大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その2(当日編)

2007-03-22 | 対局

8時に起床。9時に撮影に来たNHKの方と一緒に家を出ました。車内での会話。

「昨日、今回のボナンザが会場に到着したんですけど、松尾さんが負けたそうですよ」と言われてビックリ。

「えっ松尾さんってあの松尾さん

「ええ」

「本当に松尾歩君(六段)が負けたんですか

「あっ、すいません間違えました。松尾さんじゃなくてネット中継の松本さん(アマ四、五段)です」

「そりゃそうですよね」ただでさえ心配しているのに心臓に悪いです(笑)

その、ボナンザを「親友」と呼ぶ松本さんから対局前日に電話がありました。

「もしもし。今、ボナンザが会場に来たんですけど今までの数倍読むらしいですよ(嬉しそう)レーティングは2800だってー(嬉しそう)では頑張って下さいね」この人はどっちの応援なんだ

ちなみにレーティングとはインターネット将棋道場将棋倶楽部24でのもので最高レーティングが3084点ですからそれと300点も違わないことになります。シャレにならん・・・・ビビりました。

会場に到着。話を聞いてみると、やはり今日の機械はかなり高性能で早いらしい。

完全にビビりました。控室に戻り、とにかく落ち着こうと思ったのですがドキドキするしソワソワするしで軽パニック状態。考え出すと悪いことしか浮かんでこないので時間までテレビを見て気分転換しました。

対局開始。ボナンザの作戦はやはり四間飛車穴熊。

             

実はここまで予定通り。後手陣は凝っていますが色々と試した結果、この組み方が最も安全という結論に達していたので迷わずに進めました。うちのボナンザは図から▲6五歩△5三銀▲3三角成△同金直に▲7一角と打ってきます。

             

△7二飛で角銀交換になるので後手必勝。これを期待していたのですが今日のボナンザはやってきませんでした。後で聞いたところ、ボナンザは参考図の▲7一角を読んでいたものの、思いとどまったそうです(笑)

▲7一角をやってこなかったので「今日のボナンザはちょっと違うな」と感じました。

             

この▲6五歩には驚かれた方が多かったようですがボナンザと数多く指した僕にとっては予想通り。昔からこのような手はうまくいかないとされていますが、実際にとがめるのは容易ではありません。

51手目▲6六角は見たことがない類の手ですがなかなかの手。僕らでは浮かばない手で、コンピュータが将棋の技術向上に一役買ったと言えると思います。今後も、このような斬新な手を見せてくれるのでしょうね。それによって新手法、新手筋が増えていく可能性もあるのではないでしょうか。

 

             

ここです。次の▲6四歩。見た瞬間、思わず「なんだそれ?(なんだその緩手は)」と声が出ました。▲9一馬の利きが止まるし、▲6三歩成としても穴熊には響きません。「これはもらった」と思い熟考に沈みました。

数分後。「・・・実は▲6四歩は好手?」▲6四歩に対して△同歩は▲8一馬と桂と取られて図で単に▲8一馬とするのに比べると一手早く▲5四馬と引くことができます。よって△同歩とは取れません。

取れない以上、攻めるしかないのですが有効な攻めが見当たりません。本譜の△3五銀は▲6三歩成を期待したもの。▲6三歩成ならば△2五歩で後手優勢になります。と金を作るのは点数が高いと思い、誘ったのですがノータイムで▲3六歩と正解を指されてしまいました。

ボナンザは「▲6四歩と突いたら相手は攻めてくるしかない。それならば受け切れる」という読みで▲6四歩を選んだのです。人間なら「▲6四歩は馬道が止まって怖いから」という感覚的理由で考えない手です。

一連の手順を見て「今までのボナンザとは別人のように強い」ということが分かりました。

             

勝負の分かれ目はここでした。▲2四歩からの攻め合いは僕が勝ちだと読んでいたところへ▲2四歩がきました。

相手が人間ならば「この人△3九竜を見落としているんだろうなぁ」と思うところですがボナンザの終盤は信用しているので「△3九竜でこっちが勝つはずなのにくるってことは何かすごい手があるのだろうか・・・」となります。

同じ局面でも相手が人間かコンピューターかで感じ方が違うのです。

結論から言えばボナンザは△3九竜を軽視していたようです。コンピューターにもうっかりがあるのですね。コンピューターの終盤戦は完璧だと思っていたので少し安心しました(笑)

戻って、△1五金(図)には▲2七香△2六金▲同香△2七歩▲3八金打△2八歩成▲同馬(参考図)とされるのが嫌でした。

              

この手順は「飛を渡して銀も歩で取られるけど馬を引き付けて相手が歩切れだから良し」というかなり高度な手順なので指せないとは思いました。

89手目▲2四歩が敗着ということになりました。やはり、穴熊戦の距離感は苦手のようですね。

勝てて良かったです。本当にホッとしています。

高性能のマシンを使えば強くなるとは聞いていましたがここまで強いとは思いませんでした。今後もマシンの進化と開発者の方々の改良によってさらに強くなると思います。

まだまだ下と思っていましたがプロの足元まで来ているということを認めざるを得ません。今後、プロがコンピューターと指すというのは避けては通れない道になるでしょう。次の機会は更に注目が集まるのではないかと思います。

 

一ヶ月ほど前からこの日が近づくに連れてかなりのプレッシャーを感じていました。そのプレッシャーから開放されて今日はよく眠れそうです

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大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その1(対局準備)

2007-03-22 | 対局

24時、帰宅しました。振り返ります。棋譜等は大和証券杯ネット将棋公式ページにてご覧下さい(簡単な会員登録が必要です) 棋譜のコメント欄に局後に解説したものがまとめられて掲載されていますのでそちらも合わせてお読み下さい。

まずは準備段階のことから。

昨年5月の世界コンピュータ選手権でボナンザを見て1手30秒等の早指しなら奨励会初段、早指しでなければ2~3級程度と言いました。ボナンザがこの時のままで今回の持時間2時間という設定ならば楽勝だろうと思っていました。

それでも油断は禁物。一週間ほど前から、とにかくボナンザと指しまくりました。数百局は指しました。と言っても「これは参考にならない」と思ったら途中で打ち切るので最後まで指したのは多くないと思います。

好きな手、嫌いな手、長所、短所、かなりの事が分かりました。現在、プロ棋士でボナンザについて一番詳しいのは僕でしょう(笑)

作戦ですが、コンピューター将棋に詳しい勝又六段が「ボナンザは四間飛車穴熊が一番強い」と言っているのを何度か聞いたことあるので、おそらくそれがボナンザ側にも伝わり四間飛車穴熊で来るのではないかと思ってこれを中心に研究していました。この読みはズバリでしたプロはこういう水面下の読みもしているのです(笑)

癖も分かったし、四間飛車穴熊対策もバッチリ。まず負けることはないという感触を得ましたが、心配もありました。それはボナンザが今回用に改良されて(強くなって)くるのではないか。という点です。この不安も的中してしまいました。

当日編に続く。

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ふぅ。

2007-03-21 | 将棋
思っていたより強くてビックリしました。ホッとしています。取り急ぎ告知を。NHK21時のニュースで取り上げられます。詳細は帰宅後に。(深夜から明日になる見込みです)
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明日21日はボナンザ戦。

2007-03-20 | 将棋
ネット中継は大和証券杯ネット将棋公式ページ
繰り返しになりますが、会員登録が必要ですのでご注意下さい。


いよいよ明日です。緊張してきました(笑)頑張って来ます
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ボナンザ戦まであと2日。

2007-03-19 | 将棋

今日は研究会。調子が良い時は秒に追われても手が正解に行くのですが、最近はどうも逆の傾向にあるようで・・・。うーむ。

帰宅して王将戦第7局を観戦。棋譜等は毎日インタラクティブです。またまたすごい出だしですね。9筋の付き合いに△1四歩とは。しかも「▲6五角をどうぞ」の△2二飛。

            

本譜も一手待ってから▲6五角と打っています。これに対して△7四歩。▲4三角成には△6四歩と突いて次に△5二金右で馬が取れるということです。・・・よく思い付きますよね、これ。

△7四歩の後は▲同角△7二銀から駒組みが続きました。2日目が本当に楽しみです。

明日は王将戦を見ながらボナンザ戦への最終調整です。           

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ボナンザ戦まであと3日。

2007-03-18 | 将棋
ボナンザ戦は大和証券杯ネット将棋公式ホームページにて無料で観戦できますが会員登録が必要となりますのでご注意下さい。
会員登録は上記ページ左の「会員登録」からどうぞ。

明日から王将戦第7局です。
毎日インタラクティブにて中継があります。
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引き続き取材。

2007-03-17 | 将棋
今日は俳優の矢崎滋さんがうちに来ました。

最近、お客さん大好きの柊はすかさず矢崎さんに電車を渡してやらせていました
電車の他に将棋の相手もしてもらいました。
例によってお昼寝を拒否して遊び続け、取材の方々が帰るとすぐに寝ました

矢崎さんも競馬が趣味とのことで、東西のメインを買ったのですが・・・・
これで事前取材は終わり。後は当日と後日取材ということになります。


また、今日は三段リーグ最終日でした。
結果は豊島三段、金井三段、伊藤三段が四段に昇段。

豊島新四段は16歳で現役最年少棋士となります。彼とは奨励会旅行で指したことがあります。確か、僕が四段で彼が2級か3級くらいだったでしょうか。6年~7年前だと思います。次の対戦はいつになるでしょうか。

金井新四段は中学、高校の後輩で△85飛研で一緒です。過去の実戦例はもちろん、その日の対戦カード(研究会のです)さらには先後まで覚えているその記憶力にはいつも驚かされます(笑)将棋は居飛車党本格派だと思います。

伊藤新四段は2回目の次点でフリークラスに編入です。次点2回でのフリークラス入りは祐介さん(伊奈五段)に続いて2人目。フリークラスからC級2組への昇級規定はこちらをご覧下さい。
今はやっていないのですが※カイジ研のメンバーでこちらはゴキゲン中飛車を得意とする振り飛車党です。

新四段3名の紹介はこちら

※カイジ研って何?という方は左にある検索欄に「カイジ」と入力して下さい。


今日が17日で21日はすぐそこ。しっかりと対策を練らなければ。
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取材。

2007-03-17 | 将棋
今日はNHKの取材でした。
ニュース番組は当日の夜、特別番組のほうは約一ヶ月後に放送とのことです。

自宅での撮影の後、将棋連盟での撮影。

B級1組順位戦最終局が行われていましたが明日も取材なので21時過ぎに連盟を後にしました。
このような取材を受けるのは慣れていないので妙な神経を使ったりして疲れました
ボナンザ戦前の取材は明日で最後なので明日も一日、頑張ろうと思います。
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引き続きボナンザ対策。

2007-03-15 | 将棋
昨日に続いてボナンザと指しました。かなり分かってきましたが後は当日出てくるのが僕のパソコンに入っているのと、どの程度違うかです。

明日、明後日とNHKの取材が来るので床屋へ行こうとしたら
「美容院行かないのー?」
うっ。またきた。
いつものようになんだかんだと理由を付けたのですがことごとく跳ね返されて観念しました。というわけで行って来ました美容院。

予約の数分前に店に到着。「こちらで少々お待ち下さい」と言われたので座って待つ。ここで床屋ならばマンガを読むのですが、美容院にマンガはありませんでした床屋との違い1.

時間になり「宜しくお願いします。では髪の毛を流しますねー」
いきなりですか。床屋だと水が入ったスプレーでシュッシュで終わりなんですけどね。違い2.

これが終わり「ではお席にご案内します」
えっ、これがお席じゃないんですか。移動するとは。違い3.

カットの際に道具をあちこちに付けられました。床屋ではこんなことしませんよね。違い4.

カットが終わって再び移動して髪の毛を流す。そしてまた席に戻る。違い5.

次はなんと肩と首のマッサージ。そんなのまで付いてるんですか。違い6.

仕上げのカットをして終了。40分で終わりました。思ったより早いんですね。これは床屋と一緒ですか。

とまぁ、床屋と違う点がいくつかあったのですが髪型もほとんど同じでしたし別に大丈夫でした(笑)
行くまでが大変なのですが行ってしまえばなんともないという。
「振り飛車を指す」と決断するのが大変だけど指してしまえばなんともない。と似てますね(似てないか)

NHKの取材ですがもちろんボナンザ戦についてです。当日のニュース番組と後日放送される番組の2つの取材を受けます。詳細が分かり次第、告知します。
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いよいよ一週前。

2007-03-14 | 将棋
C級1組順位戦は自力だった橋本七段と松尾六段が勝ってB級2組へ昇級。23時の段階では昇級候補が揃って苦戦との報だったのでドラマを期待したのですが(笑)
昨年、僕と山崎七段がB級2組に昇る前に「B級2組以上に20代がいない」と言われましたが昨日昇級した二人は20代。これでB級2組以上の20代は4人に。システム上、一気には増えないでしょうがもう少し増えるのではと思います。


今日で21日のボナンザ戦一週間前です。ボナンザ対策を始めました。ボナンザとひたすら指して癖を見抜きたいと思っていますが、当日出てくるものはかなり改良されたものでしょうし、意味は薄いかもしれませんね。
いくつか癖は発見しましたがそれを誘発する為にはこちらが本筋から外れた手を指さなくてはいけないのが悩ましいところです。
相手の研究と同時に自分にもハードトレを課して万全の状態で当日を迎えようと思っています
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