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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百十回)

2011年01月22日 00時00分00秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百十
 大臣就任後の私は、みかんの二人、沼澤氏、禿山(はげやま)さんの四人とも会えなくなり、国政の諸事に忙殺された。これだけは玉のお告げではどうにもならないように思えた。そんなある日のことだった。私は送迎の公用車へでマンションへ帰ってきた。車がマンションに横づけされた。私は車からゆっくり降り立った。
「では…。明日も七時にお迎えに参ります。明日はスケジュールが少々、きつうございますので、そのおつもりで…。では…」
 そう云うと、煮付(につけ)先輩が手配してくれた公設秘書の海老園(えびぞの)君は、車に乗って去った。私は車の後ろ姿をしばらく追ってからマンションへ入った。指紋認証キーでドアを通過し、エレベーターにて四階へ昇った。四階は私のマンションがある階である。エレベーターを降りたとき突然、お告げが舞い降りた。
『お帰りなさい。どうです? 少しはお慣れになりましたか?』
「えっ? はあ、まあ…」
 私は、そのまま歩き続け、自室の施錠を解除して中へ入った。
『今、みかんでは、沼澤さんがお見えです』
 沼澤氏か…と眠気(ねむけ)のことが思い返された。東京とみかんでは随分、距離があった。だが、玉のお告げは電話以上に身近に感じられた。お告げは続いた。

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