マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第10回目です。
◆皮膚にあらわれる病気の徴候
かつては、皮膚病は皮膚だけで治療できると医師たちは信じていたそうで、体内の病気の兆候が皮膚にあらわれるという現代的な考え方が定着したのは1950年代なかばだそうです。
もちろん、皮膚だけで治療できる皮膚病もありますが、初期症状が短期間だけ皮膚病変としてあらわれる病気もあるのでので、皮膚病変によって体の病気を知ることはとても重要です。以下に、皮膚病変があらわれるおもな病気を列挙します。
【スピロヘータ感染症】ライム病はマダニにかまれて感染しますが、かまれた場所にドーナツ状の発疹ができます。梅毒は、感染場所の皮膚粘膜に硬いしこりができます。
【細菌感染症】髄膜炎では、その原因菌が全身に広がった後にだけ、特徴的な発疹が生じます。
【甲状腺疾患】甲状腺の病気で甲状腺の機能が低下すると、肌は蒼白でうるおいがなくなり、毛は細くなり、場合によっては脱毛が起こります。逆に、甲状腺の機能が亢進すると、肌の紅潮、動悸、手指のふるえなどがあらわれます。
【副腎腫瘍と卵巣腫瘍】若い女性で肌のキメがあらくなったり、多毛になったら、副腎腫瘍の徴候です。月経不順の中年女性にニキビと多毛が見られたら、卵巣腫瘍の徴候です。
【悪性リンパ腫とガン】肌にこい紫色の馬蹄形の斑点があらわれたら、悪性リンパ腫によって脾臓やリンパ節が肥大しています。また、進行性のガンによって、肌がひどく黒くなることがあります。
【関節炎】リウマチ熱は連鎖球菌によってひきおこされ、「輪状紅斑」とよばれる典型的な発疹が生じます。
【エリテマトーデス】これは関節炎様の自己免疫疾患で、鼻をまたいだ、厚い赤い発疹が生じます。
これらの皮膚にあらわれる徴候や病変は、体内のどこかにある病気をうつしだしているのではなく、むしろ皮膚が病気そのものによって激しく攻撃されていることをしめしているそうです。
皮膚が健康であることが、体の健康にとって極めて重要であるのは言うまでもありません。日頃から皮膚の状態に注意を払うことで、体内深くで知らないままに進行していた病気を初期の段階で発見することも可能になります。
次回は、シリコンについてのお話です。