小田原周辺のマイナースポットや些細な出来事を少しずつ
小田原の端々



散策の際に石仏石塔を探すのが好きで寺院や路傍に置かれているそれらの写真を撮っている。小田原市府川にあるお寺の境内にはユニークな彫刻が施された石塔があって、近くを通ると立ち寄っては眺めている。小田原市府川にある正應寺は曹洞宗の寺院で、大雄山線飯田岡駅より西側約1kmほどの場所に所在。境内には石塔が多いが、本堂へと向かう参道脇に目をひく石塔が立っている。石塔の一面に大きく彫られているのは「金光明最勝王経」の文字。帰宅後に調べたところ、8世紀ごろに伝わった経典で聖武天皇が『金光明最勝王経』を写経して全国に配布。全国に建立した国分寺と密接な関係がある経典とのこと。正應寺の金光明最勝王経塔の歴史が分かるヒントがないかと残りの3面を調べると、裏側に造立の年号が刻まれていた。文化13年とあるので西暦に直すと1816年。今から200年ほど前に造られた石塔で、碑文の全ては理解出来なかったが当時の住職が造立したようだ。正應寺の金光明最勝王経塔のユニークなところが、基礎部分が亀の彫刻になっていて亀の甲羅にめり込むように塔身が立っている。市内では光明最勝王経塔は他に見たことがなく、また基礎部分に亀の彫刻のある石塔も記憶にないのでかなり珍しい石塔だと思われる。亀の彫刻は顔の部分が一部欠損しているが、憤怒の表情で迫力がある。和風というより、アメリカのSFコミックに出てきそうなデザインで面白い。塔身の一面には梵字が彫られている。帰宅後に専門書と見比べながら解読しようとしたが当てはまる種子や真言が無くて解読不能。おそらく金光明最勝王経の一節が彫られているようだ。正應寺の金光明最勝王経塔を眺めていると、今から200年以上前にどのような経緯で石塔が作られ、石工が趣向を凝らしたのかと色々と想像を掻き立てられる。また近くに出かけることがあれば迫力のある亀の彫刻を眺めに立ち寄りたい。

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