『現代強健法の真髄』(大津復活:著、大同館書店:1918年刊)という本をご紹介しています。今回は第3回目です。
◆夜船閑話(やせんかんわ)
白隠禅師の『夜船閑話』という本には、自身の病気を克服した体験談が書かれています。
白隠禅師は若い頃、禅の修業のやりすぎで病気になり、精神的な不安感や、激しい頭痛、呼吸困難、両脚の極端な冷え、耳鳴りなどに悩まされ、これにはどんな医者もどんな薬も効果がなかったそうです。
ところがある人から、白幽先生という、二百歳を超える仙人が山奥に棲んでいるという話を聞き、白隠禅師は白幽先生に会いに山に登ります。そして、無事に白幽先生と出会い、二つの秘法を伝授されたそうです。
一つは「内観の法」といって、これには「和神導氣の法」と、蘇内翰という人が伝えた法の二種類があるそうです。
「和神導氣の法」は、部屋を閉め切って暖かい寝床に横になって眼を閉じ、羽毛を鼻の上に置いてそれが動かないように300回呼吸するというものです。そうすると、何も聞こえなくなり、何も見えなくなるそうで、この修業を積むと360歳までは生きられるとされているそうです。
蘇内翰という人が伝えた法は、空腹時に、静かな部屋で正しく座り、呼吸を1000まで数えるうちに、いつしか無念無想の状態になるので、さらに続けると、息が入ることもなく出ることもないときがくるそうで、そうなると病気という病気が治ってしまったように感じるそうです。
下山後、白隠禅師は「内観の法」を修業して、3年足らずで病気が治り、結局84歳まで生きたそうです。
伝授されたもう一つの秘法は、「酥(そ)を用いる法」で、いい匂いがする鴨の卵くらいの大きさの「酥」(牛や羊の乳を煮詰めて作ったバターのようなもの?)が頭の上にあると想像して、それが溶けて体内に流れ込み、脳や背骨や内臓を流れて一切の病気を溶かして足の爪先から出ていくと念じるのだそうです。
白幽先生も若い頃は大病人だったそうですが、これを修業すること一か月足らずで病気が治ったそうです。この秘法は、現在では「軟酥(なんそ)の法」として有名なので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
なお、夜船閑話に「やせんかんな」と振り仮名を振ってある本もあるので、「話」を「な」と読む場合もあるようです。
次回は、仙家の秘法についてのお話です。