(連載)少子化を考える (「しんぶん赤旗」2002年12月28日掲載)
(4)男女平等がすすんでこそ
異常な地位の低さ
経済企画庁が1998年にOECD(経済協力開発機構)加盟23ヵ国中の女性の管理職や男女間賃金格差の少なさなどを「女性の働きやすさ指標」として国際比較したことがあります。そこでは、この指標が「10ポイント高いと合計特殊出生率は0.33人多い」と、相互に関係があることを指摘していました。
国際的にも、男女の平等がすすんでいる国で、出生率が高くなっている傾向があることが多くの調査で示されています。
ところが日本で管理職に占める女性の割合はわずか3・2%(部長相当職)、賃金は男性の半分です。ことし、芝信用金庫で課長職昇格と賃金差別の是正を、また住友生命で結婚を理由の昇給昇格差別の是正を求めた裁判で画期的な和解が成立し、女性たちを励ましましたが、その解決には長い年月が必要でした。
こうした日本の現実には世界から厳しい目が注がれ、政府はILOなどの国際機関からたびたび批判をうけてきました。昨年は社会権規約委員会から、「賃金に事実上の不平等が依然として存在」「専門的な要職に昇進する機会がほとんどあるいは全くない事務員として女性を雇う慣行が続いている」と指摘され、改善を求められています。
西欧諸国では男女同一賃金法則に加え、労働時間短縮、パートと正規の均等待遇、最低賃金制や解雇規制などの男女共通のルールがつくられ、男女の賃金格差も縮小してきています(イギリス、フランスは対男性比で8割割以上)。
人間らしいルールを
出生率が上昇した国も、低水準の国も「共通なのは、女性を一人前の対等の人間として認め、自立できるルール、人間らしく働くルールをつくるのは政治の責任という国民のたたかいがあること」と宮前忠夫さん(国際労働問題研究者)はいいます。
自民党政府は、財界の求めに応じて「女性も男性なみに働いてこそ平等」との名目で労働基準法の女性保護規定を撤廃しました。その結果、母性、健康の破壊にとどまらず、残業や深夜労働ができない女性は退職せざるを得ず、再就職はパートなど不安定雇用の道しかないという、あらたな女性差別をつくりだしています。
雇用のすべての段階での女性差別を禁止している、男女雇用機会均等法を実効あるものにすることが必要です。男女とも労働時間を短くし、子どもを生み育てることを社会的な役割として認め、女性も男性もそのことで不利益を受けることなく、正当に評価される社会。そこに少子化を解決する展望もひらけるでしょう。
90年以降の政府の「少子化対策」は、なんら低出生率の現状をかえることにはならず、新たにこの9月「少子化対策プラスワン」を発表しました。男性を含めた働き方の見直しなどを打ちだしていますが、根本的な解決の方向はみえず、「プラスワンではまだ足りない」(毎日新聞社説)と指摘されています。
それどころか政府は、児童扶養手当の削減を強行、社会保障での負担増、増税、労働基準法改悪などを国民生活におしつけようとしています。
こうした状況に、橋本宏子さん(労働・福祉研究家)は「児童手当なども不十分、保育は民間まかせ、教育費もかかる。決定的なのは、職場や社会全体が男女平等にほど遠いこと。企業への社会的規制の強化など根本の変革がないかぎり、女性は結婚し子どもを産もうという気にはなりませんよ」と強調します。(おわり)