青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

重なり猫

2017-11-30 07:10:58 | 日記



朝晩の寒さが堪えるようになってまいりました。
我が家の猫ちゃんたちは重なり合って暖をとっています。


柏が抱き着いたら、蓬もお返し。ムギュ~!大好き‼
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辺境図書館

2017-11-27 07:11:35 | 日記
皆川博子著『辺境図書館』

“この辺境図書館には、皆川博子館長が
蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。
貸出は不可。
読みたければ、世界をくまなく歩き、
発見されたし。運良く手に入れられたら、
未知の喜びを得られるだろう。

                     辺境図書館 司書“

タイトルや装丁・装画のチョイスにまで皆川さんの本に対する愛情がにじみ出ている。それでいて押し付けがましくないのが、上品で好感が持てる。
本書で取り上げられているのは、皆川さんの長く豊かな読書歴の中で(小学5年生で『世界名作戯曲集』を読破している!)選抜され、特別な書庫に収められたもののほんの一部だ。
巻末に目次と同じデザインのページが4ページ収められている。きっとここに読者の愛読書を書き記せと言うことなのだろう。ひどく自分のセンスを試されている気になる。

下記が本書で取り上げられている本たちだ。
各章のタイトルになっている本以外にも、その本と関連のある本や、その本を語っているうちに皆川さんの心に浮かんだ本についても語られている。それらも勘定すれば優に50冊分を超える“未知の喜びを得られる”機会が示されているのだ。

001『夜のみだらな鳥』とホセ・ドノソ
002『穴掘り侯爵』とミック・ジャクソン
003『肉桂色の店』とブルーノ・シュルツ
004『作者を探す六人の登場人物』とルイジ・ピランデルロ
005「建築家とアッシリアの皇帝」「迷路」とフェルナンド・アラバール
006『無力な天使たち』とアントワーヌ・ヴォロディーヌ
007「黄金仮面の王」とマルセル・シュオッブ
008『アサイラム・ピース』『氷』とアンナ・カヴァン
009「曼殊沙華の」と野溝七生子
010『夷狄を待ちながら』とジョン・マックスウェル・クッツェー
011「街道」「コフェチュア王」とジュリアン・グラック
012『黒い時計の旅』とスティーブ・エリクソン
013『自殺案内者』「蓮花照応」と石上玄一郎
014『鉛の夜』『十三の不気味な物語』とハンス・へニー・ヤン
015『セルバンテス』とパウル・シェ―アバルト 『ゾマーさんのこと』とパトリック・ジュースキント
016『吸血鬼』と佐藤亜紀
017『魔王』ミシェル・トゥルニエ
018「光の門」とロード・ダンセイニ 「鷹の井」とウィリアム・バトラー・イェイツ
019『神の聖なる天使たち ジョン・ディーの精霊召喚一五八~一六〇七』
020『心は孤独な狩人』とカースン・マッカラーズ
021「アネモネと風速計」と鳩山郁子 『わたしは灯台守』とエリック・ファーユ
022「紅い花」「信号」とフセーヴォロド・ミハイロヴィチ・ガルシン 『神経内科医の文学診断』(正・続)と岩田誠
023『塔の中の女』と間宮緑
024『銀河と地獄』と川村二郎 「ロレンザッチョ」とアルフレッド・ド・ミュッセ
025『郡虎彦全集』と郡虎彦 『郡虎彦 その夢と生涯』と杉山正樹
000水族図書館 皆川博子

この中で私が読んだことがあるのは、アンナ・カヴァンの『アサイラム・ピース』『氷』とガルシンの「紅い花」「信号」だけ。未読どころか名前を見るのさえ今回が初めての、まったくの未知の作家が多数紹介されていて得した気分になった。

どの章にも、本とそれに纏わる皆川さんの思い出が綴られていて、本に対する皆川さんの愛情を存分に感じ取ることが出来る。特に〈008『アサイラム・ピース』『氷』とアンナ・カヴァン〉の、“本を傷めることは、アンナ・カヴァンに傷をつけることだ。”という一文には、涙ぐみそうになった。アンナ・カヴァンとは、そのように愛されるべき作家なのだ。

皆川さんの選本センスには全幅の信頼を置いている。どれを読んでもハズレはないだろう。
郡虎彦なんて、白樺派と聞いただけで「私の趣味ではないな」と避けるところだが、皆川さんの手にかかると、作家として不遇だった彼の生涯ごと、彼の作品を愛してみたくなる。

そんな私が、読みたい本リストの上部に置いたのが、ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』、アントワーヌ・ヴォロディーヌ『無力な天使たち』、ブルーノ・シュルツ『肉桂色の店』、ハンス・ヘニー・ヤーン『十三の無気味な物語』、石上玄一郎『自殺案内者』、カースン・マッカラーズ『心は孤独な旅人』、パトリック・ジュースキント『ゾマーさんのこと』あたり。とくに『夜のみだらな鳥』は、本書の最初001に紹介されていたので、インパクトが大きかった。この章を読んで、本書は“アタリ”だと思った。

〈000水族図書館〉は、皆川さんの書き下ろし短編。
柳の根方に、葦の茂みを揺籃として産み付けられた卵から産まれた人魚の物語。
主人公は人魚に柳と名付けて、アンデルセンの『人魚姫』や小川未明の『紅い蝋燭と人魚』などの人魚物語を読んで聞かせる。しかし、柳には感情というものが理解できない。

ところが、阿部公房の「人魚伝」を読み聞かせたところで、柳の目に表情が浮かぶ。
主人公は、この話は読んでやるべきではなかった、と思う。それは人魚を飼っているつもりだった男が、実は食肉用家畜として彼女に飼育されていた、という話だったのだ。「人魚伝」の人魚のように、柳も主人公の肉を、歯を滑らせ、紐状に削ぎ取り、すするように飲み込む。この辺りの描写は隠微なのに気品がある。

私は「人魚伝」は未読だけど、きっと「人魚伝」の男も幸せだったに違いないと思うのだ。喰う・喰われるというのは、一度きりの究極の愛情表現だろうから。

骨になった主人公は、フケーの『水の精』を読み聞かせる。ウンディーネは、他の女に心を移した騎士を、涙で殺めてしまうのだ。
主人公は更に、ウンディーネをもとにしたジャン・ジロドゥの「オンディーヌ」を読んでやる。

“〈オンディーヌ  あたし、この人好きだわ!……生き返らせてやれないの?
 水界の王  駄目だ!
 オンディーヌ  (引っ張られながら)惜しいわ!あたし、きっと好きになったのに…。“

柳は、オンディーヌの台詞を忽ち覚えてしまう。きっとオンディーヌの心も理解したことだろう。
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レモンの収穫とお菓子作り2017

2017-11-24 07:10:18 | 日記
今年も我が家のレモンを収穫しました。
毎年20個前後実るのですが、今年は6個しか実りませんでした。お休みの年だったのでしょうか?


数は少ないですが、そこそこの出来栄えです。


比較対象、ニベア青缶。


レモンのシフォンケーキを作りました。
生クリームとレモンの皮でデコレーション。生地にもレモンの皮を混ぜています。


アイシング用に粉糖を沢山買ってあったので、レモンケーキも作ることにしました。
レモンケーキ用の型をもっていないので、パウンドケーキ用の型で焼きましたよ。
焼き上げた生地を冷ましてから、粉糖をレモン汁で溶いたアイシングとレモンの皮で飾り付けました。


レモンクッキーはアイシングとアラザンで。
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パラボラ猫

2017-11-20 07:08:24 | 日記

桜のおでこに湿疹が出来てしまいました。
ヒビクスという軟膏で治療中です。瘡蓋が痒いらしくて、瘡蓋が出来ては爪で剥がして、また瘡蓋になって…を繰り返しているので、引っ掻き防止にエリザベスカラーを装着しました。パラボラアンテナみたいです。
着けたまま眠れるように、布製を購入しましたよ。


少し動くとパラボラがひっくり返ってマント状態に。防寒効果も期待できる?
この状態でも爪はとどかないみたいだし、飲食もできるので大丈夫だと思います。


就寝も問題なし。


蓬はカラーが気になるらしくて、桜のそばに行くとカラーの縁を前足でつついたり抑えたりしています。

カラーをつけたおかげで桜の爪が届かなくなったのは良いのですが、蓬が桜の傷口を舐めてしまうので、その度に阻止しないといけません。良かれと思ってやってくれているので、叱られていると誤解されないように、さり気なく抱き上げたりして、やんわりとブロックしていますよ。

それよりなにより、後ろに控えている柏のブスっぽさが気になります。
夫に「柏って写真写り悪いよね?実物はここまでブスじゃないよね?」と尋ねたら、「柏はいつだってブスだよ」と返答されました。…まぁ、うちで飼っている猫ちゃんたちの中では、一番不器量ではありますが。蓬は毛皮の柄こそ変だけど、目鼻立ちはそこまでブスじゃありませんしね、多分。


やっぱりブスっぽい。何だろう…目つきが悪いからかな?それか、毛皮の模様?
錆柄の猫って不人気らしくて、せっかく生まれてきても捨てられてしまう子が多いらしいのですが、私はワイルドで良いと思いますよ。甲斐犬みたいじゃないですか?


パソコンラックの上に載って、エアコンの温風を受ける桜。
すでにカラーが体の一部になっています。生まれた時からずっと着いていますよってくらいの馴染みっぷりですね。


娘・コメガネが猫の爪切りを手伝ってくれました。
蓬は警戒心が薄いので切り易いです。亡くなった牡丹さんも抱っこし易い子でした。雄猫はみんなそうなのかな?


柏は抵抗するので、私が後ろ脚を抑えています。
桜ちゃんも未だに爪切りの時には暴れます。雌猫にはそういう傾向があるのでしょうか?
蓬と柏は爪が白いから中の肉を切る心配が無いのですが、桜ちゃんは爪が黒くて中の肉が見えないので私が切っていますよ。
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東欧怪談集

2017-11-17 07:11:16 | 日記
沼野充義編『東欧怪談集』は、東欧諸国の怪談を26編集めたアンソロジー。
このうち19編までが、本書のために初めて邦訳されたものであり、収録された作家の大半は、邦訳されること自体、今回が初めてである。
しかも、本書に収められた作品は、すべて元の言語から直訳されている。マイナーな言語はだいたい英語などメジャーな言語からの重訳になってしまう日本の現状で、本書の功績は大きい。ポーランド語やチェコ語、ハンガリー語など、東欧諸国の中では比較的メジャーな言語だけでなく、スロヴァキア語、マケドニア語と言ったマイナー中のマイナー言語まで、専門家の協力を得ることが出来たのは、沼田氏の労力の賜物であろう。
ただでさえ紹介の手薄い東欧文学の中でも、怪談という趣味的なジャンル、つまりは文学としての地位の低いジャンルの作品の紹介のために、ここまで手間暇をかけて編纂してくれたことには、一読者として感謝の念を禁じ得ない。

東欧とは一体どこからどこまでを指すのか。それは何を物差しにするかでかなり変わってくる。
沼田氏にとっての東欧とは、たんなる地理的な概念でもなければ、政治的な色分けでもない、文学的想像力のあり方に関わることなのだそうだ。
西欧的な洗練された様式と、東方(ロシア)的な混沌のあわいに亡霊のように変幻自在な姿を見せるのが東欧だ。
東欧とは、ヨーロッパ文化が東の非ヨーロッパ世界とぶつかりながら、自らのアイデンティティを保持するための最後の砦だ。こういった辺境では、他文化から自らの文化を死守するために、ヨーロッパの中心である西欧がすでに忘れかけている“ヨーロッパ的なるもの”が、かえって鮮明に意識される。
本書の扱う東欧の範囲については、西欧の東に広がるロシアまでを含む地域と言う、かなりおおらかな立場をとっているが、前出のようなことを一応は念頭に置いて読むべきなのであろう。

本書に収録されているのは9か国の作品だ。
クロアチア、スロヴェニア、ブルガリア、アルバニアの文学からは、適当な作品を見つけることが出来なかったとのこと。また、エストニア、ラトヴィア、リトアニアのいわゆるバルト三国は紙面の制約もあって別の機会に譲ることになったそうだ。その一方で、固有の国家をもたないために国別の分類法では無視されてしまう東欧ユダヤ人のイディッシュ語文学については、一章当ててある。これもまた、多様な東欧の忘れてはならない顔の一つだからだ。

ポーランド
「サラゴサ手稿」ヤン・ポトツキ著 工藤幸雄訳 「不思議通り」フランチシェク・ミランドラ著 長谷見一雄訳 「シャモタ氏の恋人」ステファン・グラビンスキ著 沼野充義訳 「笑うでぶ」スワヴォーミル・ムロージェック著 沼野充義訳 「こぶ」レシェク・コワコフスキ著 沼野充義訳 芝田文乃訳 「蠅」ヨネカワ・カズミ著 坂倉千鶴訳

チェコ
「吸血鬼」ヤン・ネルダ著 石川達夫訳 「ファウストの館」アロイス・イラーセク著 石川達夫訳 「足あと」カレル・チャベック著 栗栖継訳 「不吉なマドンナ」イジー・カラーセク・ゼ・ルヴォヴィツ著 石川達夫訳 「生まれそこなった命」エダ・クリセオヴァー著 石川達夫訳 

スロヴァキア
「出会い」フランチシェク・シヴァントネル著 長与進訳 「静寂」ヤーン・レンチョ著 長与進訳 「この世の終わり」ヨゼフ・プシカーシ著 木村英明訳

ハンガリー
「ドーディ」カリンティ・フリジェシュ著 岩崎悦子訳 「蛙」チャート・ゲーザ著 岩崎悦子訳 「骨と骨髄」タマーシ・アーロン著 岩崎悦子訳 

ユダヤ
「ゴーレム伝説」イツホク・レイブシュ・ベレツ著 西成彦訳 「バビロンの男」イツホク・バシヴィス著 西成彦訳 

セルビア
「象牙の女」イヴォ・アンドリッチ著 栗原成郎訳 「ハザール事典」ミロラド・パヴィチ著 工藤幸雄訳 「見知らぬ人の鏡」ダニロ・キシュ著 栗原成郎訳 

マケドニア
「吸血鬼」ベトレ・M・アンドレエフスキ著 中島由美訳

ルーマニア 
「一万二千頭の牛」ミルチャア・エリアーデ著 直野敦訳 「夢」ジプ・I・ミハエスク著 住谷春也訳 

ロシア
「東スラヴ人の歌」リュドミラ・ペトルシェフスカヤ著 沼野恭子訳

全体的に意外と(と言ったら失礼だろうか)洗練された作品が多かった。これは、常に東からの脅威にさらされて来たために、西欧以上に“ヨーロッパ的なるもの”にしがみついてきた東欧人の意識の表れであろうか。
どうあったってヨーロッパでしかない西欧諸国がエキゾチシズムに遊ぶ余裕があるのに対して、いつ東に飲み込まれてもおかしくないというか、実際に多くが旧ソ共産圏に取り込まれていた東欧諸国は、ヨーロッパへの帰属意識が極めて強い。それ故に、文学でも彼らが考える“ヨーロッパ的なるもの”を意識的に表現しているのだろう。英文学や仏文学以上に、知的で、洗練されていて、遊び心すらある。
甚だ馬鹿っぽい感想であるが、東欧と言えば、ヴラド・ツェペシュやエリザベート・バートリといったリアル・ドラキュラな人たちを度々輩出している地域という先入観から、もっと血と暴力に満ちたおどろおどろしい作品が多いのかと思っていたので、目の覚めるような驚きを感じた。
フランチシェク・ミランドラ「不思議通り」の人生における取り返しのつかない過ち、カレル・チャベック「足あと」のリプカ氏と警部のシニカルなやり取り、ヤーン・レンチョ「静寂」の世界の終わりの無音の風景、イツホク・レイブシュ・ベレツ「ゴーレム伝説」のタイトルの印象からは想像もつかない乾いたペシミズム、ミロラド・パヴィチ「ハザール事典」のバロック的奇想、何れも泥臭さがなくスタイリッシュで、それでいて胸に迫るものがあった。
もう一つ馬鹿を晒すようなことを言えば、私には東欧の知識が義務教育レベルしかないので、この常に動乱状態の地域の歴史的・政治的な状況を殆ど把握できていない。そのため、読みながらわからない部分、例えばミハエスク「夢」に出てくる戦争とはどの戦争のことなのか、とかをいちいち調べながら読まねばならなかったので、読了するのにかなりの時間を要した。そんな手間暇も含めて、読む価値のあるアンソロジーである。
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