酒造」を出て次第に暮れゆく松江の景色の中を宿のある京店へと歩いた。時刻は17時を回り、車のライトが次第に眩しく感じられてきた。途中「豊の秋」の煙突が見えて、ここが松江三酒の一つ「豊の秋酒造」ということがわかった。
歩くこと15分ほど、宿に戻って預けた荷物の引き取りとチェックインを済ませた。実は旅先の楽しみの一つが、夕方のローカルニュースを見ること。 テレビをつけてみれば丁度 本日オープンした松江駅「シャミネ松江」の縁結び通りのニュースが流れ始めたところ
なんとキャラメルポップコーンを2万円分も買い求めた人にインタビューなど話題ともども地元ならでは感が出ていて面白い。
一旦シャワーを浴びて、午後7時 島根の日本酒を味わいに京店カラコロ広場の「佐香や」へ向かった。昔までは、松江は駅前に宿をとっていたが、京店で日付が替わるまで飲んで、千鳥足で戻るには遠すぎることから最近は京店に宿をとるようになった。
(「佐香や」)
「佐香や」に入ると右手お座敷は、忘年会で貸し切り、カウンターには常連客らしきお客が一人 日本酒を燗で愉しんでいた。 この店の店長、利き酒師の資格を持つ朝山さんは、夏に続いてこの夜も「めったに着ないんですけど」と言っていた李白のTシャツを着ていた。
(宍道湖のしじみの益々の発展を祈念して~一本〆)
「飲み物何にしましょう?」 「じゃあ 最初は松江の地ビールびあへるんをください」と注文 「そして枝豆とたこわさ、大山鶏のたたきを」と加えた。 ビールは黒ビールだからしっかり苦い味を期待してたのだが、甘い味わいでアテが外れた。 暫くして国際的な賞をもらったビールだとポスターを見て知り、好みも様々だなと思った。 世界は世界、やはりビールは苦みあってのものだと思うが・・・ 人生で味わった苦味に比べればビールの苦味の何と美味なることよ
やがて観光で松江を訪れた熟年の女性二人組が私の左手に座り、ウーロン茶と海鮮丼を食べながら職場の話し。〆のぜんざいもおいしそうだった。 私はビールを飲み終え、日本酒スタート。 まずは、島根の地酒三種呑み比べといきますかと注文
(大山鶏のたたき)
(たこわさ)
(突き出し)
20酒以上から3酒選べる。「もし特に希望がなければこちらで三酒選びましょうか?」と朝山さん。「いえいえ とんでもない。 自分で三つ選ぶのが楽しみなんですよ。 このメニューを見てすぐに決まりましたから・・・ 開春、出雲富士、隠岐誉この三酒でお願いします」と頼んだ。
三酒が李白のノスタルジック盃に入れて出されたので「夕方、李白酒造に寄ってたんですよ」と言えば「冷蔵棟見ましたか? 大き(デカ)かったでしょう」と返ってきた。
( 「隠岐誉」「出雲富士」「開春」)
想像通り、スタートの三酒 どれもハズレがなかった。まもなくコート姿の男女のお客さんが入店、椅子を二つ空け私の右に座った。 会話から二人は仕事帰り、この店の常連、銀行の管理職で男女ながら同僚という間柄と想像できた。年齢は、二人とも私より若干若いといった感じ。コートをハンガーに掛け、スーツ姿の二人を見て、一日中土曜の気分でいたが、実は金曜日なんだと認識を新たにさせられた。
女性は、朝山さんに「おいしい柚子酒を頂戴」と注文、男性の一杯目は日本酒「開春」だったろうか 私は「李白」おろちをグラスで注文した。
(松江に来たら「李白」でしょ)
「而今呑みたいな~ まだ呑んだことなくて。朝山くん、おいしいんだろ而今 どこの酒だったかな・・・」と朝山さんに聞いて間があったので、思わず「三重県名張の酒です」と反射的に声が出てしまった。 お酒を飲んでいて日本酒の話になるとつい口をはさんでしまう悪い癖だ。
(皇帝ルドルフの威光を感じる奥出雲の酒「七冠馬」)
「お客さん 而今を知ってるんですか? 呑んだことあるんです?」と男性に聞かれこのお二方と会話が始まった。「ええ、私、奈良なので而今は隣の県の酒ですから・・・割と。 今まで使っていた杜氏をやめさせて酒造り、当初は地元で受け入れてもらえず首都圏に出したらそこからブレークした酒なんです。お酒に惚れた女性が造っている男性のハートまで射止めたというロマンスつきの銘柄なんですよ」 とまた相当余計なことまで言って、「しまった」と思ったが、昼から酒が入っていて自制心が効かないのも事実。
女性から「なんでそんなことまでご存じなんですか? 何されてるんです? もしかしてお酒関係の人だったりして?」 「いえ、全然そんなんじゃなくてお酒とはかすりもしてないです。ただ日本酒が好きで飲み歩いているだけなので」
更に「よかったら おいしいと思うおすすめの日本酒を教えてくれませんか 是非」とバッグから取り出したつるつるのチラシの裏紙を差し出され「じゃあ折角ですから あくまで私見になりますが 島根の酒を除いて十酒」 北は「白瀑」から南は「鍋島」まで十酒と欄外に「若波」を加えた十一の銘柄を書いて渡した。
男性が私の紙を見て朝山さんに渡し、「朝山くん、これらの酒知ってるか?」と尋ねた。 「伯楽星と鍋島くらいすかね 後はわかんないっす」と応えていた。 決してレアな酒を書いたわけではなかったけど初めて聞く名前ばっかりで響かなかったようだ。
しばらくして尋ねた女性から「あの~ 書かれた紙見てるんですけどね 十酒より欄外に書かれたこの「若波」って銘柄、頭に印付で妙に愛情を込めて書いていると感じるんですけど 気のせいですか?」 さすがに女性の勘は鋭いと思った。
「実は、若波の今村友香さんは九州初の女性杜氏で、以前 福岡の店で会って以来ずっと若波、若波と関西人にも言って応援しているんです。先日も京都で店のスタッフの娘に説明したりして」 なるほど~ どれどれ~と男性が ipadを取り出し、若波・今村友香で検索をし始めた。 このヒト? なんだか可愛い女性ね ほんとだね
「若波という銘柄ですね 今度見かけたら是非呑んでみます。私も応援しますね」と「僕も応援するよ」と何と松江で(たぶん山陰でこの酒を見かけることはまずないと思いつつもその名を認識してもらえただけで嬉しい) 思いがけず若波ファンを作ってしまった。 銀行員の言うことだけに 愛想言葉ではないだろう。
(浜田の赤天で「美波太平洋」)
そんなこんなで明日も仕事が入ってそうな銀行員の二人は、各二杯ほど呑んだ後タクシーを呼んで私より先に店を出た。「夕方、李白酒蔵に寄った」ことを伝えたら「あ~ 田中さんとこね」と軽く返してきたところから 李白とは取引のある銀行かもしれないと思った。
まもなくして一次会を終えた若者たちがなだれこんでお座敷はすぐに満席 賑やかになった。一人になったカウンターで私はもうしばらく 島根の酒を味わった。
(気持ち穏やか也 「天穏」)
アイスクリームの後、〆はしじみ汁 宍道湖のしじみに乾杯
しみじみ ミスティック! 日本酒が美味い 松江ナイト
日付が変わる前に店を出て、振り返れば灯り煌煌 ひと足お先に Good Night
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(寅)