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ロンドン、ナショナル・ギャラリーで今日から開催されるレオナルド・ダ・ヴィンチ展 ”Leonardo
Experience a Masterpiece” の内覧会に行った。


何週間か前にも書いたが、今年はレオナルドの死後500年、パリのルーヴルとロンドンのナショナル・ギャラリーでほとんど同時に展覧会が開かれる。
レオナルドは寡作のため、パリとロンドンの大美術館で同時開催とはいったいどのような手段で可能なのだ? と、もう興味津々だったのである。


ナショナル・ギャラリーの展覧会は...
同美術館が収蔵するナショナル・ギャラリー蔵『岩窟の聖母』(ルーヴルにもこの作品に先立って制作されたほとんど同じ構図の作品がある)The Virgin of the Rocks 一枚、このたった一枚だけを展示した「実験的な」展覧会だった。


美術館を訪れる観覧者は、一般的に一枚の絵をだいたい15秒ほどしか見ないらしい。
それを憂慮した関係者が、この傑作をちらりと一瞥するのではなく、とことん見て欲しいという意図で、映像を駆使して人を引きつけようと...そういう展覧会だ(上写真。絵画と額縁以外は映像)。

4つの映像の部屋の最後に、『岩窟の聖母』が祭壇画として飾られることになっていた失われた礼拝堂の祭壇を映像で再現してある。
色や形が刻々変化する映像でできた祭壇の真ん中にこの作品が据えられている。


たしかに、色や形がどんどん変わる祭壇の様子にひきつけられてじっと見ている人や、ビデオに撮っている人は多かった。しかし、それは作品をじっくりとことん鑑賞することと同じなのだろうか。

さらには、「じっくりと見て欲しい」ためだろうか、作品の解説はミニマムに抑えられていた。
しかし、レオナルドが先に制作したらしいルーヴル蔵の『岩窟の聖母』が、当時慣習的だった聖母子像とは大きく異なっていたため(背景が岩窟、後光がない、洗礼者ヨハネがアトリビュートを持っていないなど)、注文主から受け取りを拒否され、裁判になり、約25年後にこのナショナル・ギャラリー蔵の『岩窟の聖母』を、彼は一種の妥協作品として描いたなどというインフォメーションの方が、キラキラ光る映像よりもおもしろくない?

わたし自身はもともと、作品の色の鮮やかさや大胆な動きなど感情に訴えるものよりも、作品の背景や理論などの方に関心があるため、あまりいい展示だとは思えなかったのだが、どうだろう。


もしかしたら500年前にルーヴル蔵の『岩窟の聖母』を受け入れなかった、慣習に縛られた人たちと同じようなことをわたしは言っているのかもしれない。




こちらは普段方式の展示、ナショナル・ギャラリー『岩窟の聖母』。
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