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ミカド




イングリッシュ・ナショナル・オペラ、ギルバート&サリヴァンのオペレッタ『ミカド』。

元々は1885年ごろ、ロンドンのナイツブリッジ(今ハロッズがある辺り)で日本展が開催され、日本ブームが巻き起こった背景があり、遠い日本に舞台を借りながら、当時の英国の上流階級や政治を風刺した作品。

ナイツブリッジにおける日本展は唐突に開催されたわけではなく、1867年のパリ万博に日本館が初出展して以来、欧州でジャポニズムが席巻していたという下地があったのだと思う。


今のバージョンは1986年にジョナサン・ミラーの演出でイングリッシュ・ナショナル・オペラが上演した以来のものであり、ポリティカルコレクトネスに則ってか、変な着物や変な和髪の登場人物は消えている。

それだけでなく、話の筋上の舞台は「日本」ではあるものの、舞台装置は1920年代の海辺の高級ホテルで、登場人物は名探偵ポワロに出てくるような服装(上写真)をしている。

だから登場人物が「ここ、日本では」とか「日本の習慣は」とか「日本から遠く離れたナイツブリッジ辺りへ」などと、時々「ここは英国ではなく日本である」という情報をもたらすものの、それ以外には日本ぽいところは何もない。
あ、他にはこの国の支配者が「ミカド」と呼ばれていることと、主役のココ(元は仕立て屋の男だが、なぜか成り上がって現在は死刑執行大臣)がバカ殿メイクをしていることくらいかな。

女性が小股でちょこちょこ歩いたり、甲高い笑い声を立てるのももしかしたらそうなのかも...


話のキモは、政治風刺であるから、上演時によって対象が変わる。2019年の昨夜はもちろん「ボリス・ジョンソン」だった!
今はボリス・ジョンソンの名前をストレートに出して何を言おうが大丈夫な世の中になったが、19世紀後半は「英国の話ではなくて遠い日本お話ですから」と批判をかわさなければならないのだった。


英国の社会風刺は、権力やエスタブリッシュメントへの異議申し立て、反抗、もしくは自虐が主であり、一般市民的な常識や、少数派の考え方感じ方を笑うものではない。そこはわたしが英国の好きな面だ。


めっちゃ笑いました。おもしろかったです!


(カーテンコールの写真を#ENOMikadoでアップするのを奨励されています)
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