水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百十六回)

2011年01月28日 00時00分01秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百十六
 小菅(こすが)内閣の農水相に就(つ)いて約二ヶ月が経とうとするある日のことだった。私はいつものようにリビングにいた。新聞は、米粉プロジェクトが日本全国に波及したことを報道していた。これが沼澤氏が云った私のすごいことなのか…と思いながら新聞を畳んだ。
「塩山! 弱ったことになったぞ!」
 煮付(につけ)先輩から電話が携帯で入ったのは、その直後だった。もう寝ようとしていた矢先だった。ズボンに押し込んだ携帯が激しくバイブしだしたのである。
「ああ、先輩でしたか。何がありました?」
「落ちついて聞いてくれ。小菅総理を乗せた車が事故を起こし、総理が病院に担ぎ込まれたと今、官房長官の味噌漬(みそづ)さんから電話があった!」
 先輩も小菅内閣の閣僚の一人だったから、毎日のように会っていたのだが、その日の日中は、取り立てて騒ぐようなことは起きていなかった。だから、先輩から電話が入り、聞いた内容に私は少なからず衝撃を受けた。多少の霊能は身についた私だが、まだまだ大都会の煩雑(はんざつ)な暮らしには身体が順応していなかった。
「ええっ!? そ、それは本当ですかっ!」
「ああ、本当だ。夜分で悪いが、すぐ病院へ向かってくれっ! 私も行く」
「はいっ! どこの病院でしょう?」
「ああ、そうだった。済入会(さいにゅうかい)病院だっ!」
 私は携帯を切ると同時に立ち上がっていた。

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