水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第百九十回)

2011年01月02日 00時00分00秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百九十

「まあ、お座りになってください。今、お茶を淹(い)れますから…」
「あっ! もう、お構いなく…」
 私は紋切型の挨拶をしていた。実は、急いで来たせいで喉(のど)が乾き、こちらからお茶を一杯…と云いたかったのだ。思っていても一応は建て前で断る日本独特の云い回しである。
 私は椅子に座り、禿山(はげやま)さんは急須に茶葉を摘(つま)み入れた。
「あの…玉の一件ですかな?」
「はい…。あれからいろいろと起きましてね」
「そうそう、部長へのご就任とかありましたな。おめでとう存じます。社内ですから、分かっとったんですが…」
「あっ? ああ…どうも有難うございます。まあ、それもあるんですが…」
「えっ! まだ何ぞありましたか?」
「話が長くなりますので短めに云いますと、私、どうも大臣になりそうなんです」
「… … ? えっ?」
「いや、ですから、大臣です」
「大臣と云いますと、あの大臣ですかな?」
「ええ、たぶん、その大臣だと思いますが…」
「国のですな?」
「はい、内閣の大臣です」
「エエッ!!」
 禿山さんは急須を手にしたまま、凍結してしまった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする