河北新報社より転載
大川小津波災害「調査に限界」明記 検証委最終報告

記者会見で最終報告書について説明する室崎委員長(中央)ら=23日午後5時45分ごろ、石巻市の宮城県石巻合同庁舎
東日本大震災で児童と教職員計84人が死亡・行方不明になった宮城県石巻市大川小の津波災害で、第三者の事故検証委員会は23日、児童遺族への最終報告書説明会を開いた。1月に示した報告書案に対する遺族の指摘を受け「調査に限界があった」と明記するなどしたが、主要な事故原因の分析などに大きな修正はなかった。報告書は3月1日、亀山紘市長に提出される。一部の遺族は終了後の記者会見で、訴訟を視野に今後の対応を検討する考えを示唆した。
報告書は冒頭の「読み取ってもらいたい事項」で「遺族の疑問、願いに応えるために検証を進めた」と明示。直接的原因は「避難の意思決定が遅く、避難先を北上川堤防付近にしたこと」として、報告書案と変わらなかった。
背景に(1)防災体制の不備や教職員の知識不足など学校現場の要因(2)津波ハザードマップや広報体制といった災害対策の社会全体の要因-を挙げ、「大川小は数多くの要因の全て重なり、一つでも取り除かれていれば惨事を防ぐことができた」と分析した。
新たに「教職員は子どもを助けようとしたはずだが、結果的に守れなかった。全ての学校関係者が自分にも生じる可能性がある課題と受け止めるべきだ」といった指摘を加えた。
追加調査の結果として、転校した児童や犠牲児童の遺族に対する心的ケアの不十分さや、市教委の説明に根拠の不明確な点があったことなども追記した。
最後に、生存者が少なく、検証開始が震災から1年10月後で強制力を伴う調査権がないといった理由から「事実調査に一定の限界があり、全ての疑問に十分答えられなかった」と明記した。
説明会は非公開で行われた。終了後に記者会見した検証委の室崎益輝委員長は「遺族から『真相究明が不十分』といった厳しい指摘が多かったが、今後の防災につながる重要な点は提示できた。検証に対する遺族との考え方の溝を埋める努力をしてきたが、十分なコミュニケーションが取れなかった」と述べた。
児童遺族も会見し、6年だった次女を失った「小さな命の意味を考える会」代表の佐藤敏郎さん(50)は「検証委に努力してもらったことには感謝するが、望んでいた検証とは程遠い内容。不十分、限界という言葉を並べ、その通りの内容だと思う」と語った。
2014年02月24日月曜日