水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百二回)

2011年01月14日 00時00分02秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百二
「それはそうと、この前、お話しした大臣の一件なんですが、沼澤さんはどう思われます?」
「どう? と訊(き)かれましても、私がこうだ、と申す筋合いの話じゃありませんから…。最終的には塩山さん、あなたがお決めになることです…」
「それはそうなんですが…。どう思われるかだけでも訊かせて戴ければ、と思いまして…」
「はあ…。まあ、玉がそうしたのなら、そうするのがベターなんでしょう。玉だって悪いようにはしない筈(はず)です
「なるほど…。参考にさせてもらいます。それと、いつやらも訊いたのですが、こちらから玉にコンタクトがとれるようにするには、何か方法があるのでしょうか? それとも、何もしなくても?」
「…恐らくは、あなたが念じて玉に問いかけたとき、玉のお告げがあればそれがコンタクトがとれるようになったということでょうか。とれるようにする方法なんて有り得ませんよ。私だって、ふと問いかけたくなって念じたとき、お告げが返ってきたのですから」
「これは、いいことを耳にしました。お告げのことはそのようにします。それと、大臣の話は、まだ改造があればの、レバニラ炒めですが、一応はお引き受けする方向で考えてみることにします」
 私はそう云うと、水割りのグラスを傾け、ママが作ってくれたアスパラガスのベーコン巻きを頬張った。なかなか、美味だった。

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残月剣 -秘抄- 《惜別》第三十四回

2011年01月14日 00時00分00秒 | #小説

        残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《惜別》第三十四回

ただ、樋口が仲介して、一人頭、月一朱の金を道場へ入れることは続けられていた。だから樋口を含めて、月一分の金が勘定としては長谷川の懐へと転がり込む寸法なのだ。しかし、代官所からの金子が、長谷川にも訳が分らぬままに減り続けていたから、この一分を加えても三人が過ごす賄いの費用としては、そう豊かな暮らし向きとは云えなかった。
 樋口が突如、道場へ顔を出しのは丁度、三人が梅見のことを話し合っている時だった。樋口は息を荒げ、幻妙斎が急に姿を消し、影番のの自分としては連絡が取れず難儀していると云う。それも、逗留先の千鳥屋の喜平にも告げず、自分にも知らせずだ…と愚痴めいて語るのだ。ただ、庵(いおり)にその些細を綴った書面を認(したため)ておく故、後日、見るように…との小文(こぶみ)の書き置きが部屋にあったのだ、と樋口は加えた。師の身体の加減は、ひとまず心配に及ばない。だが、何ゆえ急に姿をお隠しになったのか…。これが偽りなき左馬介の心の疑問なのである。庵(いおり)に書きつけが残されているのならば、それを開けば大よそのことは分かるだろう。
「樋口さん、庵へ行ってみましょう!」
「おお、そうだな!」


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