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水に飛び込む青年の墓




海神ポセイドンの街、パエストゥムを訪れるもう一つの楽しみは...

こちら、世界史の教科書だかに載っていませんでしたか?


この有名な『ダイバーの墓』は、古代ギリシャ都市パエストム(現イタリア。前回の記事)から1.5キロほどの距離にあるネクロポリス(巨大集合墓所)で発見された。紀元前5世紀ごろのものである。
印象的なフレスコ画は、ある青年の石棺の蓋内側に描かれており、現在はパエストゥム博物館に収蔵されている。
側面には饗宴の図(写真下)。

ギリシャ文化が西アジアに影響を受けた時期、アルカイック期、古典期を通して、完全な形でフレスコで描かれた人物図が残されている唯一の墓だ。
明らかなエトリア文化の影響が見られ、貴重であるとともに、蓋に描かれた「水に飛び込む姿」というモチーフのユニークさが謎を呼ぶ。

「飛び込みが得意だったか、好きだった人の墓なんじゃないの?」と現代人は考えるが、ダイビングは古代ギリシャではスポーツ競技に数えられておらず、この絵が埋葬者の何を意味するのかは分かっていない。

中には、この世での生を終えて、霊的な世界へ飛び込む姿だ、という解釈もある。
水に飛び込む若い男をごく率直に描いているだけなのに、どこか精神的で、ぐっとくるものがあるのは、だからなのかもしれない。

「生まれ変わるために一度死ぬ」、この意識を持たない文化はないと思う。あったかもしれないが、早々に滅びてしまった。
この意識は人間を人間にしたひとつの大きな要素だと思うがどうだろう。


こうやって子供の頃から最近までの、印象に強く残り、記憶に深く刻まれているものやことを、実際に「回収して行く」のがわたしのひとつの趣味だ。

夫はおもしろがってつきあってくれるので、わたしにとっては彼がやっぱり最適の伴侶なのだろう(と、たまには言っておこう。喜ぶので)。


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