串田孫一さんが亡くなった。
かつてたくさんの著書から、博物誌の楽しみかたを教えてもらった。
以前には、日曜日の朝の放送もよく聴いていた。 自著の装丁をされ、検印もその都度彫られたので、それも愉し みの一つだった。
今、本棚には、立風書房刊の『串田孫一小品集』や、随想集に並んで、心持ち小さ目の『風景画帖』という本がある。昭和39年発行・あすなろ書房刊の赤いクロス装の本だ。
串田孫一さんに親しい詩人のOさんが編集なさった。Oさんは、後に、青娥書房を興され、串田孫一、尾崎喜八、井伏鱒二ほか多くの限定本を出されたり、センスあふれる出版をされている方だ。
トップページには、断り書きが記されてあり、たくさんの執筆依頼の順序を飛び越えて出版された本であることを示している。
本文の最初は、港のスケッチ。短い文も添えられている。
まだ早かったせいもありましょうが、
港は昨夜、夜ふかししたため、
小舟は だるそうに眠り続け、
潮の匂いが漂っていて、
僕はもう顔を洗って来たから いいものですが、
ざぶっと水をかけたい風景です。
新宿画廊で、原画展も開かれた。
一度だけ、お宅をお訪ねしたことがある。玄関のフローリングの一隅に山の石や、ランプなどを積み重ねたディスプレイがあった。
部屋の大きな窓の外に、見たこともない薄紫の美しい花がたくさん咲いていた。
ずっと後になって、一般に普及し植えられるようになった、諸葛菜とか、紫花だいこんと呼ばれる花であった。