今は昔ーーhさんに招かれて、k子さんと二人、
代々木のℍさんの新居をお尋ねしたことがあった。
そこは、岸田劉生の描く「切通」の近くで、
案内状にはその絵の写真がそえられていた。
k子さんのお土産の花束の中に、爽やかな青い花があり、
尋ねると、「ストケシア」ということだった。
「その日は花の中でやすみました」
とハガキが届いた。
時は流れ、コロナがあり、猛暑の夏があり、
ℍさんもk子さんもお二人ともこの春から夏の間に
旅立たれてしまった。
まだまだたくさん話したいこと、聞きたいことがあったのに。
私達が通った街は様変わりし、
最近の渋谷には行ったことが無い。
もし行ったとしても、迷路に迷い込んだ気分だろう。
あの日々の記憶は、大切にそっととっておくしかない。
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清川 妙先生のエッセイで読んだ
「一生分のお礼を言う」
心に留めたいーーーと。