まあどうにかなるさ

日記やコラム、創作、写真などをほぼ週刊でアップしています。

夜離れ

2012-10-25 18:20:29 | 書評

「よがれ」と読む。
乃南アサの短編集。
女性心理の陰の部分を怖いくらいのリアリズムで描いた秀作である。
さすがは直木賞作家だと唸らせる。


友達の彼氏に思いを寄せた女性が、二人の結婚式のスピーチで、友達の過去の秘密を洗いざらい暴露する話。
人気歌手へのストーカー行為を繰り返す思い込みの激しい女性の話。
この話しはストーカー側から一人称で描いているところがすごい。


自分より美しい髪を持つ同僚に嫉妬したOLが事故を装い同僚の髪に火を点ける話等。
どの話も主人公の目線から描いているところが秀逸である。
実際に周りにいたら、かなり怖い女性も登場する。


本のタイトルにもなっている「夜離れ」
華やかな銀座のホステスが平凡な結婚に憧れ、OLとなる話。
自分の気持ちばかりを優先させた結果、男が離れて行ってしまう。
女の微妙な心理描写も上手いが男の心理描写にも納得できる。


この本に登場する女性、怖い女性だったり、思い込みが激しかったり、嫉妬深かったり、自分勝手だったり・・・
でも、どこか人間くさく、憎めないところもある。


秋止符

2012-10-20 00:16:13 | 音楽

ラジオで、秋の歌の特集をやっていた。
山口百恵の「秋桜」や岩崎宏美の「思秋期」などが上位に来る中、アリスの「秋止符」もランクインしていた。
「今はもう誰も」や「遠くで汽笛を聞きながら」などが好きで、アリスは中学の頃はよく聴いていた。
でも、その後の「冬の稲妻」や「チャンピオン」などがどうしても好きになれず、少し離れていたある日、流れてきたのが「秋止符」
谷村新司の歌詞と堀内孝雄の作曲が絶妙で、この曲は大好きだった。
今、改めて歌詞を読んで、僕なりの解釈をしてみる。

友情なんて呼べるほど
綺麗事で済むような
男と女じゃないことなど
うすうす感じていたけれど
あの夏の日がなかったら
楽しい日々が続いたのに


都会へ出てきた男女、しばらくは友だち同士で楽しい日々を送っていたが、夏のある日、一線を越えてしまったことから歯車が狂い始める。
亀裂が入り、元には戻らないせつない気持ちが秋の季節と重なり合う。


駅で死んでいた蝶

2012-10-14 00:24:28 | 日記



駅のホームで、ふと、下を見ると
動かなくなったアゲハ蝶。
よく見ると、死んでいた。
ホームに吹く風で、羽がゆらゆらと揺れて、
まるで生きているようだけど、
乗客からは、ほとんど気にもとめられない。
電車がやってくると、
風でどこかへ吹き飛ばされてしまうのだろうか。
森や野原ではなく都会の真ん中は、
アゲハの死に場所としてはふさわしくないように思う。
でも、生きて舞っていたときは、
都会の人の目を楽しませてくれたと思う。
その人たちに代わって、ありがとう。
せめて、踏まれないように。


天城越え

2012-10-01 18:16:57 | 音楽

先日、同僚と飲んでいたとき、演歌の話しになった。
僕も彼も、演歌はほとんど聴かない。
カラオケで歌う程度。
演歌を好んで聴く世代は、僕らよりさらにひとまわりほど上の世代。
このまま演歌世代が歳をとっていくと、演歌は絶滅してしまうかもしれない。
などと二人で話していた。
それにしても、好き嫌いは別として、最近、いいなと思う演歌がない。
昔は、いい歌が多かった。
二人が真っ先にあげた歌が石川さゆりの「天城越え」


女の業を歌った、重々しい歌である。
演歌でなければとても歌えないような言葉が並ぶ。
「誰かに盗られるくらいなら、あなたを殺していいですか」などと怖いくらいの情念がこれでもかというくらいに描かれている。


人目を忍んで、恐らく不倫旅行に来た二人。
男の方は少し醒めているが、女は男を求め続けている。
歌詞の中で「山が燃える」という表現がある。
同僚は、紅葉の事だと言った。
そういうことなのかなあ~?
僕は、男の肩越しに山を見ている事や歌詞の流れから、別な解釈をしていました。カラオケでこの歌を歌う女を見て、この人は歌詞の意味が解っているのだろうか?
などと思っていました。
つまり、女性のエクスタシー・・・
でも、歌詞の解釈は、例え作者の意図がどうであろうと、それぞれ自分なりの解釈をしていいと思う。


「山が燃える」


あるいは夕焼けのことかもしれないし、作者はいろんな意味を持たせたのかもしれない。
江戸時代、江戸から駆け落ちをした男女が、上方へ逃れようとするには、箱根の関所を避ける必要がある。そのためには伊豆半島を横切り、天城山系を越えることになる。
というような話しを、以前、聞いた記憶がある。
「あなたと越えたい、天城越え」
この歌詞は、あなたと添い遂げたいという意味があるのかもしれない。