青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹

2017-09-29 07:50:08 | 日記
ジェフリー・ユージェニデス著『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』

原題は『The Virgin Suicides』で、ソフィア・コッポラがこのままのタイトルで映画化した。この長ったらしい邦題は残酷童話風を演出してみたかったのだろうか。

物語はリスボン家の最後に残った娘メアリイが睡眠薬で自殺を図った場面から始まる。
この時に駆け付けた二人の救急隊員は、リスボン家の娘たちの自殺の際には必ず出動しているので、この家のことなら知り尽くしている。ナイフの入った引き出しも、ガスオーブンも、ロープを吊るすことのできる地下室の梁も。
禍々しいほどに生い茂った低木と縫い、手入れされることなく伸び放題の芝生を超えて、救急隊員たちは、人工呼吸や心臓マッサージ用の装置をのろのろと運ぶ。
災厄の始まった13か月前には、手入れの行き届いた綺麗な庭だったのが嘘のようだ。

最初に自殺を図ったのは、末娘でまだ13歳のセシリアだった。
彼女は入浴中に両手首を切ったのだった。それが6月、ヘビトンボの季節のことだった。ここから、“ぼくら”のリスボン姉妹の盗み見が本格的になる。

セシリアは最初の自殺では命を取り留めた。
しかし、セシリアは退院してから二週間後に、姉妹の短い生涯の中で開かれた最初で最後のホームパーティの最中、二階へ上がる階段の窓から飛び降り、自殺を遂げた。セシリアの左胸は塀の剣先に貫かれ、彼女の纏ったウェディング・ドレスはひらひらと翻っていた。

“ぼくら”はいつも見ていた。
姉妹の生前、“ぼくら”は彼女たちの傍観者に過ぎなかった。
姉妹とセックスするのもダンス・パーティに行くのも、モテ男のトリップ・フォンティンやキャデラックを持っているパーキー・デントンといった他の男の子たちで、“ぼくら”は、姉妹が愛用しているのと同じ口紅をつけて男の子同士でキスしたり、紐で縛った枕を姉妹に見立てて抱きしめたりすることしかできなかった。
それでも、“ぼくら”は誰よりも熱心に姉妹を見つめ続けていたのだ。
セシリアの遺体が搬送されるところも、彼女の突き刺さった塀が片付けられるところも、それから、残りの姉妹、テレーズ、メアリイ、ボニー、ラックスの身に起きたあらゆることも。
現実的に考えれば、そこまで詳細に盗み見することは不可能だろう。この物語は、すべてが奇妙におとぎ話めいている。

そもそも、ある一家の姉妹が13か月の間に次々と自殺を遂げる、という基本設定からガルシア・マルケス的だ。姉妹が自殺した時に必ず駆けつける二人の救急隊員、いつもウェディング・ドレスを着ているセシリア、自宅の屋根の上で不特定多数の男とセックスするラックス、小娘から年増まであらゆる女性を虜にするトリップ、正体不明な”ぼくら”、夏の間街を覆い尽すヘビトンボ。すべてがマジック・リアリズムの匂いを発している。そこに、幸せそうなふりをするのに必死なミドル・アメリカンの空虚な実態がミックスされ、奇妙で新しいアメリカ文学に仕上がっているのだ。

リスボン姉妹とは、いったい何者だったのだろうか。
13歳から17歳の年子の美しい五人姉妹というのは、現実には存在しそうもない。彼女たちの性格もまるで漫画かゲームのキャラクターのようにくっきり分かれている割には、一人一人の印象は曖昧で、五人で一つの生き物のように見える。姉妹が一つの生命体と考えれば、最初のセシリアの自殺の時点で、残りの四人も遠からず自殺を遂げることは予見される。母親に幽閉されたと言っても、いくらでも抜け出すことが可能だったろうに(実際手紙を投函するために何度も家を抜け出ている)姉妹が逃走しなかったことや、姉妹が “ぼくら”に救出される寸前で、わざわざ“ぼくら”を足止めしてまで自殺してしまったのもそういうこと、と考えられる。彼女たちは、自殺させることを目的に作られたキャラクターなのだ。

そして、この物語の語り部である“ぼくら”が何者なのかも曖昧だ。
“ぼくら”とは具体的に誰のことを指しているのか分からない。現在の“ぼくら”は、髪は薄くなり腹の肉もだぶついてきた中年男性だ。当時は、リスボン家の近所に住み、リスボン姉妹と同じ学校に通っていたらしい。姉妹を一纏めで崇拝していて、姉妹の自殺から数十年たった今でも姉妹が忘れられず、姉妹の自殺の真相を解き明かすために、当時を知る人たちにインタビューし、姉妹の遺したものを集め、保管している。
だが、“ぼくら”が、姉妹が自殺した部屋の空気をいつまでも吸ったところで、彼女たちの死の真相に触れることは出来ないし、彼女たちを元通りに復活させるピースも見つからない。そもそも、“ぼくら”は、はじめから自分たちの調査から何らかの成果が得られるとは思っていなかったのではないか。医師や記者と言った知識人気取りの人々が姉妹の自殺について論じているのに対して、片っ端から疑問を投げかけているのと同様に、“ぼくら”は自身の出した結論についても懐疑的だ。

あの夏、突然にプールを覆いつくし、郵便受けを埋めつくし、国旗の星を塗りつぶしたヘビトンボの群れ。 “ぼくら”に何が憑りついたのか、なぜ“ぼくら”はヘビトンボの死骸をあれほど嫌ったのか。数十年たった今となっては、すべてが謎のままだ。
姉妹の自殺の真相に触れることが出来たとすれば、それは事が起こった直後だけだっただろう。しかし、その時、“ぼくら”もリスボン夫妻も街の人々も、姉妹から目を背けていた。
まだ、メアリイの息のあるうちからリスボン家の邸宅は売りに出され、家具はすべて運び出された。近所の自動車産業の名家の邸宅では、姉妹の自殺の直後だというのに、娘の社交界デビューを祝うパーティが開かれ、“ぼくら”も御多分にもれず姉妹のことを忘れて、自殺しようなどと思ったことも無い女の子たちと酒を飲んではしゃいだ。幸せを演じることに必死なミドル・アメリカンたちに、リスボン家の崩壊を直視する勇気はなかったのだ。
メアリイが二度目の自殺を成功させた後、リスボン家の邸宅は新しいオーナーとなった若夫婦によって、真っ白なウエディング・ケーキのように改装された。
変わったのはリスボン家だけではなく、通りもまたそうだった。
姉妹の愛したニレの木々は切り倒された。見通しが良くなったことで、“ぼくら”の住む郊外の住宅地区が画一的で味も素気もない事を見せつけられた。
そして、自動車産業の衰退が始まると、業界関係者たちが次々に引っ越していき、“ぼくら”の街は終焉した。
こうして、リスボン家の五人姉妹は時間の堆積の中に埋もれて行った。数十年後にそれを掘り返してみても、ピースの合わないパズルしか手に入らない。どれだけ呼びかけても彼女たちには聞こえない。
忘れられ、輪郭が曖昧になることで、リスボン姉妹は三面記事的な存在から神話世界の住人へと昇華したのである。
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引地川親水公園

2017-09-25 07:25:29 | 日記

暑さがだいぶ緩んできたので、凜を連れて引地川親水公園に行ってきました。
敷地が広いので、犬の散歩にはぴったりです。駐車場は無料。




娘・コメガネも一緒に。


川を覗く凜。






橋の手すりには可愛い蛙さんが11組います。


池を覗くコメガネと凜。


この池では、平成25年から市民団体・大学・その他研究機関により、かつて藤沢市内に生息していた遺伝子を大切にした野生メダカ生体復元の研究が行われています。
この日、私たちが覗いた限りではメダカの姿は確認できませんでしたが、オタマジャクシはたくさんいました。


遊具も色々あります。


敷地内の神社。
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お彼岸のおはぎ作り2017

2017-09-21 07:47:58 | 日記



今年もお彼岸のおはぎを作りました。


娘・コメガネ、おはぎを丸める。
蓬と柏は盗み食い癖があるので、ケージに入ってもらいました。桜と凜は床でお昼寝。

敬老の日には、夫と自分の実家にそれぞれ軟らかい和菓子を送りましたよ。私の両親はまだ歯抜けじゃないのですが、夫の母は入れ歯なので。
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彼岸花と秋の種蒔き

2017-09-18 08:08:13 | 日記
凜の散歩コースの彼岸花が見ごろを迎えました。
台風の後では花が傷むかもしれないと思ったので、前日に撮影しましたよ。






この川沿いには、私たちが引っ越してきたばかりの頃は、白い彼岸花も咲いていたのですが、年々数が減っていって、とうとう今年は一本も咲きませんでした。
去年まで、この時期に散歩していると、ご老人が白い彼岸花を掘り起こして持って帰っている姿をよく見かけました。私有地でないとはいえ、根こそぎ持って行くのは、やめて欲しかったですね。


蕾は赤いクーピーみたいで可愛いです。


オシロイバナも。

それから、7月に友人からもらったミヤマオダマキと桃色タンポポの種を蒔きました。
以前、ジフィーセブンに種(朝顔・向日葵・ホトトギス)を蒔いたら、値段の割には発芽率生育率共に吃驚するくらい低かったので(それこそ庭土に直に蒔くよりも低かった)、今回は二種ともポリポット&種蒔き用の土に蒔きましたよ。


ミヤマオダマキの種は一晩水に浸してから蒔きました。
とりまき(種を採って保存せずにすぐ蒔く方法)の方が、発芽が良く揃うのですが、夏場は芽を枯らしてしまいそうなので、秋に入ってからの種蒔きにしました。一応、今の時期に蒔いても良いみたいなので。秋蒔きだと花を咲かせるのは翌々年の春だそうです。


桃色タンポポの種は水に浸さずに、すぐに蒔きました。
分類ではタンポポとは属が違う異なる植物だそうですが(属名クレピス)、種までタンポポにそっくりですね。


桃色タンポポは、蒔いて二日目で発芽が始まりました。
思った以上に発芽率が良いので、もっと少しずつ蒔けば良かったかもしれません。
ミヤマオダマキは、まだ動きがありません。
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初秋の江の島

2017-09-15 07:36:24 | 日記


昨日は天気が良かったので、お昼ご飯を食べがてらプラッと江の島に行ってきました。






セーリングとか釣り人とか。日光浴をしている人もいました。
まだまだ気温は高いですが、空の色や波の色は確実に秋の色に変わってきています。もう少しで外歩きに良い季節になりますね。
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